生きていれば失敗は誰にでもあるものだ。
だが我々は「失敗」について深く考えているだろうか?
—————————
ある採用のイベントに参加した時、面接官をやっている方から、
「うちの会社は面接の時に「大失敗した経験」はありますか?」という質問をしているんですよ。」と聞いた。
「失敗ではなく、大失敗ですか。」
「そうです。普通の失敗程度のものは、ウチが聞きたい経験ではないです。」
「例えば、どんな話があるんですか?」
「多いのは、留年してしまった、とか転職で合わない会社に入ってしまった、とかですかね。」
「ほう」
「中には、ギャンブルにハマった、なんて人もいましたが。」
「そういうのが大失敗なんですか?」
「そうですね(笑)まあ、本人がそう感じていれば大失敗ってことで。」
「他にはどんなものが?」
「あと多いのはファイルを消してしまったとか。」
「なるほど。」
「そんなことを聞いて、どうやって選考に役立てるんですか?」
「一般的には、そこからどうやって立ち直ったか、というのを聞くらしいですが、我々は「それがどうして大失敗だと思ったのか」を聞くんですよね。」
「ほう」
「これって、結構価値観が出るんですよ。大失敗って多分、気軽に「どうやって立ち直ったか」なんて聞けないレベルのものですし。」
「そうですね。」
「それよりよほど有用なのが、応募者が「失敗」というものをどう捉えているかを聞いたほうが、その人となりがわかる。」
「ふーむ。そうかもしれませんね。」
「この前採用した学生は「本を読んでこなかった」という回答をしました。大失敗だと。」
「それが大失敗ですか。」
「理由を聞いたら、最近読んだ本が本当に面白かったらしいんですよ。それで、なんで今まで20年以上、本を熱心に読まなかったのか、後悔していると。この学生は知識に対する態度が本質を突いていたので、採用しました。」
「面白いですね。」
「あとは、「大学院に行ったのが大失敗」だという学生がいて。」
「なんですかそれ。」
「2年間を無駄にしてしまった、と言ってましたけどね。早く働けばよかったって言ってました。まあ、本当に無駄なことなんてないですけど。」
「採用したんですか?」
「しました。もちろんこの回答だけで採用したわけではないですが、ある程度「失敗」というものを人生の中に大きく位置づけている人がウチの好みです。」
「なぜ、そう考えるのですか?」
「失敗について深く考えない人は、伸びしろが小さいから、と言ったら良いですかね。」
「反省しない人、ということでしょうか?」
「反省とは違いますね。反省は「あれが悪かった」「これが悪かった」って言う振り返りですよね。サルでもできる。」
「おそらく」
「そうではなく、我々が見ているのは、どちらかと言えば物事の因果に関する理解といったほうがいいですかね。こういうことをしたら、こういう結果になって自分に返ってくる、という自分なりの考え方があるひとって、「考える人」じゃないですか。」
「……」
「まあ、失敗を通じて自分を客観的に見ることができる人が望ましい、ってことです。私は何故これを失敗だと感じたのか、自分はこういう価値観だから、それって自分を俯瞰してますよね。」
「確かに。」
「自分の価値観を、自分の外から眺められる人って、柔軟で、強い人です。だから、伸びしろが大きい。」
「なるほど。」
「私はこういう決定をした、こういう失敗をした。こういう価値観にもとづいて。これが言える人は、自分を客観視してる人です。そういう人がほしいんですよ。」
自分を客観視することは、伸びしろを作ること。
「一定期間ごとの、自分に関する振り返り」が有効なのは、それが理由なのかもしれない。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント
・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
- 日本実業出版社
- 価格¥1,540(2025/06/10 13:50時点)
- 発売日2015/07/30
- 商品ランキング151,378位