ある飲みの場で、経営者同士が議論になった。

一方の経営者は新卒採用にとにかくこだわっており、もう一方の経営者は「新卒は不要」と言っている。

 

不要派の経営者が質問した。

「余計なお世話なんですが、なんで新卒を採るんですか?」

新卒派の経営者が答える。

「他社に染まっていない人がほしいんですよ。」

 

不要派の経営者は少し考えた後、さらに質問した。

「新卒採用のほうが、中途採用よりも「化ける」人が取れるかもしれない、要するに掘り出しものが見つかるかもしれない、という気持ちはわかりますが、染まってない人がほしい、という気持ちだけはよくわかりません。なぜ染まってない人が欲しいと?」

「んー、新卒はまっさらですからね。うちのやり方への馴染みが早いと思いますよ。」

「なるほど……「スキル」よりも「馴染む」事のほうが重要ということでしょうか。」

「スキルはすぐに身につきますからね。でも考え方や行動様式は簡単に変わらない。」

 

不要派の経営者は、最後にこう言った。

「良くない言い方かもしれないですが、上の言うことをおとなしく言うことを聞いてくれる人が望ましい、ということでしょうか?」

「うーん、そこまでは言わないですけどね。まあ、異質なものにかき回されるのはちょっとね。まあ、どこまで言っても中途は中途です。」

「純血主義ですか……。」

 

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新卒を採用する目的は様々だが、その中でも比較的挙がってくる理由の一つに、

「他社の文化に染まっていないから新卒がほしい」

というものがある。

 

改めて考えてみると、これは結構不思議なことだ。なにせ、「かなりの教育コストをかけてでも、自社の文化に染め上げたい」と言っているのである。

だが、これは上述した経営者のように、合理的だと思えない人も数多くいる。

 

冷静に考えて、

「新卒でなければ企業風土を担うことができない」

は反証が数多くある。

殆どが中途採用で構成された会社であっても、企業風土がはっきりと存在する会社は少なくない

。Google、P&G、ネスレなど、有名ドコロだけでも数え上げればきりがない。中小まで含めれば、それこそ風土に特徴のある会社は星の数ほどもある。

「新卒から染め上げなければ、企業風土が形成されない」は、思い込みである公算が高い。

 

では冒頭の経営者は「新卒が文化の担い手となる」ことに、なぜこだわりを持ったのだろうか。

不動産においては「日本人の新築好き」がしばしば指摘されるが、会社においても「社員はピュアであればあるほど良い」という一種の信仰が存在するようにも感じる。

その経営者は「純血の家族」のようなものを作りたかったのかも知れない。スキルよりも「同質性」を重視する企業の特色と言っても良いだろう。

 

だが、これからの会社は家族ではないし、終身雇用でもない。また「転職すること」を前提に会社に入る新卒も増えるだろう。

またこれからの時代、「知識」を扱う会社は、均質の組織ではなく、多様な価値観や考え方を持つ組織のほうがアイデアやイノベーションを生み出す上では有利だ。

 

そう考えると今後「新卒一括採用」は減る傾向にあると思われるし、「他社の文化に染まっていない人がほしい」という動機をもつ会社も少しずつ減るだろう。

それが良いことなのかどうかは、まだよくわからないが。

 

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