「あなたはまだ若いんだから」とよく言われる。

人は若さについて言及するとき、自分の年齢と比較している。一般論として語る場合を除き、人間関係において若さは自分と比べて年上・年下のどちらであるのかを表しているにすぎない相対的なものなのだ。

とはいっても24歳という年齢は社会人からしてみれば若い部類に入るのだろう。

 

この「あなたはまだ若いんだから」はポジティブな言葉として言われているように感じる。

そしてその裏返しとして、発言者自身をネガティブなものにしているようにも感じる。つまり、「あなたはまだ若いんだから可能性がたくさんあっていいね」と「それに比べ私はもう若くないから……」を同時に伝えているのである。謙遜しつつ「頑張ってね」というメッセージを届けてくれているのだろうと思う。

 

だが、若さには本当に価値があるのだろうか。

ふと疑問が湧いてくる。いや、もちろん私も若いからこそ発揮できるパワーがある点には納得しているし、時に若さが武器になることがあるのも知っている。

ただ、若さに絶対的な価値があり、逆に年齢を重ねていることが「謙遜」になってしまうような風潮があるとすれば、それには少し違和感を覚える。「若くていいね」が「若い人は可能性がたくさんあっていいね」という意味で使われている場合、むしろ「年を重ねていていいね」の方がしっくりくるのだ。

 

身体的な衰えと、寿命が同じなら残された時間が短いこと、この2点は年を重ねていることのデメリットといえばデメリットだ。だが逆に言うと、この2点以外にデメリットらしいデメリットは思い浮かばない。

 

「可能性がたくさんある」のは若い人なのか、年を重ねた人なのか。若い人に可能性がたくさんあるとするなら、それは残された時間がたくさんあることと、若さゆえに発揮できるパワーがあること、社会が「まだ若いから」と寛容になってくれること、この3点くらいだろうか。私には、これらが大きいものだとはあまり思えない。

 

また、若さに可能性を見出すことができる理由としてもう1点、次のことが考えられる。

年を重ねた人にとって、自分より若い人の年齢は経験済であり、その頃の自分を評価することができる。過去に可能性はないが、だからこそ事実として客観的に評価することができる。

逆に未来は全て「可能性」の話になってくるから、評価することができない。“若い”人が今どんなにダメ人間だとしても、将来はどうなっているかわからない。ノーベル賞をとっているかもしれない。つまり、相手が自分と同じ年齢になったとき、その相手がどのような人物になっていてどのような成果を出している人なのかは誰にもわからないということであり、それが「いいね」に集約されているのではないかと思う。

一方、年を重ねた人に可能性がたくさんあるのは、経験が豊富であること、というとてつもなく大きな要素が挙がってくる。経験を積み、視野も広がり、結果として可能性も広がっている。年を重ねるとは、そういうことではないのだろうか。

 

私は24歳で、今後のことはわからないけれど、少なくとも今までは年を重ねれば重ねるほど視野が広がって選択肢も増えたと思っている。過去の積み重ねから未来が生まれるのだから、経験を積めば積むほど可能性も広がっていく。

 

社会人の先輩に会うと、その人の経験と自分の経験の差があまりに大きくて「この経験の差はなかなか埋められないな」と思うことがある。年月を重ねることが全てではないけれど、重ねなければ埋まらない溝もあるのだと痛感する。

 

どの程度本気で「若くていいね」と言っているのかはわからないが、一方で“若い”人は相手の経験にかなわないと思っていたり、埋められない差を感じていたりするものである。

 

時間の流れは不可逆的なものであり、若い人は今後年を重ねることができるが、年を重ねた人が若い時に戻ることはできない。だから若さは貴重だ。こういう意見も聞いたことがある。だが、若い人は今すぐ経験を積むことはできない。1日の間に24時間分の経験を積むことはできても、10年間分の経験を積むことはできない。当たり前のことだが、若さを手に入れることができない年上の人がいるのと同様に、経験を手に入れることができない年下の人もいるのである。

 

24歳の人間は24年間分の経験から未来が始まり、40歳の人間は40年間分の経験から未来が始まるわけで、24歳の自分からすると、年を重ねた分の「可能性」に「いいね」と言いたくなる時がある。

 

 

こんな愚痴みたいな記事を書いている時間があるなら、もっと「経験」を積めば? と言われてしまいそうなので、これくらいで。

ではまた!

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
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(2025/6/2更新)

 

[著者プロフィール]

名前: きゅうり(矢野 友理)

2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。

著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)

Twitter: 2uZlXCwI24 @Xkyuuri

ブログ:「微男微女

 

Bernardo Chang