今から、「敗戦処理がきちんとできる人」というのは物凄く貴重なんだけど、企業の中では凄い評価されにくいですよね、ちゃんと評価しないとまずいですよね、という話をします。
ご存知の方も多いと思いますが、株の世界には「コツコツドカン」という俗語があります。
コツコツ積み上げた勝ち分を1回の負けでどかーんと吹っ飛ばしてしまう、という意味の言葉でして、特に投資の初心者にありがちな話として、一般的な用語になっていると思います。
株の世界に限らず、「敗北時のダメージコントロール」という概念は本来ものすごーーーく重要です。
100回チャレンジして100回成功出来るようなチート性能のラノベ異世界転生人類ならともかくとして、大抵の一般人はそういう訳にはいきません。
かの完璧超人ローエングラム公ラインハルトですら、「100戦して100勝という訳にもいくまい」というお言葉を残しておられます。
「敗北」とか「失敗」というものは、生きている限りは必ず訪れるものなのです。
ところが、その「敗北」「失敗」時に処理を間違えてしまうと、勝利した分が一度に吹っ飛ぶ、うっかりするとその後々までマイナスが響くような大ダメージを負ってしまうことがあります。割と頻繁にあります。
大体において、「失敗」とか「敗北」というものは認識しにくいし、受け入れにくいものなんですよね。
だから、それにきちんと向き合うことが出来ず、血をどばーーっと垂れ流したまま他の勝負に挑んで、どんどんダメージを大きくしてしまうようなことが、個人でも企業でも同じようにあるんです。
これ、株でも、ビジネスでも、webでも、それ以外の場面でも、結構一般的に同じようなことが言えると思います。
例えば、Webでの論者として信頼を得ていた人が、たまたまの炎上時の処理を誤って、一気に評価を失墜させてしまうとか。
例えば、イケイケの会社だったのに、たった1回買収判断を誤ったばかりにどかーんと損失を被り、社会の信用さえ失ってしまったり、であるとか。
恐らく皆さま、それぞれに該当ケースを想定して頂けると思います。敗戦処理って、言葉からしてイメージ良くないですけど、本当重要な仕事なんですよね。
ちょっと具体的な話をします。
以前寄稿させて頂いた記事で、こんなことを書きました。
データにきちんと向き合わず、「分かりやすい悪役探し」をしても、誰も幸せになりません。
今から考えると「なんでそんなアホらしいことになるんだ」と思いますが、それは今だからこそ言えることで、当時下っ端だった私も、「UIやデザインが古臭いから売れなくなった」とだけ言われれば「ほー、そうなんや」としか思いませんでした。
後から考えれば明白に思える結論でも、実際その場にいると案外分かりにくかったりするんです。
経営陣からすると、分かりやすい結論が出てくることが大事。「取り敢えず何か対策をとった」「ともかく改善に向けて動いている」という事実に安心することが大事。
これ、「本来もう役割もニーズも失っていた商品について、ちゃんと現実を観なかった為にずるずる無駄な投資をすることになってしまった」という話なんですが。
実はこの時、失敗の割と重要な要因としてもう一つ、「適切な敗戦処理が出来る人が既に会社にいなかった」という問題があったと思っています。
これもまあ、当時私がそう認識出来ていたわけではなく、「後から考えればそうだなー」という後知恵なんですが。
企業における敗戦処理って、勿論ケースによって色々あるんですが、
例えば
・「このラインを割ったらこのプロジェクトは失敗とみなす」とか、「この数値が出なかったら撤退プロジェクトにする」といった、適切で具体的な「敗戦判断ライン」をきちんと引ける人
・さらに、上記のような具体的な指標に基づいて、「このプロジェクトは失敗です」ということをきちんと判断して、周囲に説明して、納得させることが出来る人
・プロジェクトを失敗と判断した時、その適切な畳み方、撤退の仕方をきちんとマイルストーンつきで段取り出来る人
こういうのが、一般的な「敗戦処理」に必要なスキルの代表的なところだと思います。勿論、細かいところまで考えればもっといろいろあると思うんですけどね。
これ、特に二つ目とか三つ目とかについては、割と明確に「出来る人」「出来ない人」がいると思うんですよ。
プロジェクトを成功させることが出来るマネージャー、言ってみれば「勝てる」マネージャーであっても、いざ敗勢ということになると、「きちんと負けられない」「きちんとダメージコントロール出来ない」という人は全然珍しくない。
適切な負け方って結構難しいし、慣れとスキルがいることなんです。むしろ、勝ち慣れている優秀なマネージャー程、うっかりすると「まだ取り返せる」と考えて、本来失敗ラインを割っているのに粘ってしまって、ダメージを大きくしてしまったりする。
「成功ラインはちゃんとあるのに何故か失敗ラインが設定されていないプロジェクト」とか、掃いて捨てる程あります。
勿論、「勝ち方も負け方も上手い」という優秀なマネージャーもいらっしゃるんですが。そういう優秀な人は、全体の中ではかなりの少数派だと思います。
まずいことに、この「上手いこと負けられる」スキルって、企業の中では物凄く評価されにくいんです。
ここをちゃんと評価出来てる企業、ホント少ないと思います。
敢えて単純な数値で話しますと。その人がいなかったら50の損失が出ていたところを10の損失で済ませたのなら、その人は本来40評価されないといけない筈なのに、うっかりすると-10の評価になってしまったりする。
それ、失敗自体がそのマネージャーの責任ではなく、途中から敗戦処理で入って適切にプロジェクトを収束した人であっても、何故か適切に評価されなかったりするんです。
理不尽なことに、「経営層の判断で失敗したプロジェクトについて、ちゃんと敗戦処理をしたのに、何故かその人が責任を詰められる」なんてケースもありました。
上記リンクで書いた会社には、実は本来「敗戦処理が上手い人」はちゃんといました。
言いにくいことを敢えて指摘して、ドブさらいを引き受けて、企業が受けるダメージを最小化させることが出来る人。
実際に、その人がそうやってプロジェクトを収束させたのを私は何度か見ましたし、その人の下で働いたことも、ほんの短い期間ですがありました。
ただその人、上で書いた話があった時には、とっくに辞めてしまっていたんですね。
それも、失敗プロジェクトの処理について上層部と喧嘩して、理不尽に責任を追及されて辞めてしまったと。これも後から知ったことなんですが。
上記リンクで書いた案件の時、あの人が会社にいて、しかもちゃんと発言することが出来る立ち位置であれば。もしかすると会社も適切にダメージコントロールが出来て、あんな無駄金を使うこともなかったのかも知れないなー、と。まあタラレバの話なんですが、私はそんな風に空想するのです。
「勝ち方」と同じかそれ以上に「負け方」は大事ですよね、と。「負け方の上手さ」は一見分かりにくいけれど、適切に評価しないとまずいですよね、と。
私が言いたいことをまとめると、そんな風になります。
皆様におかれましては、「敗北」「失敗」の判断は誤らず、大きなダメージを受けずにご活躍されることを、心よりお祈り申し上げます。
今日書きたいことはそれくらいです。
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【登壇者】
奥田 真輔 氏
システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、
メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。
【お申込み・詳細】
こちらのウェビナー申込ページをご覧ください。
【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Wake Up Freeman)














