編集者の方から、本を頂いた。
内容は……と言えば、要するにメルセデス・ベンツのマーケティング本である。
彼らが如何に苦心して「最高」を作ろうとしているかを克明に綴っている、きれいな話だ。
私は正直、あまり「きれいな話」に興味が無いので、自分でこの本を手にとることはなかったが、逆に「自分のスコープの範疇外」の本は貴重である。せっかく頂いたので、読ませていただいた。
そのなかで興味を惹かれた点は、彼らが「最高」をきちんと定義していることだ。
簡単に言えば、彼らが目指した「最高」は顧客とのタッチポイントを洗い出し、その全てにおいて「顧客の体験」を期待を上回ることと定義されている。
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確かに、我々は「最高」が好きだ。
サービスやモノを使っていて、「これは最高である」という体験をしたことはあるだろうか。
企業における諸活動だけではなく、研究分野、芸術、スポーツなどの各分野において「最高である」と呼ばれるものは、人に多くの感動と満足を与える。
だが「最高」のものは少ない。
「最高は1つしか無いのだから、当たり前だろう」という方もいるだろうが、そういうことを言っているわけではない。
必ずしも、一番=最高ではない。
最高だと人が感じるものは「一番のもの」とは明らかに違う。
なぜならば「一番のもの」は結果として一番になっただけのものも多数含まれるが、「最高のもの」は、最初から「圧倒的にトップ」を目指さない限り、決してできないからだ。
この差は大きい。
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例えば、展示会か何かのイベントを企画してほしい、と上司から言われたとする。
多くの企業を集め、新製品を発表してもらうのだ。来場者には新製品に興味を持ってもらい、ビジネスマッチングや製品改善のアイデアに結びつけるイベントとする。
「わかりました」と言い、考える。
よく行われているイベントはどのように開催されているだろうか、どの程度の来場者数を見込んで、どの程度の会場を用意して、どのように出展者の管理をすればよいかを調べなければならない。
「ああ、けっこう大変だな」と、思うだろう。
そうして、粛々とイベントの開催に向けて動き始める。
会場を借り、出展者を募り、マーケティングを行って来場者を獲得する……。一生懸命動いた甲斐あって、イベントは無事に終わった。皆がねぎらいの言葉をかけてくれる。
しかし、来場者と出展者のアンケートを見て気づく。
「最高のイベントだった」とする人は少ない。良くも悪くも「それなり」のイベントであったと。
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「最高を目指す人」はどうか。
展示会か何かのイベントを企画してほしい、と上司から言われた。
ところが彼は非常に悩む。
「出展者と、来場者に「最高」の展示会だった、と感じてもらうためには何が必要なのか」
彼は多くの展示会に足を運び、出展者と来場者の反応をリサーチする。
専門家を呼び、展示会の価値は何か、どのような課題を抱えており、ブレークスルーできる可能性はあるのか、彼は必死に考える。
最高の展示会を開催するには、まず出展者が最高でなくてはならないし、来場者の質も高くなければならないのだ。
予算と時間の制約の中で、もちろん、会場も行き届いてなければならない、マッチングが適切に行われなくてはならない……
その全てで「最高」を目指さなくてはならない。したがって、考えなければならないことはいくらでもある。
だが、「最高」を常に目指す彼は、妥協しない。
妥協した瞬間、「最高」は消えてなくなってしまう。彼は出展者一つ一つを廻り、ニーズを確認する。一方で、最高の来場者を獲得するため、様々なコミュニティにアクセスし、人を集めてもらうように依頼をかける。
ついに当日を迎えた。
彼は当日のトラブルに目を光らせる。最高のためには迅速なトラブル解決が必要だ。電源がない、来場者の情報が足りない、ブースが想定と違った出来になっている……
その一つ一つの解決に、彼は奔走する。
そして、イベントは最高の盛り上がりを見せる。
アンケート結果は驚異的だった。出展者、来場者の多くが「最高」という評価をしていた。
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最高のものを作るのに必要なのは「才能」ではない。
かと言って「努力」でもない。普通の人であっても努力はしているのだ。
異なるのは「最高を作ろう」という意志である。偶然に「最高」ができることはほとんどない。
そのために必要なのは
まず、「最高にする」という意志が必要である。
そして、「最高とは何か」を定義できていなければならない。
さらに、「最高」を実現するために、骨身を惜しまず働かなければならない。
だからこそ、「最高」は尊いのである。
(2026/10/26更新)
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