チャレンジする風土を会社に創りだす時、もっとも重要な考え方は何か?と聞かれれば、迷わずそれを挙げることができる。すなわち、「人は優れているほど多くの間違いをする」という考え方だ。
これはピーター・ドラッカーが著書※1の中で述べた言葉である。彼はこう述べている。
成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。
それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。
そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。
優れているほど新しいことを試みる
チャレンジと失敗をたくさんしている人間こそ、最も評価すべき人間であり、上司が部下に「こうあるべき」と指導すべき姿だ。
しかし、仕事の中での「チャレンジ」とは一体何なのだろうか。一言で言えば、「野心的な目標を立て、それを達成すべく動くこと」としてよい。
逆に言えば、「できそうなこと」をうまくやったとしても、それはチャレンジとはいえない。
さて人事評価の季節になると、「部下がチャレンジしない」という嘆きを経営者や管理職の方から数多く聞く。このような会社であっても「チャレンジする風土」を創り出せるのだろうか。
順を追って実行すれば恐らく可能だ。 この場合、原因として考えられるのは
・部下がチャレンジすると損をすると考えている
成果が出なければ評価が下がる、という場合には、当たり前だがチャレンジしない人が増える。
本質的には成果が出るかどうかは「打率」である、従って評価は成果の有無に関わらず、その内容によって行われなければならない。
個人的な話だが、私は昔「目標は未達成だったが昇進させてもらった」経験がある。それは、活動の中身を評価されての事だった。それ以来、私は会社を信用し、野心的な目標を立てることを恐れなくなった。
・上司がチャレンジさせていない
上司はほぼ「成果」のみで評価される。幹部の宿命である。だから、部下に
「やれそうなこと」
「できそうなこと」
をやらせたほうが、成果の見通しがつきやすく、リスクヘッジできると考えている。そのような場合、チャレンジしている人間が部下にいない、ということはよくある。
それは部下が悪いのではない。上司が保身を図っているだけである。
では、何をすれば上の2つを解決できるのだろうか。
分析すると、多くの「チャレンジしない会社」は次のように回っている。
1.上司と部下で目標を設定(多くの場合、上司がチャレンジ目標を設定)
【条件】
・失敗してはならない(必達目標)
・会社の予算に合わせる
2.具体的な施策、作戦は部下に丸投げし、考えさせる
という状態になっている。これは全くの間違いである。これは逆にしなければならない。
つまり、
1.部下がチャレンジ目標を設定
【条件】
・失敗してもよい
・野心的でなければならない
2.具体的な施策、作戦は上司と部下で考える。
上のパターンは、部下は「やらされ感」しかない。また、部下の力量を超える目標は達成できない。だが、下のパターンは異なる。部下が設定した目標を上司が助ける義務があるからだ。
しかも、これであれば上司は部下がどの程度のチャレンジをしているか、肌で感じることができる上、知恵を出し合うことで連帯感が生まれる。
ポイントは、上司は「補佐」に徹することだ。あくまでも仕事のの主役は部下だ。
・部下が自らで野心的な目標を立てることを推奨し、
・部下が自らでそれを達成できるように知恵を貸し、
・部下が何かを達成して自信を持つよう仕向ける。
それが上司の役割だ。
上の3つが遂行されているのが、「チャレンジする風土」を持つ会社だ。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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