任天堂の営業利益が3年連続赤字となるそうだ。

スマホ、タブレットに利用者流れる…任天堂苦境(読売新聞)

私は任天堂のゲームが大好きだったので、このようなニュースを見ると少し悲しい。この業績悪化の原因として、

”業績悪化の最大の要因は、12年11月に発売した据え置き型ゲーム機「Wii U(ウィー・ユー)」の不振だ。前作「Wii(ウィー)」のように操作しやすくするだけでなく、インターネットの交流サイトに簡単に接続できる新機能を取り入れたが、買い替えを促すほどの斬新さはなく、ソフト不足も足を引っ張った。”

 

新型の据え置き型ゲーム機の売上不審が主たる要因のようだが、今までは「当初売上不振でも、値下げによってある程度持ち直す」ということが起きてきた。しかし、今回は様子が違うようだ。

しかし、当初計画にはなかった本体価格の値下げまでした欧米市場でも、販売が落ち込んでおり、先行きは不透明だ。

今回は、値下げをしても販売が落ち込んでいる。クリスマスの商戦でもプレイステーションに大幅に遅れを取ったようだ。

最も売れたハードはPS4 ― 2013年11月の米国小売市場セールスデータ(GamePark)

 

任天堂の主たるユーザー、つまりあまりゲームをしないライトユーザーが、スマートフォンやタブレットに流れているのだろう。

Wiiは売れていないが、Nintendo3DSが売れていることからもわかるように、スマートフォンを持っていない子どもやライトユーザーは3DSを買い、据え置き型ゲーム機はヘビーユーザー向けに美麗なグラフィックが実現できるプレイステーションなどに人気が集まっているようにみえる。

 

もちろん任天堂もこの動きを手をこまねいてみているわけではない。しかし、任天堂は自社のハードにこだわる考え方のようだ。

任天堂ゲームは任天堂ハードで ― 米任天堂レジー社長が任天堂ゲームとiPhone/タブレットの付き合い方を語る(Inside of the Game)

任天堂はファーストタイトルをモバイルデバイス向けにリリースしないのかという疑問に関して、米任天堂社長Reginald”Reggie”Fils-Aime氏が米国ケーブルテレビNBCの番組KING 5 Newsのインタビューを受けました。

質問を受けたReggie氏は「常に持ち上がっている話題だ。絶えず議論を繰り返してきた」とコメント。「我々は多数のスマートフォンとタブレットが存在していることを認めており、どうすれば我々のコンテンツのマーケティングツールとしてこれらデバイスを上手く扱えるかを考えている」と述べ、モバイルデバイスは販促の手段として利用していく考えを示しました。

任天堂の陥っている状況はまさに「イノベーションのジレンマ」だ。かつてプレイステーションから、NintedoDSによってユーザを取り返した主たる要因は、「ゲームのスペックを下げた」ことであった。ゲームのハードルを下げ、より簡単にすることによってユーザを広げることに成功したのである。さらに、Wiiがヒットした理由も、「据え置き型ゲームのスペックを下げた」ことにある。

しかし、今のWii Uは、現状の据え置き型ゲーム機に「機能を付け加えただけ」となっている。より低スペック、低価格ゲームを望む層はこのゲーム機を買ったりしない。彼らはスマートフォンで無料でちょっとゲームが出来ればそれでいいのだ。

 

スマートフォンの出現は、ライトユーザを任天堂から大量に奪った。しかし、任天堂は「無料ゲームを配布し、あとから課金する」というモデルを採用することへの拒否反応がある。

GREEやモバゲーが開拓したソーシャルゲームの世界は、最初はタダで遊べて、はまったユーザーが後からアイテム課金をして楽しむ「フリーツープレー」が基本。フリーツープレーか否かという定義でいえば、任天堂と、GREEやモバゲーの世界には明らかな違いがある。そうした世界の新たなビジネスモデルについて、岩田社長は、どう捉えているのだろうか。

任天堂・岩田社長が語る“本当の”ソーシャルゲーム (日本経済新聞)

 「デジタルでのディストリビューションが可能になり、少額決済も可能になったことで、娯楽の提供とお金のいただきかたのバリエーションが増やせるようになった。それは世の中の変化であり、ゲームの質で勝負するのも、お金のいただきかたで工夫をするのも、私は同じようにクリエイティブなことだと思います。だから、後からの課金や、フリーツープレーについて、私はまったく否定するつもりはありません」

 「じゃあ、それを任天堂がやるかどうかについてですが、まず、任天堂がすでに知名度や面白さの信用を確立した商品について、そういうことをするつもりは、あまりない。例えば『マリオ』のソフトに4800円なり5800円を出す価値を認めていただいてる方に対して、課金してカギを開けないと楽しめない、というようなことはしないということです」

任天堂はよりライトな層を取り込むのか、よりヘビーなゲームを望む層へ移行するのか、選択を迫られているが、「商売へのこだわり」を乗り越えるための答えはまだ出ていない。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)