フリーランスになって初めて気づいたことがある。それは、ビジネスをやる上で「何」を売るかと、「いくら」で売るかがとても重要だということ。
何を今更と思うかもしれない。しかし、ただの平社員営業パーソンとして働いている時は、売るものも値段も予め決まっていたので、そんなことを考える必要がなかった。
特に「いくら」で売るかについてはほとんど無頓着だった。私はほぼパッケージ商品を扱っていたので、だいたいの値段は決まっている。会社から「今年はこれくらい売り上げてね」と目標を渡されるので、自分で目標金額を決めることもない。
繰り返しになるが「この商品はいくらの価値があるか」などと根本的な問いは考える必要がなかったのだ。それよりも与えられた目標をどう達成するかの逆算思考さえあれば、営業として何の文句も言われなかった。
唯一の資源は自分の時間
ただフリーランスになると、これまでの営業思考だけでは足らないということがわかった。
そもそも気づけばフリーランスになっていたので、何を売るかなんて決めていなかった。何でも屋的な立ち位置で、自分が出来そうな仕事はとにかくもらう。幸い声をかけてくれる人は何人かいた。
ただ、会社員としての営業と大きく異なるのは、製造も自分でしなければいけないということだ。
調子に乗って仕事を受けていた私は、すぐに「時間がない」というフリーランスあるあるの課題にぶち当たった。
コンサルタント時代も時間に追われることは多々あった。一旦業務に溢れてしまうと、時間がいかに大切な資源が身をもってわかるようになる。時間の大切さはわかっていたつもりだが、「収入がヤバいかも」という不安から出来るだけ仕事を受けようとしたのだ。
ヒト、金、物、情報のほとんどを持てない新米フリーランスにとって、最も貴重な資源は「時間」である。この限りある時間をどのように使うのかが最初のチャレンジだった。
あなたの価値はいくら?
時間をどう使うかと並んで重要なのが、自分の時給をいくらに設定するのか、ということだ。要は世の中的に、自分の価値は一体いくらなのか?を自分で決めるということ。
記事書いてよ、
法人営業手伝ってよ、
翻訳してよ、
研修講師してよ、
営業やってよ、
マーケティングやってよ、
人事のコンサルティングしてよ・・・
声をかけてもらうこと自体は大変嬉しかったが、中には「この金額で?」思う仕事もいくつかあった。工数(仕事にかかる時間数)を割り出してみると、明らかに時給1000円を下回る。
「だったら英語の家庭教師をした方がよっぽど稼げるのに・・・何でこの仕事を受けたんだろう、自分」と思うこともしばしばあった。こんな安い仕事の受け方をしていたら、幸せに働けないことは目に見えていた。
私が「単価あげてください」と言えなかった理由
それなのになぜ「もう少し単価を上げてくれませんか」と言えなかったのか。その理由は2つある。
まず一つ目の理由は、仕事の依頼者が知り合いだったため「上げてくれと言うのは何だか申し訳ない」という、遠慮。
そして二つ目が「自分はこの金額を請求して良いのだろうか。私なんて何の実績もないし、能力もないし、これだけもらうに値しない」と、自分で自分の価値を安く見積もっていたということ。
今振り返ってみれば、全く持ってアンプロフェッショナルな考え方だったと思う。知り合いだろうと知り合いじゃなかろうと、自分が提供する価値をあえて安く見積もる必要はない。
このことに気づけたのは、フリーになってから今もずっと仕事をくれる知人のおかげである。彼は絶対に「いくらでお願いします」と言わない。その代わり、こんな風に言ってくれる。
「私は大島さんの仕事を高く評価しているので、それなりの対価を支払うべきだと思っています。
優秀な人を安く雇おうと考える経営者がいますが、それは間違いです。短期的には利益が出るかもしれない。でも長期的には良い関係にはならないと思います。
大島さんのモチベーションが出る金額を決めてください。言い値をお支払いします。」
そう言って、本当に私に値段を決めさせる。言い値に対して値引き交渉することもない。
こんな風に言われたら、もうそれだけで嬉しいものだ。こちらだって相場以上の値段を言って吹っかけようなんて思っていない。最高の仕事を提供したいと思うし、それに見合った対価が欲しいだけだ。
結果的に彼とは今も一緒に仕事をしており、一番長く良い関係が続いている。
新米フリーランスに仕事を出す時のお願い
これからは、私のようなフリーランスで仕事をする人がきっと増えるだろう。実際、会社に依存せずに自分の力だけで柔軟に働ける優秀な人が、周りでどんどん独立している。
今後、経営者はこうした優秀な外部の人材をうまく活用することが求められるだろう。
だからこそ、仕事を依頼する側の経営者(あるいは大企業のキーパーソン)にお願いしたいことがある。
それは
「私たちをプロフェッショナルとして扱ってくれ」
ということだ。
正直、私のような若い女性が「フリーランスです」と言っても、「へー、すごいね。頑張ってね、応援するよ、ははは」と子供扱いされるケースはたくさんある。
独立したと言っているのに「またまた、ちょっと起業ごっこしてるだけでしょ?」と言わんばかりに安い給料を突きつけられ、正社員として巻き込まれそうになったことも何度かある。
時間だけが貴重な資源にもかかわらず、「ちょっと付き合ってよ」と(不毛な)飲み会に付き合わされる。結局何か仕事につながることはなく「私は飲み屋の姉ちゃんじゃない!」と惨めな思いをしながら泣く泣くタクシー代を支払ったことも何度もあった。
まとめ
ただ、上のような状況を作り出しているのは結局自分以外の誰でもない。
安い仕事が嫌なら単価交渉をすればいい。交渉に応じてくれないならその仕事は受けなければいい。
単なる業者(あるいは都合の良い姉ちゃん)扱いされたくないなら、そんな人たちとは付き合わなければいい。
目の前の売り上げに焦って自分の価値を下げるのではなく、自分の価値を認めてくれる人を探すのだ。少なくともそうしたいと、最初に覚悟を決めるべきだ。
これからフリーランスを目指す人は、自分がいくらの価値を持つ人間なのか一度考えてみてはどうだろうか。あなたがこれから売るものはあなた自身=あなたの時間=あなたの価値そのものだ。
仕事とはプロフェッショナルな価値を提供し、正当な対価をもらうこと。
自分を安く見積もる必要はない。
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−筆者−
大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。
個人ブログ:U to GO