缶切り使うスキル別にいらねーかもな、と思ったんですよ。

 

いや、別に全然大した話ではないんです。ちょっとした話です。

 町内会のお知り合いとお話をしていると、38歳の私が最年少という状況は別に全然珍しいものではなく、むしろすごく当たり前の風景です。38歳、62歳、68歳、74歳で平均年齢60.5歳カルテット、とかごく普通にあるわけです。偏差いくつだよっていう。

 

ただ私、お年寄りの話を聞くのはあんまり苦ではないというか、小学校の頃朝礼で校長先生の話聞くのとか割と好きだったっていうと変態扱いされたりすることもあるんですが、まあ2,30分くらいなら割と平気で世間話に付き合っちゃうわけです。

なので、お年寄りとの話題の引き出しは多い方だと自負しています。見てない大河ドラマの話についていくスキルもだいぶ高くなりました。

 

ただ、全体としては苦にならないといっても、やはり若干居心地が悪い瞬間というものはありまして。

 

やはりお年寄りはお年寄りなので、割と定番の話題の一つに「最近の若い者トーク」ってものがあるんですよ。

これが定番になっちゃう時点でちょっと色々アレなんですけど、私もお年寄りにとっては割と「若い者」寄りの部類な訳で、結構遠慮して話される感じがあるんで私がいない時とかもっと定番なんだろうなーと思うんです。遠慮されつつということもあって、正直「最近の若い者トーク」が盛り上がる場面では居心地は悪いです。

 

「最近の若い者トーク」を実際に目の前で聴いていて、やっぱりなんで居心地が悪いかというと、なんだかんだでそれが「嘆き4割、優越感6割」って感じの会話だからなんですよね。

表面上、若い者の行状について嘆くという形式をとりながら、メインはどちらかというと上から目線を楽しむ方なんですよ。

 

で、これもまあ多分定番の話だと思うんですが、最近の子はアレが出来ないソレが出来ない、みたいな話もあるんです。

やれ最近の子はマッチで火がつけられない、とか。靴紐が結べないらしい、とか。

 

先日話題になったのが、缶切りでした。缶詰を開ける缶切り。皆さん最近缶切り使いました?私はもう3年くらい使ってません。

で、その時の会話では、なんか「缶切りが使えない」というのが結構、あり得ないことというか、大事件というか、重大な生存スキルの欠損みたいな感じで語られてまして。

「うちの嫁に聞いてみたら、孫がなんと缶切り使えなかった」

 みたいな話から始まって、自分たちの頃は6,7歳の頃から使えたとか、緊急時にどうするんだとかしんざきさんのところは大丈夫かとか教えておいた方がいいとか。

 

いや、まあねえ、と思ったんですよ。

 

しんざき家の子どもは、多分缶切りが使えません。少なくとも、実際に実地で缶切りを使って缶を開けたことは一度もないと思います。というか、缶切り自体どこにしまったか忘れました。

 

確かに、缶切り使えるのってスキルの一つではありますよ。

最近は、日常生活で見る缶ってのは殆どがイージーオープン式になっていて、そもそも缶切りを使う必要がある缶自体滅多に見かけないとはいえ、缶切り使わないと開けられない缶が存在しなくなった訳ではありません。

保存食やら海外缶詰やら自衛隊の戦闘糧食やら、使う機会ってのはもしかするとあるかも知れないですし、ひょっとしたら「缶切り使えなくて困る」という場面も出てくるかも知れません。

 

ただまあ、缶切り使用スキルが必須スキルかというと、「正直普段はなくても全然困らない」程度の重要度だとは思うんですよ。

うっかりするとこの先の人生一度も使わないかもしれない、という程度の。

 

こういうのって、多分他にも色々あると思います。「今の子って〇〇も出来ないらしいぜ」って話題になる程度の、けどよく考えるとそのスキルこの先いるかな?っていう程度の重要さのスキル。

黒電話のかけ方が分からなくても最早一生困ることはないでしょうし、洗濯板が何なのか知らなくても通常生活に支障はないでしょう。

もしかすると、マッチのつけ方が分からなくても何も困らない時代になりつつあるかも知れませんし、いずれは靴紐の結び方さえレガシーになるかも知れません。

 

勿論出来れば出来るに越したことはないけれど、正直必要かなー?っていうスキル。

あるいは、「必要かなー?」と悩む時代になりつつある、なくても困らない時代が見えつつあるスキル。

そういうスキルが「使えない」ことを嗤うのって、正直あまり賢明ではないと思うんですよ。

 

何故かというと、レガシーなスキルが増えるのと同じくらいのペースで、新しい「日常に必須のスキル」は増えつつあるから。

日常必須のスキルというのは、新陳代謝するものであり、世代交代するものだから。

 

うちの子どもは、タブレットの基本的な操作は既に殆ど身に着けていますし、タブレットでレゴの設計書書いちゃう程度には使いこなしています。

Googleの使い方が分かりますし、「Googleで検索したものをそのまんま信じるのはちょっと危ない時もある」という知識も既にもっています。

電子マネーを平然と使いこなしますし、友達とフレンドコード交換してswitchで通信対戦出来ちゃったりもするわけです。

 

つまり、出来ることが減ってるかというと、多分そういうことではないんですよね。出来ないことも増えているけど、その分昔は想像もしなかったようなことが新たに出来るようになっている。

 

勿論、そういうことをお年寄りは出来るのか、という話ではないんです。出来ない人は出来ないでしょうし、出来る人は出来るでしょう。

 

ただ、「日常で身に着くスキル」「当然のように身に着けておいた方がいいスキル」というものは時代によって移り変わりますし、自分たちにとっての必須スキルが下の世代にとってもそうだとは限らないし、下の世代が必須スキルを身に着けていなかったとしても、それに代わる必須スキルをどんどん学んでいっているから別に心配するこたないんじゃないかな、と考えるのです。

 

私自身、多分いつかは、「スキル世代交代」の波を感じる時が来るのでしょう。

私にとっての「当然必須のスキル」が全然必要のないもの、日常で一切触らないスキルになる日はいずれ来るのだと思います。

 

例えばキータッチのスキルがそうかも知れない。車の運転のスキルが、電子機器の配線のスキルがそうかも知れない。

何が「世代交代候補スキル」かなんてわかったもんじゃないわけです。他人事じゃないです。

 

一つ自戒としては、上の世代にせよ下の世代にせよ、「自分にとっての必須スキル」を使えないからといって、それが時代の変化に伴う変化であるかどうかを考えもせずに、無自覚に嘲笑ったりバカにしたり、といったことは避けたいものだなあ、と、そんな風に思ったのです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
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(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Steve