みなとみらいのシステム開発会社、オリエンタルインフォーメイションサービス、代表の大内です。

前回はエンジニアの地位向上を目指すのならば、「安定した下請けビジネス」を捨て、ピラミッドの上部、すなわち「エンドユーザー企業」と直接取引をすることを目指さなければならない、とお伝えしました。

そのために必要なのはマーケティング力、営業力、そしてプロジェクトマネジメント力の3つです。

 

そして、この中でもっとも重要なのはもちろん、マーケティング力です。

マーケティングこそ、中小企業に最も必要な施策です。

 

ただこの「マーケティング」という言葉、ありふれている割にはその中身はあまり知られていません。

「システム開発会社のマーケティングって何?」

と問われて、何を思い浮かべるでしょう。

 

一般的には「システムの引き合い」をもらうために、ホームページを拡充したり、ブログを作ったり、ときにセミナーを開催したり、メールマガジンを送ったり、というイメージが先行するかもしれません。

しかし、真の意味での「マーケティング」は、そのような手法の話ではありません。

その本質は「顧客も気づいていないかもしれない需要を発掘する」事にあります。

 

抽象的な話なので、もう少し具体的な話をしましょう。

弊社に岡本、という社員がいます。

(写真は弊社メンバーの岡本です)

彼は現在弊社のお客様と共同で「マーケティング活動」を推進しているメンバーの一人です。

 

例えばこんな話があります。

国が橋梁点検ロボットの開発プロジェクトを推進していることをご存知でしょうか?つい先日も、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が橋梁点検用ロボットの実証実験を実施しました。(http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100680.html

日本のインフラ維持管理には、永らく職人たちが携わってきましたが、高齢化、少子化が進み、人力でのインフラ維持管理が難しくなってきているため、ロボットを使った点検、修理などが求められています。

橋梁やトンネルなどの社会インフラは、今後、建設から50年を経過するものが加速度的に増加し、それらの老朽化に対応するための十分な資金と高度な維持管理の専門知識を有する人材不足が、大きな社会問題となっています。

このような背景のもと、NEDOでは2014年度から「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト」において、橋梁やトンネルなど既存インフラの状態に応じた効果的かつ効率的な維持管理・更新等を図る取り組みとして、インフラ構造物に対して人間の立ち入りが困難な箇所へ移動し、インフラの維持管理に必要な情報を取得するロボットの研究開発を推進しています。

このように国交省が社会インフラの維持整備改善にお金をかけている現状を見て、彼は

「国交省は人命に関わるインフラ、例えばコンクリート構造物である橋梁やトンネルには最優先で予算を割り当てるのではないだろうか」

と考え、クライアントと共同プロジェクトを立ち上げました。

 

ただ、仮説には検証が必要です。

そのため、彼は足を使いました。

具体的にはゼネコン、建設コンサルタント、点検業者、さらにはインフラ管理者に対してヒアリング活動を行い、その仮説を検証しました。

すると、こんなことがわかりました。

「橋やトンネルは5年に1回の割合で点検されるが、その1/10は、補修が必要である。そして、補修にはかなりの手間とお金がかかる」

 

仮説検証の結果をもとに、岡本は提供価値の具体化に着手します。

「「補修工事」をどうにかして、我々の得意領域である、ITで改善できないか」

こうして彼は補修工事におけるビジネスチャンスを探りました。

そして、「補修工事業者」や「道路舗装会社」など、大手から零細企業まで、くまなく現場へのヒアリングを続けた結果、彼は「補修箇所の特定」と「報告書作成」に膨大な手間がかけられている事実に辿り着きました。

この状況はチャンスかもしれません。

 

そもそも、ITの本質は「データ取得と生成の自動化」にあります。

補修箇所の特定」と「報告書作成」の膨大な手間は、自動化の対象となるはずです。

 

岡本はそれらボトルネックとなっている部分を解決するソフトウェアをプロトタイピングし、補修工事の発注者と受注者にデモンストレーションを行い提供価値と市場受容性を確認しました。

すると現場の方々からは

「素晴らしい」と、ポジティブな反響が得られたのです。

現在彼は、そのソフトウェアのサービス化を進めるべく、お客様と最終的な調整を行っています。

 

彼はよく「要件定義ですら、実は上流工程ではなく、実際の上流工程は、マーケティングの段階にあります」と言っています。

現在一般的に考えられている「システム開発会社のやるべきこと」を超え、真のマーケットにおけるニーズを把握する活動こそ、エンジニアの地位向上に必須のものなのです。

 

 

 

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