書くつもりで忘れていたことを書きます。

 

あんまり一般的な話ではないです。そんな例もあるのか、という程度でご認識頂ければ。

小学校の先生をやっている知人が1人います。とあるアナログゲーム界隈でよく遊ぶ人で、たまに飲みに行ったりもします。以前、小学校の図書室でライトノベルが禁止になったという話が出た時、色々話を聞いたりしました。手前味噌ですが、この記事です。

 (小学校図書室でラノベが禁止された件について、小学校教師に聞いてみた

 

で、また別の機会に、といっても何年か前ですが、彼と飲みの席で話したことがありました。

その時聞いた話が、自分としてはとても明快で、納得感も高かったのです。記事にする許可まで取ったのに、今の今まで忘れていました。

 

 テーマは、「教師がクラスの「いじめ」への対処を誤ってしまう理由」。

最初はちょっと、webに上がってくるいじめ体験談やら、訴訟にまでこじれてしまったいじめ問題が話題に上がって、ちょっと主語が大きな話し方をしてしまったんです。

 

 「いじめ問題って色々延焼してるのよく見るけど、ああいうのよくあんの?」

 「いやそれは多分、処理が下手な例だけ見えてるだけでしょ。いじめはよくあるけど、最近は結構いじめ対処のノウハウもちゃんとなってきてるとこ多いと思うよ」

 

そりゃそうかもな、と思いました。質問を変えました。

 

 「じゃあ、延焼させちゃってるところって、なんであんなにいじめの扱いが下手なの?」

彼はうーーーんと暫く首を捻って、「色々ケースはあるんだろうけど」と前置きしてから、こう言いました。

「いじめに関するゴール設定が間違ってるんだと思う」

 

 つまりこういう話です。

 学校のクラス運営には、当然のことながら「理想的な状態」「目指すべき状態」というものがあります。

それは、一言でいえば「みんな仲良く楽しく」という言葉に集約されます。現代学習指導要領にも、「仲良く助け合い学級生活を楽しくする」とか、「望ましい人間関係」みたいな言葉がたくさん出てきます。(参考:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/toku.htm)

 だから、先生は基本的に、「みんなが仲良く楽しく過ごせる」クラスの運営を目指す。これ自体は当たり前のことのように思えます。

 

ただ、その目標を堅持している場合、いじめが発生した時にどうするか。

「いじめた子がいじめられた子に謝って、反省して、仲直りして、またクラス皆が仲良く過ごせる状態を目指す」ことになる訳です。つまり、「いじめを乗り越えて、また仲良く一つになったクラス」を目指す訳です。これが彼の言う「ゴール設定」。

 

「けど無理。教師や学校が介入しなきゃいけないところまでいじめが進行したら、仲直りなんてぜーーーったい出来ない」

というのが彼の言葉です。いじめられた側は、いじめた側を絶対に許せない。いじめた相手との仲直りなんて望んでない。ただただ目の前から消えて欲しいだけ。

 

「いじめっ子にしても、主観的には「無理やり謝らされてるだけ」って思ってるケース多いだろうしね。本当に反省なんてしないでしょ。「みんなが仲良し」なんて実現できないんだよ」

 

けれど、先生がそれをくみ取らずに「みんなが仲良く楽しく過ごせる」というゴールを目指してしまったら。

いじめっ子は表面的に謝らされただけで、いじめられた子の立場もプライドも自意識も回復されず、結局誰も救われないままただ学校の面子だけがなんとか保たれる、という状態になるわけです。

場合によっては、先生の評価基準がこれに絡むこともあるのかも知れません。

 

 あとね、と彼は言いました。

「いじめってクラスの雰囲気が悪くなる、みたいに思ってる人多いでしょ」

「うん」 

「あれウソ。少なくとも教師の側から見ると、むしろいじめがあった方がクラスの雰囲気がよく見えたりする

「え」

「いじめてる側、あるいはいじめを黙認してる側からすると、少なくとも主観的には「共通の敵」に対して結束してるわけでしょ。いじめの声だって、表面的には「笑いが絶えない明るいクラス」に見えたりするんだよ。

だから、教師がちゃんと見てないと、「いじめが発生してるクラス」を「仲良く協調出来ているクラス」に誤認したりする。ヘタをすると、いじめられてる子を先生まで異分子扱いしたりする。それでいじめられてる子はますます絶望する」

 

あーー、と思いました。たまに、「いじめられてる子を助けてあげない先生」とかの話を観測して、何でこんなことが起きるんだ、と思ったんですが、そう思えるのはいじめられてる子の視点だから、なのか。

先生からすると、いじめられてる子の方が「クラスの和を乱す存在」に見えかねないんですね。

 

 「だから、そういうことが起こらない為にも、教師は客観的に、注意深くクラスの人間関係を観ないといけないんだけどね」

 

 けど、じゃあ実際にいじめが起きた時、学校側はどうすればいいのか、という話では、彼が言っていたことをまとめるとこんな感じになります。

 

・一にも二にも、とにかく可能な限り早く共有。教師側にも、当然親にも。共有を先延ばしにすれば先延ばしにする程状況は悪くなる

・最優先課題は、いじめられてる子の自己肯定感の回復。学校に逃げ場を作ってあげないといけないし、可能な限りいじめている側と接触しないで済むようにしてあげないといけない

・いじめている側の安易な「反省」を認めてはいけない。簡単に「許される」雰囲気を作ってはいけない。自分たちがしていたことの責任については淡々と指摘して追及する

・教師はいじめられている側の味方であること、いじめを一切許容しないことを、いじめていた側にも、いじめられていた側にも、その周囲にも明示すること。曖昧にしてはいけない

 

なるほどなあ、と。そこまでちゃんとやってもらえるものなら、いじめの処理を学校に任せてもいいんじゃないかな、と私などは思ったのです。

 

彼の言葉が全て妥当なのか、というところまではちょっと分かりません。恐らくケースバイケースの、その内の一部ではあるのでしょう。

 ただ、子どもが集団で社会生活を送る以上、いじめというものはある程度不可避なものなのかも知れません。ですが、大人がそれを決して見過ごしにしない、というスタンスを明確にするのは大事だよなあ、と。

 

また、自分の子どもがいじめられることも、あるいはいじめる側に参加してしまうことも、決して起きて欲しくないことではありますが、同時に決してあり得ないことではないんだ、と。なんとか子どもと話し合いつつ、そういった事態を切り抜けていきたいなあ、と。

 そんな風に考えた次第なのです。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:repio)