ある店でちょっとしたやり取りを目撃した。

 

3人のサラリーマンが食事をしているのだが、おそらく一人は会社の若手の管理職、もう一人はその部下、そして、最後の一人は彼らのクライアントだった。

そして、おそらくこれを目撃した多くの人は、とても「滑稽だ」と思ったのではないかと思う。なぜならば、若手の管理職が、部下とクライアントで驚くほど態度が違っていたからだ。

 

具体的に言えば、顧客に対しては徹底的に卑屈に振る舞う。

「いやー、私なんて……」

「うちなんて、御社の足元にも及びませんよ……」

 

だがその代わり、部下に対しては徹底的に高慢に振る舞う。

「お前なんか、まだまだだ」

「こいつ出来が悪くて……、◯◯さん(顧客の名前)を見習っておけよ。」

 

 

これらのやり取りを見聞きして、私と同席していた、ある人事コンサルタントの方が言った。

「いろいろな会社で、あんな感じの人を見ますけど、結局「高慢」と「卑屈」って、表裏一体なんですよね。だいたい、無駄にプライドが高い人は卑屈だし、卑屈な人は実はプライドが非常に高い。」

「どういうことですか?」

高慢と卑屈ってのは、広義では同じです。自信がない人の特徴ですね。

「そうなんですね。」

「そうです。自信がない人って、すぐに自分より立場の低い人の意見を否定するんですよ。余裕がないから。「自分は上の立場だから、部下の意見を聞いたら負け」って思っちゃうんですよ。」

「ああ、なんとなく思い当たります。」

「でも、そういう人って「立場が上の人」と出会った時には、逆に徹底的に卑屈に振る舞うことによって、上の人から指摘されないように、自分を守るんですよ。」

「なるほど……。」

「つまり、いずれにせよ「自分を守ることで精一杯」ってことです。下の人からも上の人からも、何も言われたくない。」

「器が小さい、ってことですね。」

「そうかもしれませんね。経営者でもこういう人はたくさんいます。」

彼は溜息を付いた。

「……人事制度を変えたい」っていう依頼はたくさん来るんですが、人事制度云々の前に、こういう態度を改めないと、評価は絶対にうまくいかないんですよね。」

「そうなんですか。」

「ま、そりゃそうですよね。いくら評価基準を精緻に作っても「こんな奴に評価されたくない」って思われたら終わりですから。」

 

私は彼に一つ、疑問を投げかけた。

「そういう態度って、なおるものなんでしょうか?」

「正直なところをいうと、難しいです。一種のクセなので。」

「ふーむ。」

「表層的には直させることができます。例えば、部下を否定しない、とか、エライ人にペコペコしない、とか。でも根っこの部分が「自信がない」なので、周りの人に無理してるのがわかっちゃうんですよ。」

「なるほど。」

「自信がない人には、「自信をつけろ」といっても当然わかってもらえません。死に瀕した人の気持ちがわからないのと同じです。ダメな自分と向き合わないと、自信はつかないので。だから、こういう管理職は即管理職から外すべきですし、経営者がこういう方だったら、転職を勧めますね。」

 

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(Petras Gagilas