しょうもない話がしたくて、タイトルとは関係ないところから始める。
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先日、記事を読んでくれた人から「物分かりが良すぎる」という感想をもらい、「確かにそうだ」と思った。
ごちゃごちゃした平凡な日常から使えるところだけを切り出して綺麗に見えるようにまとめているのだから、「物分かりが良すぎる」文章になっているのはごもっとも。
上司も毎回読んでいるし、何より本名で書いているということもあって、「こんなことをやらかしました」とか「会社の問題児です」(たぶん違うけど)とは書きづらく、結果的に物分かりの良さそうな話ばかりが発信されていく。
とはいえ実際は「日々学んで圧倒的成長(キラキラ)」なんてことはなく、しょうもないことをやらかしていることの方が多いくらいである。
1年以上前だから時効だと思われる仕事でやらかした話を1つ。
契約して間もない方から、「風呂のお湯が出ない」という連絡をもらった時のことである。
お湯が出ないのであれば、出るようにするのが仕事だ。給湯器が壊れてしまったのだろう。交換しなければならない。給湯器を発注したが、交換するまでに1週間程かかると言われてしまった。1週間は長い。すぐにでも交換してほしい。そう伝えたが、1週間が最短だと言う。仕方ない。電話で説明した。もちろん謝罪もした。相手は怒った。
「1週間も水風呂に入れと言うのですか!」
私だって1週間もお待たせしたいわけではない。今すぐ交換したいと思っている。でも、どうしても1週間かかるのである。
私は再び謝った。だが相手の怒りは収まらない。
「1週間も水風呂はないでしょう! あなたならどう思いますか!! あなたならどうしますか!!!」
世の中にはモンスター級のクレームが溢れていることを思うと、これは正当な怒りであり、正当な主張である。
相手は何も悪いことをしていない、いうなれば被害者である。怒りに共感し、状況が少しでも良くなるような提案をするべきである。それなのに、どういうわけか、私は真面目に返答していた。
「私なら我慢します!」
今でも忘れられない、愚かな返答。季節が夏だったということもあり、1週間くらいならお湯なしでも我慢できると思ってしまったようだ。
当然ながら相手の怒りは倍増した。上司にも助けてもらい、最終的には近くの銭湯をご利用いただくことでなんとか収まった。社会人1年目の出来事である。
「言葉を言葉通り受け取らない」ことと「相手に共感する」ことの大切さを学んだ。この件以来、かなり電話応対は上達した(と信じている)。もともとのレベルが低すぎたというのもあるが、1度やらかすとさすがに意識するようになる。
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やらかした話だけしても締まらないので、一応もう1つ学んだことも付け加えておく。
「言葉を言葉通りに受け取らない」ことの大切さも「相手に共感する」ことの大切さも私は最初から知っていた。おそらく、この記事を読んでいる人もそんなことはとっくの昔に知っているだろう。
本を読んで、知識としては持っていた。でも、できなかった。言うは易く行うは難し、ということだろうか(ちょっと違うか)。とにかく「見聞きしただけの知識」はその時役に立たなかった。
でも、それが無駄だったわけではない。少しだけ痛い目にあって、「ああ、あの本に書いてあったのはこういうことだったのか」と思うことができた。
どの本に書いてあったのかはもう忘れてしまったが、内容が頭の片隅に残っていた。それはこの経験をするまで引き出されることがなかった。経験して初めて引き出され、その知識が本当に身になった感覚になった。
こういうことは読書に限らず日常的にあるだろう。
親や先生、友人、上司のアドバイスがピンとこない。でも、いろいろな経験をした後に思い返すと、「あのアドバイスは、こういうことだったのか」とストンと落ちる。
だから、本を読んで得た知識や誰かから聞いたアドバイスがすぐには役に立たなかったとしても、それは決して無駄になっているわけではない。
経験前に知っていたことで、失敗した時にハッと気づくことができ、知らなかった場合より良い反省の仕方ができる。そうすることで、知識が真に“身になる”のである。
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今後もしょうもないことをやらかす日々が続くだろう。学生の頃読んだビジネス書の内容がちっとも役に立っていない。でも、やらかす度にハッとなり、きっと少しずつ身になっていくはずだ。
ではまた!
次も読んでね!
(2024/3/26更新)
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[著者プロフィール]
名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
著書「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
(Photo:smalljude)