社会人になりたての頃、

「こんなこと当たり前だ。いわなくてもわかるだろ?」

と、先輩によく言われたものである。

 

しかし、その「当たり前」が意外と当たり前ではなかったりするから会社は怖い。

「そんなにあたりまえかなぁ?」と思うものもかなりあった。

だが、大事なことに限って、はっきり言う人はいないし、明示されることもあまりないので、「知らない人」は不利益を被る。

 

今回は、会社で聞かされた、そんな話を集めてみた。

 

 

1.他者の評価は、自己評価より遥かに重要

「他人がどう思うかなんて、関係ないんだよ!」

とマンガの主人公はカッコよく言うが、組織の中では現実はそれとは正反対である。

むしろ正反対だからこそ、主人公はそう叫ぶのだろう。

 

先輩は逆に、こう言った。

「お前がどう思うなんて、これっぽっちも意味が無いんだよ。」

 

組織で仕事をするにあたって最も重要な価値観は、「上司」と「客」がなんと思うかである。

したがって、他者の評価は、自己評価より圧倒的に重要だ。

結局、その人の有能さは、その人自身では正確に把握できないし、その人の「優秀ですアピール」は大抵の場合バイアスがかかっているので、アテにはできない。

 

逆に、周りの人の評価はだいたい正確だ。

その人の能力に関する正確な評価は、取引先や上司の評価がほぼ当たっていると考えて良い(というより、それが正とされる)。

 

つまり、未熟なときはどうしても、自分の正確な力量がわからず「自己評価>>>他者評価」となり、仕事を一人前にこなせるようになってようやく「自己評価=他者評価」となる。

そして最後には、「自己評価<<<他者評価」として、「評価は他者がするもの。自分の評価は関係がない」と、妥協ない仕事を目指すようになる。

それが「一流」だ。

 

 

2.言い方が大事

私は学生の時「大人は皆、学生よりも遥かに成熟している」と思っていた。

批判にも耐えうる、立派なオトナが多いのだと思っていた。

だが、勘違いだった。

 

殆どの人は自らのことを「優秀である」と考えている。少なくとも「オレはバカだ」とは思っていない。

したがって、仕事をする上での最大のタブーは、ただ人のプライドを傷つける行為である。

 

公然と批判する、間違いを皆の前で指摘する、能力を嘲笑する、無能を公言するなどの行為は、後々まで禍根を残すことににつながる。

 

そして、ほとんどの場合これには例外がない。

「それが本当のこと」であったとしても、それを面と向かって言われることは、だれも望んでいない。

「なんでも言ってくれていいよ」は、リップサービスにすぎない。

 

したがって、人に何かを言う時にもっとも重要なのは「言い方」である。

「話をするタイミング」も大事だ。

だから、重要度として

言い方>>>>>タイミング>>>>>>>話の中身

と位に思っておけば、まず間違いはない。

 

 

3.勝ち組に、もっと勝たせるのが企業

学校は良くも悪しくも、「できない人」に合わせて制度設計がなされている。

だが、最も「平等」や「民主的」と程遠い世界、それが企業である。

組織において重要なのは「成果」であって、それ以外は全て2次的な存在だ。

 

したがって、会社の中では、面白い仕事、おいしい仕事は、常に成果を出した人物に与えられる。

「勝ち組に、もっと勝たせる」

のが会社であるから、当たり前といえば当たり前だが。

 

したがって、仕事を楽しくしたいなら、まずは成果を出すこと。

「仕事楽しいです」なんて言っている人は、皆勝ち組だ。どこかの組織や競争で勝てるからこそ

「楽しい」し、「見栄えも良い」し、「金もたくさんもらえる」仕事に就いている。

 

逆に言えば、最初から「楽しい仕事」に就ける可能性は恐ろしく低い。

実績がないからだ。

だから、殆どの人は、最初楽しくなくても、徐々に楽しみを見つけながら成果を出し、

本当の楽しい仕事を自分から獲得していくのである。

その努力を怠って、「楽しい仕事」なんて、寝言である。

 

 

4.成功に法則などなく、単なる確率の問題である

働く前は「成功の法則」を「勉強法」と同じように考えていた。

一定の方法に従って、淡々と仕事をこなすと、良い結果が手に入ると思っていた。

 

だが現実として、仕事においてはノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマンが指摘するように、成功と失敗は、実力の有無よりも運で決まることが多い*1。

 

同じことをやっても、ほんの少し初期条件が違えば、アウトプットが大きく変わるからだ。

したがって巷にあふれる「こうすれば成功する」は、大抵の場合役に立たない。本当に成功したくば、試行錯誤を繰り返すしかない。

 

賢い人は皆思っている。

「「成功したいのですが、どうすればいいでしょうか?」と聞いてくる時点で、既に見込みが無いよね」

逆に、彼らはこう言う。

「成功したいなら努力せよ。なぜなら、成功は確率の問題であるからだ」

 

だから、彼らは失敗を恐れない。

 

逆に怖いのは「再起不能」である。失敗ではない。

そして彼らの言う「再起不能」とは、お金がなくなったり、職を失ったりすることではない。

「あの人は努力しないし、誠実ではない」

との評判が立ってしまうことである。

 

「できる人たち」の中では、努力というのは単なる「必要条件」である。

必要条件すら満たせない人とは働けない、と彼らは思っている。だから、努力は大事なのだ。

 

 

5.「能力」より「丁寧さ」のほうが遥かに重要

働き出す前は、なぜ「精神論」が仕事において幅を利かせているのかわからなかった。

仕事は純粋な能力で成果が決まるのだと思っていたからだ。

 

だが、実際は逆だった。

実際に大事なのは「能力」ではなかった。むしろ「姿勢」というか「意気込み」というか、

端的に言ってしまえば「丁寧さ」のほうが遥かに重要だ。

 

 

なぜならば、多くの仕事は

「その人で無ければできない、高い能力を要求されるものは非常に少ない」からだ。

 

その人が抜けても、会社は問題ないように作られているし、仕事では「かけがえのない人」はむしろ邪魔である。

そう考えていけば、言ってしまえば要するに、組織や企業における仕事というのは「簡単」なのである。

 

偉大な科学的発見をしなくても良い。

1000年語り継がれる著作を残す必要もない。

数学の未踏の分野を切り開くこともない。

 

逆に、

1日に20件のテレアポをすれば良い。

丁寧にお礼の手紙を書いて、お客さんを喜ばせれば良い。

ミスのないように、出荷検査をすれば良い。

会議で良い発言をすれば良い。

相手のことをきちんと調べてプレゼンテーションすれば良い。

契約書を隅々までチェックすれば良い。

ちゃんと約束を忘れずに守ればいい。

 

と、丁寧に仕事をすれば良いことばかりである。

仕事の価値を決めるのは、多くの場合能力ではなく、丁寧さなのである。

 

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(2024/3/26更新)

 

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