新しいことを始めたり、チャレンジしたり、人生の要所要所で問われるのは「自信」である。
もちろん仕事、就職活動、受験あるいは恋愛などのプライベートな領域においても自信は重要で、結局のところ「自分を信じることができるか」が人生において決定的な要因の1つであることは間違いない。
シンプルに言えば、「やってみる」「継続できる」「やり遂げる事ができる」という重要な力は、いずれも自信の度合いと大きく関わりがある。
自信がなければ、やってみようと思わず、継続できず、やり遂げることもかなわない。
そして現実は冷たい。自信のない人を他人は信用しない。自信がない人に向かって「アナタのことを信じてる」と、言ってくれる人がいるのは物語の中だけである。
だが日本人の、特に若者は自信がないという。
自信ないけど役立ちたい 日本の若者、自己評価低く
日本の若者は自己評価が低く、将来を悲観している――。内閣府が世界7カ国の13~29歳の男女を対象に実施した意識調査結果で、こんな傾向が鮮明になった。一方、「自国の役に立ちたい」と考える若者の割合はトップだった。社会貢献したいのに自信が持てない日本の若者の姿が浮かび上がった。
(日本経済新聞)
もちろんこの調査をそのまま鵜呑みにする訳にはいかないが、一つの傾向を表してると言える。では自信のない人にどのように自信をつけてもらえばよいのだろうか。
これについて1つ、憶えている話がある。ある中小の製造業の経営者と若手の教育について話をさせていただいた時のことだ。その会社は「若手に自信をつけてもらう」教育を行っているという。
「若手に自信をつけさせる教育を行っていると聞きました。他社ではよく成功体験が重要、といいますが…。」
「そうですね。自信がないことの本質は成功体験の有無と考える人が多いようですが、これは間違いと言わざるを得ません。経験的には、成功すると自信がつく、とは言えません。」
「そうなんですか、意外です」
「いえ、これは明らかです。成功しても自信にならず、失敗しても自信がついたという人は数多くいます。」
「なぜでしょう?」
「簡単にいえば、自分には嘘がつけないからです。成果が出ても「偶然」や「低い目標だった」など、自分の力とは無関係に成功すれば、それは自信にはつながらない。
逆に失敗しても「これだけ頑張れた」「努力した」と本人が感じていれば、自信に繋がります。」
言われてみれば確かに思い当たるフシがある。
「なるほど、確かにそうかもしれませんね。では、自信がつくかどうかは「頑張ったかどうか」が重要なのでしょうか。」
「それも確かに重要ですが、「頑張った」は結果の1つに過ぎません。本質は「自信がつく行為を行うと、それに引きずられて頑張れる、そして自信がつく」という順番なのです。」
「その行為とは?」
「自分の意志で決めることです」
「自分の意志?」
「そうです。若手に限りませんが、人は「自分で決めた」「自分が言った」ことに頑張ろうとします。これは重要なことです。」
「でも、自信がなければ自分で決められないのでは?」
「そこがポイントです。自信がない人に決めてもらうには、少し工夫が必要です。」
「そのポイントとは何でしょう?」
「失敗してもいい、と伝えるんです。」
「そうしたら、手抜きするのでは?」
「殆どの人は、失敗してもいい、と言われると手抜きできなくなります。面白いのですが。そうすると、彼はそれなりに頑張るようになります。」
「本当に失敗したらどうするのですか?」
「頑張ったかどうか、自分の胸に手を当てて考えてもらい、また自分で決めてもらいます。」
「また失敗したらどうするのですか?」
「同じことを繰り返します。」
「…」
「もちろんそれまでは心が折れないように、プロセスに対して評価します。「本気でやっているかどうか」を見るわけです。
で、どんな人でも必ずいつか成功するわけです。そして、彼は少し自信を獲得する。いいですか、失敗のないところに成功の価値はないのですよ。成功したことしかない人には、実は自信はない。
重要なのは、自分で決める⇒失敗する⇒自分で決める⇒失敗する⇒自分で決める⇒(いつか)成功する、という一連の流れをつくり上げることです。自信を作るには、時間がかかります。
でも、一度自信がついた社員は、本当に有能な人材となります。そうすると、今度は「成果」に対して評価してくれと言い出す。そう言い出したら一人前です。我々はそれを目指しています。今までのところ、ほとんど成功しています。」
よく考えられている。
「…なるほど…でもよく考えると、厳しいですね。それ。」
「だから、当社ではできるだけ小さな失敗をたくさんさせるようにしています。それが上司の役割です。」
失敗は成功のもと、という言葉。それはノウハウの蓄積、ということ以上の意味を持っている。
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