最近、専門家の方から
「実は、昔に比べて若年層の引きこもりはかなり減っているんですよ。」
という話をお聞きした。
個人的には引きこもりが増えている印象があったのだが、昔に比べ、若年層の引きこもりはかなり減少しているとのこと。現在、最も引きこもりが多いのは30代、40代だ。
「なぜですかね?」と尋ねると、
「若年層は親の経済状態がに相対的に厳しいので、引きこもりを許容できないからだと思います。おそらく子供の方も「引きこもっている場合じゃない、働かないとマズい」と思っているのでしょう。」とその方は言った。
40代の引きこもりは、親が高度成長期の恩恵を受け取っており、家庭が裕福だったので、引きこもることができたとも言える。裏を返せば、外部からの強制力、経済的圧力でがある程度働くと、引きこもりは減る、ということだ。
面白い事実である。
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この「引きこもり」の方々が置かれた状態はなにかに似ている。そう思っていた所、ある方が「社内失業」と似ているのでは、と指摘されていた。
社内失業者とは、要するに余剰人員のことだが「働かないオジサン」と言っても良いかもしれない。一節には数百万人という規模で存在すると言われる彼らはいわば、家庭ではなく、会社における引きこもりなのだ。
会社のスネをかじって、社内で悶々とする日々。
成果を問われず「なんとなく居るだけで食べさせてもらえる」状態。
確かに、これらは引きこもりと多くの共通点を持っているようにも見える。
「共通点、ありますかね。」と言うと、その方は
「そっくりです」と言った。
そう考えると、これらの「働かないオジサン」を何とかできるのは、上司や同僚の説得ではない。引きこもりが親の説得にほとんど耳をかさないのと同じである。
彼らは経済的な危機を感じないかぎり、自分から積極的に動こうとはしない。しかも、解雇規制が「外へ出て自立しろ」という説得を阻むので、余計に自立の機会を失っている。
極端な話、勤めている会社が貧しくなってリストラを始めたり、最悪会社が倒産したりするまで、「自立」を本気で考えないという状態にもなりかねない。
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仮に上が事実だとすれば、「解雇規制の撤廃」は大企業の、しかも比較的給与の高い中高年から始めるべきかもしれない。
大企業に就職できた、ということはもともと能力は高いと思われる人達である。市場経済に晒されれば、きちんと働き出す人も数多くいるだろう。
実際、リストラされたことをきっかけに「人生を取り戻した」と言う方もいる。
ある製造業に勤務していたエンジニアの彼は、突然「早期退職者候補リスト」に入っていることを知らされた。
「あなたのいる場所は、もうこの会社にはありません」
と言われたのだ。
彼は「ショックではありました。でも逆に「つまらない毎日が、ようやく終わったとホッとした」のも事実です。」と言う。
その後、彼は粘り強く転職活動を続け、一つの中小企業に職を見つけた。もちろん給料も以前の職場に比べれば安い。しかし、彼はこう言った。
「いままで、直接お客さんと討論したり、営業と協力して受注を勝ち取ったりする経験が少なかったので、今は逆に毎日新鮮で楽しいです。」
その会社の経営者も
「非常に優秀な人が来てくれて、ウチとしてはすごく助かってます。若いエンジニアの刺激にもなって、業績にも良い影響がありました」と言う。
彼は例外的な存在なのだろうか?
私にはそうは思えない。むしろこれからのキャリアは会社にこもらず、既得権の上にとどまることなしに節目節目で自分の市場価値と真剣に向き合うことが必要なはずだ。
それが、資本主義社会の根本的なルールであり、「真摯に努力する、正直者が馬鹿を見ない」社会だ。
「一億総活躍社会」を本気で考えるのであれば、すでに働き過ぎている若手や女性などの活用を云々をする前に、「会社の引きこもり」を先に何とかするほうが、ずっと良い。
本当は彼らとて、活躍の場を望んでいるのだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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