最近お会いした弁護士の方が、「最近、複業関係の相談多いんですよ」と言っていた。各企業、特に大企業が複業の規制を緩和する方向の中、社員と会社の関係も変わりつつあるのだろう。
とは言え、複業をするには時間もかかるし、それなりの覚悟もいる。
特に、「複業」は正規の就業時間外に行うものであるので、基本的には定時後と土日を利用してやらなければならない。
したがってこの場合「残業」を基本的にやらないことになるので、今までもらえていた(いなかった?)「残業代」分の収入が減ることになる。
そして、もう一つ問題なのは「出世による昇給」だ。
「毎日定時で帰っても、順調に出世できる会社」がどれほどあるだろうか。推測だが、おそらくまだ少ないだろう。
私の知るあるマネジャーは、
「定時で帰っている奴に、仕事のできるやつはいない」という。
この事の良し悪しはここでは論じないが、ともかく「たくさん働く奴が出世する」はまだ一般的な傾向として存在する。特に、仕事の質や能力が同程度であれば、最後は労働時間の多寡が成果の量となって現れるからだ。
結局のところ、複業は「残業代」と「昇給」とを引き換えに行う。これが今のところの実態である。
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さて、「複業」のかわりに「残業代」と「昇給」を差し出した場合、これがどれほどの機会損失になるか、少し計算してみよう。
まず残業代だ。ひと月あたりの残業時間を約40時間程とし、割増賃金の時給を2000円ほどとすれば、残業代は大体月に8万円程度である。
さらに昇給。比較的多くの人がなれる、リーダー程度まで出世したとすると、平社員よりも月の給料は10万〜15万円程度高いだろう。
したがって、合計で18万円〜23万円。「複業」をすることにより、これだけの機会損失を発生させる可能性がある。
月に約20万円。これを多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれだが、「複業」で月20万円程度を稼ぐのは、大変だろう。ブログを必死に書いて広告などで月に数万円の収入を得たとしても、これでは割にあわない。
「小遣い稼ぎ程度」の複業で、残業代+昇給を賄えるか、と言われれば、NOなのだ。
では、複業はやらないほうが良いのだろうか。
そんなことはない。
「終身雇用を前提として働く」ならば、その会社での僅かな昇給と残業代をとりにくのも良いだろう。
だが、終身雇用はすでに過去のものだ。我々が必要としているは「汎用性の高いビジネススキル、専門スキル」である。その獲得のために複業は最適だ。
例えば、社外の人と働くことは、スキルアップにとってとても貴重な機会だ。一社の仕事だけではとかく「タコツボ化」しやすいため、継続的に外部の人間と仕事することで、様々な知恵と出会うこともできる。
カーネギー・メロン大学のボブ・ケリーは、「花型研究者(スター)」と「平均的研究者」の違いに着目し、なにが違いを生み出すのかを統計的に研究した。
平均的な人々は世界を自分の観点からしか見ようとせず、ずっと同じ観点で考えてしまう。
一方スターはというと、広範囲な立場の人々を自身のネットワークに含めており、自分以外にも顧客やライバル、マネジャーの視点から物事を考えることができる*1
*1
仕事のパフォーマンスの向上のためには「多様な人々との付き合い」が重要であることを、有能な人々は知っている。
そして、ビジネスマンの中で最も優秀な層は、インターネットや紹介会社経由で転職をするわけではない。その多くの方は、「知り合いを通じて、有利な条件で」転職をする。
これは当たり前の話で、最も少ないコストで人を雇えるのが紹介ということを彼らは知っており、「紹介料の分を年収か、もしくは賞与に上乗せしてくれ」場合によってはという交渉をすることもできる。
実際、「紹介会社に200万、300万払うくらいなら、賞与にある程度色を付けても十分割に合う」という人事を、わたしは何人も見た。
だが、この転職方法には「人脈」が必要だ。その人脈を得る一つの方法が複業である。
自社での出世で勝負をするか。
マーケット全体で勝負するか。
後者の場合、複業は必要なのである。
-スパークル株式会社- 1.企業の課題解決に向けたDX推進人材の採用・育成に関する状況 -ティネクト株式会社- 1.「営業リストが尽きた時に次に取るべき行動とは?」
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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