リーダーが現場で悩む問題は矛盾に満ちている。
「あちらを立てればこちらが立たず」と言った具合だ。例えば以下のような問題である。
・品質か、コストか。
・やりたいことを取るか、お金を取るか。
・顧客の言うことを取るか、部下の言うことを取るか。
・長期を取るか、短期を取るか。
自分自身の問題もあれば、部下に関わることもあろう。「どっちを取ればよいのだ」と頭を抱え、ストレスを貯めこむ人も少なくない。
あるいは、パートナーから「私と仕事、どちらが大事か」と迫られる人も多いのではないだろうか。この選択も「仕事かプライベートか」の選択という意味では、一種の矛盾と言える。
そこで思考停止し、矛盾の対立ができない人、あるいは意図的に矛盾の解消を拒む人もいる。
・「プライベート重視です」という発言
・短期的な業績の追求で、長期的な施策を放置する
・コストカットの圧力が強く、品質向上を諦めてしまう
だが、これでは進歩はない。
真に有能なリーダーは、矛盾を統合する存在だ。それは様々な経営者や管理職、組織の幹部などを見ていて強く感じる。実際「有能さ」と言うのは、矛盾を発見したときの態度に強く現れる。
彼らは、こう考えている。
「矛盾はチャンスである。我々を他の競合の手の届かない高みに押し上げることに繋がる。矛盾を発見しそれを活かせ。」
だから、本質的に有能なリーダーは矛盾の存在により、皆を鼓舞する。
「品質と納期を両方満たすことで、我々は圧倒的な存在になれる」
「仕事とプライベートを両方同時に最高の状態にすることが、我々にとって不可欠である」
そのように言う。
それは、とてもクリエイティブな行為である。対立する二つの事柄は高い次元で統合されるべき問題である、と確信している。
そしてそれが、リーダーたる所以であり、彼が打ち出すビジョンが魅力的であるかどうかの判断基準だ。
18世紀から19世紀にかけて活躍した、哲学者のヘーゲルは「歴史は、対立と、その対立が一段高いところで解消されることで発展してきた」という。
リーダーが矛盾を統合する存在である、ということは普遍的な真理である。
リーダー論や管理職研修では「リーダーはバランスを取る」と語られることも多いようだが、必要なのはすべての人に良い顔をする「バランス」ではない。
もう1つ高みに登ることにより、全ての人を見渡す解決策や思想を打ち出すことこそ、リーダシップの本質である。
(2024/4/21更新)
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