16世紀の哲学者、フランシス・ベーコンは「知は力」と説いたが、この言葉だけでも彼の恐るべき先見性がわかる。
かつて教養人の嗜み、暇を持て余した人々の遊び程度でしかなかった「知識」は現代において「技術」と結びついたことで、単なる概念にとどまることなく、世の中に実際に影響を与える「力」となった。
例えば、2重螺旋や転写などのDNAについての「知識」は単なる概念にすぎないが、「遺伝子工学」といった技術と結びつくことで薬を創りだしたり、有用な生物を創りだしたりすることができるようになる。
生成文法など言語についての「知識」は単なる概念の集合だが、「電子工学」「ソフトウェア工学」「ハードウェア工学」などと結びつくことにより、人工知能に至るようになる。
このように「知識」と「技術」の結びつきは、世の中を変えるパワーを生み出してきた。
知識が技術と結びつくにあたって重要だったのは、再現性や普遍性だ。
せっかく飛行機を作っても、「飛んだり飛ばなかったりする」ではマズいし、薬についても「効いたり効かなかったり」ではダメである。
技術者が成果品の動作を保証するためには、元になる知識の再現性や普遍性が絶対に必要だ。
だが、扱う対象が複雑になればなるほど、「知識」の再現性や普遍性を保つことは難しい。
例えば「惑星の軌道」は単純だ。幾つかの知識を使えば簡単に計算ができる。
だが「ビジネス」や「人」は対象として複雑なため、再現性や普遍性のある知識が少ない。
例えば、中小企業の経営者に多数のファンを抱える多摩大学の田坂広志氏は、著書「なぜマネジメントが壁に突き当たるのか」の中で、意思決定について次のように語る。
深い直観力が求められる重要な意思決定の場面において、最も大切なことは「何を選ぶか」ではありません。
最も大切なことは「いかなる心境で選ぶか」なのです。
一見含蓄があり、真理を突いているようにも見える。
なぜマネジメントが壁に突き当たるのか―成長するマネジャー12の心得
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だが一方で、マネジメントの大家であるピーター・ドラッカーは意思決定の基本を
・問題を明確にする
・意見の対立を促す
・意見の相違を重視する
・行動するかしないかいずれかであり、中途半端は存在しない
・意思決定は責任を割り当てなければならない
・意思決定はフィードバックの仕組みを組み込まなくてはならない
としており※2、これら2つだけをとっても、意思決定について異なった知識を提示しており、本当に再現性や普遍性がある知識なのか、判断することは非常に難しい。
Googleで検索すれば「効果的な意思決定のための5つの方法」といったタイトル付けの記事を見るが、手軽に手に入る「知識らしきもの」が溢れているため、どの知識が妥当性のあるものなのか迷うことも多いだろう。
※2
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情報化社会、知識経済社会では、なにが「知識」でなにが「ニセの知識」なのか。我々はそれを利用する前に注意深く判断しなければならない。
では、どうすれば「知識」と「ニセの知識」とを区別し、使いこなせるようになるのだろうか。
1つの方法は「科学的手法」にもとづいている知識を信用することである。例えば
・定量的な測定が行われている
・統計的に有意かどうか検証されている
・反証可能性が保たれている
といった原則を採用している場合はより信頼性の高い知識となる。
逆に誰か一人の純粋な経験のみに基づく場合は、信頼性の低い知識であるとみなすべきだろう。
しかし、である。現実的には
「科学的手法で検証済みの知識しか利用しない」
とする事は無理があるし、
また、そもそも「科学的に検証不可能だから間違いである」と言い切ることもできない。
「意思決定は、決定するときの心境が大事である」は科学的に検証されている知識ではないが、自分が使う分には十分有用だ、とすることもできる。
だから、学者にかぎらず「知識」をうまく利用する人は、その信頼性の程度を確かめながら使っている。
・この知識はどのような経験やデータから導かれたのか
・誰の生み出した知識なのか
最低限、これらを抑えておき、「間違った知識かもしれない」と留保をしておくことが肝心だ。
逆に言えば「ニセの知識」かどうかは、活用してみないとわからないことも数多くある。
「仮説」⇒「検証」がビジネスにおいて重要なのは、そのためだ。
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