ある航空会社の機内誌に「とがっていていい、個性を失わないで」という、社長の新入社員向けのメッセージが掲載されていた。

そこでふと「個性的とは何か」という話を思い出したので、書いてみることにする。

 

一般的に「個性的」といえば、どのようなものを想像するだろうか?

「格好が人と違う」こと挙げる人もいれば、「旅が好き」「映画に詳しい」といった趣味の側面を挙げる人もいる。単純に「奇行が目立つ」といったことを挙げる人もいるかもしれない。

あるいは「はっきりモノを言う」とか「思慮深い」といったことを「個性的」と評する人もいる。

 

もちろんそれらを「個性」と呼ぶことは人の自由である。だが、私が聞いた「個性的」という話はそのような話ではなかった。

 

————————

 

もう10年位前になるだろうか。私が、当時通っていた会社の経営者に「個性を尊重する経営」を掲げる方がいた。

「個性を尊重」という経営者は決して少なくない。私はその思い込みから「やっぱり変わった人が多いんですか?」と聞いた。

 

するとその経営者は、真面目な顔になってこう言った。

「個性的という言葉に誤解があるようですね。」

予想しなかった答えだ。戸惑った私は「どういうことですか?」と聞き返した。

 

「言動や格好が人と違う、妙なこだわりがある、そういったステレオタイプな「個性的」は、我々の考える「個性」とはちょっと違いますね。そういった貧しい個性と、ほんとうの意味での個性は異なります。」

そう経営者は言った。

 

そこまで言い切るからには、何かしら考えるところがあるのだろう。私は聞いてみたかった。

「では、皆様の考える個性とはどのようなものなのでしょう?」

 

「我々の考える個性は、「人が持つ、様々な能力」のことだと思っています。」

「詳しく教えていただけないでしょうか。」

「具体的に言いましょう。例えば、営業で数字を作るのが得意、小型化の技術を持っている、リーダーとして信頼が得られる、プログラミングが卓越して早い、人を感動させる絵を描ける。面白い文章を書ける。そういったものが「個性」です。

要は何か人と異なるアウトプット、成果が出せることを「個性的」と言えるということです。それ以外は単なる自己満足にすぎない。」

「ふーむ。」

「誤解を恐れず、突っ込んで言えば「成果を出す特殊能力」が個性ということです。

だから、安易なやり方で個性的であろうとすればするほど、どんどん無個性になるんですよ。本当の個性は「鍛錬によって磨きぬかれたもの」に他なりません。

まあ、時計やクルマ、服や家など「買ったもの」で個性を主張しようとする輩も一緒ですね。そんなものは個性ではなく「こんな買い物が好きです」と言っているだけに過ぎない。」

 

最後に経営者は言った。

「ウチは従業員の個性を大切にします。だから目標はひとりひとり違う。それぞれが何かを極めて欲しい、と思っています。

だから、新人は一番「無個性」な状態です。逆に言えばこれからどんな「個性」を身につけられるかが勝負なんです。私はそれを、心から楽しみにしています。

どうか、安っぽい個性に逃げないで欲しいですね。」

 

「安っぽい個性」という言葉が、妙に心に残った。

 

 

 

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<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

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