先日、こんなまとめを読みました。

ゆうきまさみ先生「駆け出しの漫画家さんを応援したいなら激励だけ、叱咤はいりません」どのクリエイターにも当てはまりそう

これから駆け出しの漫画家さんを応援しようと思っている方にお願い。応援したいと思うなら激励だけしてあげてください。叱咤はいりません。

(Togetter)

ゆうきまさみ先生の漫画はとても面白いですよね。最近ちょくちょく、究極超人あ〜るの読み切りがスピリッツに載っていまして嬉しいわけですが、速く単行本が出るくらいの量にならないかなーと心待ちにしております。

あと「でぃす×こみ」面白かったです。

 

それはそうと。

昔、某出版社で色々とお世話になっていた時期がありました。ちょこちょこ出入りしては、色々穴埋めの記事を書いたり、行ったことがない土地の旅行記をでっちあげたりしていました。すいません。

で、私自身は単なる有象無象ライターの一人だったので殆ど影響がなかったのですが、色んな編集さんとお話する内に、「ファンの声と創作者の間の距離感」というものについては随分と考えさせられました。

 

まず前提として、「ファンの声が、これだけ直接的に創作者に届く時代は、今まで存在しなかった」ということは間違いなく言えると思います。

twitter、facebook、5ch、批評サイト。

現在では、「創作物に関する感想」を好きに表明出来るルートが山のようにに存在します。1クリックで「自分の創作物に対するファンの感想」が見られる時代、ファンレターが完全に可視化された時代と言っていいでしょう。

今の時代、たとえ独り言のつもりだったとしても、「感想」は作者に届きます。そりゃもう凄い勢いで届きます。

 

で、当然のことながら、以前であれば「ファンレターの取捨選択」という形でコントロールできた、ファンと作家の間の距離感というものは、今の時代完全にコントロール不能になりました。

「この人は悪評に弱いから、罵倒や悪評はこっちで止めとこう」みたいな、編集さん側の管理はもはやできなくなった訳です。

 

これについては、7年くらい前に一度書きました。以下の記事です。

ソーシャルメディア時代の、創作者さんとファンの距離感。

・最近は作家さんもtwitterや他のソーシャルブログをやっていることが多く、以前と比べて「ファンとの直接のやり取り」の機会が飛躍的に増えた。

・その為、以前ならまだぎりぎり可能だった「ファンレターを見せる際の、ファンからの声のコントロール」のようなことは、ほぼ完全に不可能になったといえる。

・作家さんの中には「悪評を見るとへこんで悪影響が出るのに何故か自分から悪評を求める」というような困った習性がある人がいて、そういう人がファンと直接やり取りをするのはやはり編集としては結構心臓に悪い。

(不倒城)

こういう前提の上で、「もし応援したいのなら励ましの言葉だけを送ってあげてね」とゆうき先生はおっしゃっている訳ですね。

 

勿論、ファンの声というのは創作者にとってエネルギーの源泉です。そして、悪評というものも、時には創作の糧になり得ます。それは間違いないんです。

ただ、ゆうき先生の発言に対して、冒頭まとめで時折みられる

「世に作品を出すなら叱咤激励を受けるのは仕方ない。」とか、

「(褒め言葉ばかりでは)いい漫画家が育たない。」

といった反応には、正直なところ「うーーん」と思うところがありまして。

というのは、世の中には、思った以上に「激励のつもりで罵倒しか出来ていない人」が多いんじゃないか、と私は感じているんですよ。

 

出版会社でお世話になっていた時、私に対してではないですが、「ファンからの声」に触れる機会も結構ありました。

で、それを見ていると、やっぱひどい内容のものは結構ひどいんですよ。批評というか、単なる理不尽なダメ出し、思い込みに基づく罵倒としか思えないものもたくさん見ました。

そういうテキストは、別に出版社にいかなくても、今ではちょっと検索するだけで見ることができますよね。

 

ただその時、「こういうのって嫌がらせみたいなものなんですかねー?」と言ってみたら、「いや、これで応援のつもりの人も結構いるんだよね…」という言葉が編集さんから返ってきて、それは結構私の頭の中に残っているんです。

つまり、それこそ「悪評が漫画家を育てる」的な信念の元、いわば愛の鞭のようなつもりで罵倒を投げてきている人もいるんだ、と。

 

そして、そういう人たちは、自分の罵倒が「創作の参考になる批評」だと考えているんだ、と。

はー、と思いまして。

例えばブラック企業では、パワハラ上司の言葉がしばしばやり玉にあがります。徹底的に新人を追い詰めて、辞めさせたり鬱にしてしまったり。ああいう話、結構みますよね。

 

ただ、ああいうパワハラ上司的な人達も、多くの場合「自分が単に罵倒をしていて、相手を精神的に追い詰めている」とは思っていないんですよね。少なくとも本人の主観的には、あれ、「叱咤激励」のつもりなんです。

自分の言葉を糧にして、相手が強く成長することを願っていたりする。で、言われた方が耐えかねて辞めちゃったら、「なんであれくらい耐えられないんだ」と首をひねったりするわけです。

 

正直、webでしばしばみられる創作物に対する悪評には、結構こういう要素が含まれているんじゃないかと思うんですよ。「俺の批評が漫画家を育てている筈」と思っている人、相当数いる気がするんです。

 

そして、「本当に糧になる批評」と「単なる罵倒」を取捨選択するのは、創作者にとってかなりのエネルギーを必要とします。勿論性格的にそういうの苦にならない人もいますし、時を経て得意になった人もいるでしょうけどね。

叩いて叩いて、例えばその対象が創作をやめてしまったら、「創作をする以上、批評されるのは当然。耐えられないなら素質がなかったということ」みたいに嘯く案件、今まで凄い数見てきました。

 

ただそれ、本当に当然なのかなあ、と。

叩きまくって創作者さんのこれからの可能性を潰してしまうのは、ちょっとばかり勿体ないんじゃないかなあ、と。

その言い方は、ブラック企業におけるパワハラ上司と変わらないんじゃないかなあ、と。

 

そもそも、例えば漫画であれば、作家もプロだし編集さんもプロなわけで、その作品のダメ出し、悪いところの分析なんて当然やっているんですよ。

それを改めて素人から投げつけることで、どれくらい「漫画家を育てる」ことが出来るのか、私には正直かなり疑問です。

 

断っておきたいんですが、私は別に「批判をするべきではない」「罵倒もしてはならない」などと言っている訳ではないんです。

面白くないと感じたコンテンツに対して「面白くない」と発言するのは、その人の当然の権利です。気に入らないコンテンツに対して罵倒を投げるのだって自由でしょう。面白い批判はそれ単体でコンテンツになり得ますし、そういう悪評を受け取って糧にしてしまう創作者さんだって確かにいます。悪評自体が悪い、というわけではない。

 

ただ、もし「応援したい」と思っているのならば、特にその対象がまだ走り出したばかりの人であれば、「愛の鞭」的なことを指向するよりは単純に励ましてあげた方がいい場合が多いんじゃないか、とは強く思います。

その点で私は、冒頭のゆうき先生のご発言を全面的に支持します。

 

応援したかったら素直に褒めようよ、と。そういう話ですよね。

私自身は、どうせ作者さんに拾ってもらえるのであれば、褒め言葉を拾ってもらいたいなあ、と思っています。

私が好きな作品を、私が好きな作家さんに、より一層張り切って作って欲しいから。それは、ゲームでも、漫画でも、小説でも、音楽でも同じことです。

 

web時代におけるファンと作家の距離が、幸せなものでありますように。

そんな風に考えているわけです。

 

今日書きたいことはそれくらいです。

 

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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。

岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
WiseVineではCTOとして開発組織を30名規模に拡大し、プロダクト開発を推進。
2025年4月よりワークワンダース株式会社CTOに就任。AI活用を中心とした開発支援をリードする。


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(2026/01/19更新)

 

【プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

 

(Photo:Shawn Harquail