当たり前の話なので、「今更」と思う方もいるだろうが、成果について。

 

はっきりと言われることは少ないが、私が会社員生活で学んだ「会社のルール」の中で、最も厳格、かつ厳密なものは、

「会社員は成果を出せなければ、企業から必要とされない」

であった。

つまり身も蓋もない言い方をすれば「無能は不要」ということだ。

 

中小企業だろうと、大手だろうと、上品な会社も下品な会社も、儲かっている会社でも潰れそうな会社でも、これはいかなる企業であっても同じである。

したがって、その他のことは言ってしまえば些細な話である。

 

「マナー」

「ルール」

「仁義」

など、組織を運営する上で必要とされることはある。

しかし、限度はもちろんある(法律違反はマズイ)が、結局のところ企業においては

「多少マナーが悪くとも、成果を出さないよりはマシ」

「ルールを多少破ったとしても、成果を出せば許される」

「仁義は大事だが、成果を出すためには仁義を破ることもある」

という現実に、その他の価値観はすべて敗北する。

 

「会社に所属している以上、タダ飯喰らいは容認されない、それが「会社員」との最も根源的なルールである」

と、わたしは昔の上司からきつく言われたものである。

 

これは「国」「地域コミュニティ」「家族」などの公共的な共同体との本質的な差異である。

共同体は一定数存在する「タダ飯喰らい」を容認しなければその存在意義を問われるし、そもそも家族というのは、弱者をまもることをその基礎においている。

「成果を出せ」というセリフは、公共的な性格を持つ共同体内においては必ずしも適用されない。

こう言った共同体はしばしば、「成果を出すこと」ではなく「存続すること」そのものが目的となる。

 

だが、企業は全く異なる。

企業は「存続することそのもの」は目的ではない。「人々の生活を守ること」も目的ではない。

ただひたすら「成果をあげる」ために存在している。

 

ピーター・ドラッカーは、企業を次のように定義している。

企業は社会的組織である。共通の目標に向けた一人ひとりの人間の活動を組織化するための道具である。*1

ここに述べられているとおり、重要なのは「共通の目標」を達成することであり、個人の利益を守ることではない。企業は、本来個人の利益にほとんど関心はない。

例外的に個人の利益に関心をもつのは、それが業績に大きな影響があると判断したときのみである。

 

もちろん、企業活動が環境を汚染したり、個人の生活を破壊するようでは「企業」という存在そのものが社会から糾弾されてしまうだろう。そこには公権力からの一定の制限がかかってしかるべきである。

「成果」に邁進することは、負の側面もまた大きいのだ。

 

だが、「成果が出せない社員は不要」という厳然たる事実を理解しているかどうかは、「企業に勤める者」が成功できるかどうかの大きな分岐点となる。

 

見渡すと、相も変わらず企業に対しての「勘違い」や「過剰な期待」もまた多い。

例えば

「企業は従業員の生活を守れなくてはならない」

「真面目に働いたら報われなくてはならない」

と言ったものだ。

こう言った言説は、企業があげるべき成果と関連するときのみ意味を持つ。

だが、そうでなければ現実的には問題にすらされないのである。

 

上の話をつきつめると、企業に勤めるものの中で、最も成功するものは結局

「企業が出すべき成果を、自分で決定できる人間」

であることがわかる。

自分で決めたことであれば楽しく、やりがいをもち、意欲も湧く。

そしてこれは必ずしも経営陣の特権ではない。一般の社員だろうと「自分のやっていることは、会社の成果に貢献できているだろうか?」と問うことはできるし、そうでなくては容易に「無能」となる。

 

だから、会社員は必ず「成果を出すこと」にこだわらなければならない。

いやむしろ、会社員であることの唯一の資格が「組織の成果にこだわっていること」なのだ。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
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(2025/6/2更新)

 

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*1

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