編集者の方から、本を頂いた。
メルセデス・ベンツ「最高の顧客体験」の届け方
- ジョゼフ・ミケーリ,月沢 李歌子
- 日本実業出版社
- 価格¥2,035(2025/06/12 18:26時点)
- 発売日2017/01/28
- 商品ランキング444,137位
内容は……と言えば、要するにメルセデス・ベンツのマーケティング本である。
彼らが如何に苦心して「最高」を作ろうとしているかを克明に綴っている、きれいな話だ。
私は正直、あまり「きれいな話」に興味が無いので、自分でこの本を手にとることはなかったが、逆に「自分のスコープの範疇外」の本は貴重である。せっかく頂いたので、読ませていただいた。
そのなかで興味を惹かれた点は、彼らが「最高」をきちんと定義していることだ。
簡単に言えば、彼らが目指した「最高」は顧客とのタッチポイントを洗い出し、その全てにおいて「顧客の体験」を期待を上回ることと定義されている。
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確かに、我々は「最高」が好きだ。
サービスやモノを使っていて、「これは最高である」という体験をしたことはあるだろうか。
企業における諸活動だけではなく、研究分野、芸術、スポーツなどの各分野において「最高である」と呼ばれるものは、人に多くの感動と満足を与える。
だが「最高」のものは少ない。
「最高は1つしか無いのだから、当たり前だろう」という方もいるだろうが、そういうことを言っているわけではない。
必ずしも、一番=最高ではない。
最高だと人が感じるものは「一番のもの」とは明らかに違う。
なぜならば「一番のもの」は結果として一番になっただけのものも多数含まれるが、「最高のもの」は、最初から「圧倒的にトップ」を目指さない限り、決してできないからだ。
この差は大きい。
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例えば、展示会か何かのイベントを企画してほしい、と上司から言われたとする。
多くの企業を集め、新製品を発表してもらうのだ。来場者には新製品に興味を持ってもらい、ビジネスマッチングや製品改善のアイデアに結びつけるイベントとする。
「わかりました」と言い、考える。
よく行われているイベントはどのように開催されているだろうか、どの程度の来場者数を見込んで、どの程度の会場を用意して、どのように出展者の管理をすればよいかを調べなければならない。
「ああ、けっこう大変だな」と、思うだろう。
そうして、粛々とイベントの開催に向けて動き始める。
会場を借り、出展者を募り、マーケティングを行って来場者を獲得する……。一生懸命動いた甲斐あって、イベントは無事に終わった。皆がねぎらいの言葉をかけてくれる。
しかし、来場者と出展者のアンケートを見て気づく。
「最高のイベントだった」とする人は少ない。良くも悪くも「それなり」のイベントであったと。
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「最高を目指す人」はどうか。
展示会か何かのイベントを企画してほしい、と上司から言われた。
ところが彼は非常に悩む。
「出展者と、来場者に「最高」の展示会だった、と感じてもらうためには何が必要なのか」
彼は多くの展示会に足を運び、出展者と来場者の反応をリサーチする。
専門家を呼び、展示会の価値は何か、どのような課題を抱えており、ブレークスルーできる可能性はあるのか、彼は必死に考える。
最高の展示会を開催するには、まず出展者が最高でなくてはならないし、来場者の質も高くなければならないのだ。
予算と時間の制約の中で、もちろん、会場も行き届いてなければならない、マッチングが適切に行われなくてはならない……
その全てで「最高」を目指さなくてはならない。したがって、考えなければならないことはいくらでもある。
だが、「最高」を常に目指す彼は、妥協しない。
妥協した瞬間、「最高」は消えてなくなってしまう。彼は出展者一つ一つを廻り、ニーズを確認する。一方で、最高の来場者を獲得するため、様々なコミュニティにアクセスし、人を集めてもらうように依頼をかける。
ついに当日を迎えた。
彼は当日のトラブルに目を光らせる。最高のためには迅速なトラブル解決が必要だ。電源がない、来場者の情報が足りない、ブースが想定と違った出来になっている……
その一つ一つの解決に、彼は奔走する。
そして、イベントは最高の盛り上がりを見せる。
アンケート結果は驚異的だった。出展者、来場者の多くが「最高」という評価をしていた。
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最高のものを作るのに必要なのは「才能」ではない。
かと言って「努力」でもない。普通の人であっても努力はしているのだ。
異なるのは「最高を作ろう」という意志である。偶然に「最高」ができることはほとんどない。
そのために必要なのは
まず、「最高にする」という意志が必要である。
そして、「最高とは何か」を定義できていなければならない。
さらに、「最高」を実現するために、骨身を惜しまず働かなければならない。
だからこそ、「最高」は尊いのである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【著者プロフィール】
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・ブログが本になりました。
「仕事ができるやつ」になる最短の道
- 安達 裕哉
- 日本実業出版社
- 価格¥1,540(2025/06/12 13:52時点)
- 発売日2015/07/30
- 商品ランキング80,251位
・「「仕事ができるやつ」になる最短の道」のオーディオブックもできました!
(Photo:Luca Sartoni)