中途採用で「いい人がいない」と嘆く経営者やマネジャーは多い。

 

「いい人」の定義は様々あるだろうが、大体において

・素直で能力が高い

・コミュニケーションがウマい

・専門技能がある

といったことを挙げる人が多い。まあ、要するに「仕事ができる人」をいい人と言っている。そして、いい人が足りていないのはおそらく事実である。

 

だが、正直に言って、いい人はほんの僅かしか、中途採用市場にはいない。人間の能力が正規分布していると仮定すると、偏差値60以上の人は全体の15%しかいないのだ。そして、その15%は「職場を選べる立場」にある。

したがって、彼らは市場にあまり出てこない。人脈で仕事が見つかる人たちだ。

 

また、逆に「極めてできない人」に出会うこともほとんどない。偏差値40以下の人もまた、15%しか存在しないのだ。だから、多くの場合採用できるのは全体の70%を占める「普通の人」だ。

 

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ところで、会社のマネジメントの本質はなにか、少し考えてみる。様々な答えがあろうが、ピーター・ドラッカーが言うように、「凡人をして、非凡なことを行わせる」ことが最も正解に近いのではないだろうか。※1

マネジメントが必要なのは、このためである。むしろ、マネジャーや経営者が「いい人がいない」と言うのは、職務怠慢と言っても良い。

 

私にそれを教えてくれたあるマネジャーは「いい人が採用できない」という他の人の言葉に対し

「何言ってんの、出来のいい人ばかりなら、マネジャーなんて必要ないじゃない」

と言った。

 

では、普通の人がどうやって突出した成果をあげるのか。そもそも普通の人が非凡なことをできるのか。そこが問題である。特に「才能」という言葉に囚われた人にとって「うまくいかないのは、才能がないからだ」という言い訳を使うことは甘い誘惑となる。

 

だが、才能をはじめとする能力一般は、成果に対してそれほど影響があるわけではない。

経済学者のダニエル・カーネマンは

統計的には、優れたCEOの率いる会社が相手よりより良い業績を上げる確立は、かなり甘く見積もって約60%、これは運頼みの場合より10%程度高いだけ。ビジネス書に頻繁に見受けられるCEO英雄神話を裏付ける数字とは言いがたい」※2

という。

 

私も同感だ。実際の仕事は、運が大きな要素を締めており、能力は二の次、三の次だ。もっと身も蓋もない話をすれば、要するに試行回数が多い人のところに、成功が転がり込むのである。

「努力せよ」「トライアル&エラー」が重要視されるのは間違いではない。それが正解であり「運を味方につける」ということだ。

 

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それを知ってか、知らずか、上述のマネジャーは、

「所詮は事業会社。芸術家や科学者、スポーツ選手ではない。普通の人で十分非凡な事ができる。」

と言い切る。

その言葉通り、彼の部署は社内で「引き取り手」として有名だ。「他部署の手に余る人物」を、引き取って、戦力化するのが得意なのだ。

 

「具体的に何をしているのか?」と聞くと、彼は快く答えてくれた。

 

1.まずじっくり話を聴く。

実際にダメなやつはほとんどいない。活用されていないだけ。言い分を聞き、彼の得意とすることを見出す。話をじっくり聞けば、彼が成果を出せそうなことはだいたい分かる。

その際に「給料分は働いてもらう」と言った野暮な話はしない。最初は投資。回収できるのは2年後。その際には10倍以上のリターンがある。(と期待する)

ほとんどの場合は、話を聴いてもらえなくてふてくされているか、苦手なことを強要されているだけ。

 

2.努力を褒める

社会人になったら「努力は褒められない」という人が多いが、そう思わない。逆に「成果を必ず出します」という人ほど疑ってみるべきだ。それは単なるリップサービスかもしれない。

成功は運だからやり続けた人に報いてくれる。だから努力は絶対必要。ただし、間違った努力は指導者が早く発見してあげ、方向を正してあげること。

 

3.成果を実感できる仕事を与える

日々の仕事の原動力は、「昨日より良くなった」という実感だ。昨日よりほんの少しでも良くなることがモチベーションの維持の本質である。

もちろん一流の技能を身に付ける過程では停滞もある。だが戦力化するだけであればそんな心配をする必要はない。また、ある程度の技能が身につけば、あとは自分でやれるようになる。

 

4.「復習」を共に行う

「復習大事」と学校では耳にタコができるほど言われたと思うが、会社ではなぜか復習されない。だが、育成には「復習」こそが大事。一つひとつの仕事を丁寧に振り返ること。

一流の仕事と、そうでない仕事の区別は「復習」しないとできるようにならない。

 

 

極めて当たり前のことをきちんとできるマネジャーは、凡庸な人物をもって、非凡なことを為さしめるのだ。

 

 

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東京大学経済学部卒業後、ドイツ証券に入社し投資銀行業務に従事。
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2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。

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Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。


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(2025/5/8更新)

 

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