「察しのいい人」と言われる人は、みんな「傾聴力」をもっている (講談社プラスアルファ新書)傾聴はビジネスパーソンに必要なスキルとしてよく取り上げられる。

「傾聴」は辞書で調べれば「熱心に聴くこと」と書いてあるが、セミナーや本に書いてあること、あるいは「聴くこと」に長けている人の話からすると、どうやらそんなに単純なものではなさそうである。

 

ざっと調べただけでも、

  • 相槌を打ちながら聴く
  • 相手の言ったことを繰り返す
  • できるだけ相手に話してもらう
  • 相手のほうを向く
  • 相手に感情移入する

などなど、様々な「スキル」が紹介されている。

 

しかし、「傾聴」というやつは、実践がなかなか難しい。相手の言うことに対して上のようなことをきちんと行っていたとしても、なんとなく「傾聴しているフリ」はできるのだが、相手の気持が本当に理解できたと感じることは少ないように思う。

相手は気持よさそうに話をしてくれているのだが、どうも気持ちがわからない。

私が鈍感なだけなのかと思うこともあるが、「相手の感情」など本当にわかるのだろうかと思う時もある。

 

 

だからある時、「傾聴」について気づいた。

今まで私は、相手の気持を察しようとしたのだが、それはどうやっても無理なのだ。

 

「目の前の相手の気持はわからない」のだ。

 

「わからない」と割り切ることで、重要な事に気づいた。わからないならば、わかったふりをせず、教えてもらえばいいのだ。

「傾聴」は、相手の気持を読む行為ではないし、相手の話を聴く行為でもなかった。

 

「相手の感情を教えてもらう行為」が傾聴だったのだ。

できている人にとっては当たり前の話なのだが、これは発見だった。

 

これで、相手に対する質問が変わる。

「その時、何を感じたのですか?」

「やっぱり、腹が立ちますよね」

であったりと、「感情」に関することを教えてもらう質問が増える。

 

 

推理小説における「名探偵」の描写に優れている作家は、「事実」は人からは得られないことを知っている。人から得られるのは「感情」であったり、「思い込み」である。殺人犯を突き止めるには、「感情」と「事実」を付きあわせて、推理する必要があるのだ。

誠に、「傾聴」は奥深い。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)