「面白い文章が書きたかったら、まず面白い人生を歩んでください」

 

僕の知り合いのとあるブロガーは「どうしてそんなに面白い文章が書けるんですか?」と聞かれる度にこう答えるという。

これだけ聞くとイマイチ理解し難いかもしれないけど、この言葉にこそ面白い文章を書くためのコツが全て詰まっていると言っても過言ではない。

今日は面白い文章が生まれる仕組みと、なぜ作家がつまらなくなるのかについてを書いてみようと思う。

 

ユニークな人生は、面白い文章の究極のネタ

僕自身、自分の好きな作家やブロガーを思い浮かべると、確かに人生がちょっと一風変わった人がとても多い。

例えば作家の佐藤優さん。この方はソ連が崩壊する正に時代が動く瞬間の時にロシアで外交官をされていた方であり、鈴木宗男氏とタッグを組んで北方領土返還について真剣に取り組んでいたという経歴を持っている。

そのままいけば、歴史に名を残す偉業を成し遂げたかもしれなかったが、時の政府の国策調査により逮捕され、鈴木宗男氏と共に刑務所に収監されてしまった。このことについては、彼の初の著作である”国家の罠”に詳しい。

この経歴を読んでどう思っただろうか?僕はこの人がつまらない文章を書くとはとても思えない。人生は文章の最高のスパイスだ。

面白かった作家がつまらなくなるのは何故か

この仮説が正しいとすると、逆説的に何故面白かった作家がつまらなくなってしまうかもよくわかる。

人生が、常に面白くありつづける人というのは限りなく稀だ。初期の頃は自分の中に切り取ることができる「面白い人生」が沢山あった人も、自分自身を切って切って切りまくっているうちに、いつか切り取るべき場所がなくなってしまう。まあ俗言うところのネタ切れというやつである。

 

ときどき仕事をやめてブログ一本で食べていこうとするような人達がいるが、僕はその行為はブロガーとして自殺行為に等しいものだと思っている。仕事をやめて生産する時間を増やしても、切り取るべきネタとしての人生の時間が減ってしまってはどうしようもない。執筆時間がどんなにあろうが、ネタが良質でなければ良質な記事は仕上がらない。

ほとんどの人にとって、仕事は大切な人生の一部だ。それを捨て去ってもいいことなどない。

 

自分の中に切り取るべき人生がなくなってしまったこの手の人達は、本や映画などの様々な創作物に触れる事で新たなネタを必死に探している事が多い。だが元々の資源である「面白い人生」が枯渇しているのだから、面白い記事を書き続けられるはずもなかろう。

だけどごく一部だが、専業の作家として質を落とさずに常に面白い文章を書き続けられる人達がいるのもまた事実である。そういう人は普通の人達と比べて、何が違うのだろう?

あなたが面白いモノを作れないのは、自分の人生とキチンと向き合っていないからかもしれない

「面白い人生を送っている人はいいけど、じゃあその辺にいる普通の人間が面白いモノを作るのは無理なのか?」ここまで読んできた人はそう思うかもしれない。

ここで一つ非常に示唆的な文章がある。村上隆の芸術起業論によると、現代アートは「自分のコンプレックスと真正面から向き合って、それを恥ずかしげもなく表出」する事で価値が生まれるのだという。

 

村上隆の弟子である、Mr.(ミスター)という男がいるのだが、村上隆は彼が書く絵を見ても「Mrが本当に書きたいものはこれではない」と感じたのだという。そして事細かにMr.を問い詰めていったところ、村上隆はMr.が重度のロリコンであり、幼女が好きだという事実を突き止めるに至った。

それを恥ずかしげもなく”絵”にさせたところ、Mr.の書いた「よしっ(ち)」という絵になんと1500万円もの値段がついたのだという。

 

ちなみにこの絵、ネットでググれば誰でもみることができるのだが、正直普通の人は到底そんな値段を出してまで買いたいと思えるようなものではない(小学生の女の子がランドセルを背負って足を放り出しているだけの絵だ)

だけど、この絵に価値を見出す人は、この絵から「描き手の人生」を感じ、1500万円ものお金を出す意味を感じ取れるのだという(その後もMr.氏は絵を書き続けているが、いずれの作品もオークションにて恐ろしい金額で落札されている)

 

実は似たような事例は身近にも結構ある。たとえば先日、初の単著である”恋愛障害”を出した時をきらめく大人気ブロガーのトイアンナ氏は、以下の記事で本が産まれるまでに至った経緯を書いている。

 

am-our.com

200万を貢ぎ、自殺未遂。私がダメ男ばかり掴む恋愛障害から抜け出すまで(AM)

 

これを読めばわかるけど、トイアンナさんはそれまで全ての責任を他人になすりつけて生きていたのを認知行動療法を通じて自分と真摯に向き合い、自分の人生を通じて”自分が何者なのか”を理解している。

そうして「自分のコンプレックスと真正面から向き合って、それを恥ずかしげもなく表出」したのが、今回の”恋愛障害”という作品になるのだろう。

あなたは何者なのか、しっかり考えてみよう

誰が何を書いたかは、非常に重要である。例えば変な宗教家がドヤ顔で最先端の医療についての記事を書いていたら胡散臭さが拭い切れないが、現役の最先端機関に努めている医者が最先端の医療についての記事を書いていたら「ちょっと読んでみてもいいかな」と思えてきてしまう。

 

かつてインターネットが登場した時、僕たちは「誰が何を言ったかは重要視されず、匿名の個人であれ何をいったかが重視される社会が到来する」事を期待した。しかし蓋を開けてみれば、誰が何を言ったかが非常に重視されている。この事実を元に「結局、肩書が大切なのか」と悲観する人も多いかもしれない。

けど未だにインターネットでは綺羅星のごとく有名になる人達がいる。これらの人達が普通の人々と比べて何が違うかというと、大体において自分の人生にキチンと向き合っており、自分がどんな役割を演じて何を書けばいいかについて、非常に自覚的であるという事があると思う。そうやって、自分が活躍すべきフィールドについて自覚的な人の書く文章はメチャクチャ面白い。やっぱり「誰が何を書くか」は大切なのだ。

 

あなたが面白いモノを作れないのは、ひょっとしたらあなたが自分の人生にまだキチンと向き合えていないからかもしれない。自分の人生を哲学してみよう。そうすれば今まで見えてこなかった大切な何かが見えてくるはずだ。

 

あなたは何者ですか?

 

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2021年にはビジネス本部長、2022年より取締役に就任し、経費精算・請求書処理といったバックオフィスDX領域を牽引。
業務効率化・ペーパーレス化の分野で多くの企業の課題解決に携わってきた実績を持つ。

安達 裕哉 氏(ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO)
Deloitteで大手企業向けの業務改善コンサルティングに従事した後、監査法人トーマツにて中小企業向け支援部門を立ち上げ、
大阪・東京両支社で支社長を歴任。2013年にティネクト株式会社を設立し、ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年には生成AIに特化した新会社「ワークワンダース株式会社」を設立。生成AI導入支援・生成AI活用研修・AIメディア制作などを展開。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計71万部を突破し、2023年・2024年と2年連続でビジネス書年間1位(トーハン/日販調べ)を記録。


日時:
2025/5/16(金) 15:00-16:00

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(2025/5/8更新)

 

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