「そんな馬鹿な事やってないで、勉強しなさい」

幼少期にこう言われた事がない人はいないだろう。

あるいは今でも

「それ、何の意味あんの?一円にもならないじゃん」

と、自分のやっている事に色々とケチをつけられる人もいるだろう。

 

これを書いている筆者は、それこそ上のような事を山のように言われた。

言われてた当初は確かに

「漫画なんて読んでないで勉強してれば、偏差値がどれだけ上がったことだろう」とか

「ブログなんて書いてないで教科書の一冊でも読めば、仕事の力がもっと高まっただろうに」とか考えたものである。

 

しかし最近になって、この他人が無駄という事が驚くぐらいに自分の人生のクオリティを高めている事に気がついた。

というかむしろ自分の周りにいる人で幸せそうな人間は、ほとんどが全員、この無駄のプロフェッショナルではないかと思うようにすらなってきた。

というわけで今回は、この無駄な行為がどうして人生の幸福度を高めてくれるのかについて書いていこうかと思う。

 

人は文化で結びつく

文化資本という単語をご存知だろうか。

これはフランスの社会学者ピエール・ブルデューが提唱した概念で、親から子へと受け継がれる知識や言語能力、身の振る舞い方や思考様式のことをさす。

具体的にいえば、貴族の社会で生まれた子供は貴族っぽい立ち振る舞いや言葉遣いをし、平民の社会で生まれた子供は平民らしい立ち振る舞いや言葉遣いをするようになる事を考えてもらえばわかりやすいだろう。

 

このように社会的階層ごとにある種の文化が形成される傾向がある。

文化資本は金銭のみならず文化すらも格差の固定に強固にワークしてしまうという点を指摘した事が実に画期的だった。

 

かつて「低学歴と高学歴の世界の溝」という記事が書かれた事があったけど、あの記事は文化資本の問題点を実にうまく描出している。

とはいえ上流家庭に生まれた人が全員人生がうまくいくだなんて話でもなく、この問題の難しさは一言ではいいあわらせないのだけど(興味がある方は”社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた”を読むとよいだろう)

社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた

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文化資本について書き始めると、それだけで話がえらい膨らんでしまうのでここらへんでやめておくけど、まあ大雑把に”人は自分と似た立ち振舞をする人と一緒につるむ傾向が高い”という事だけ認識してもらえれば今回はそれでよい。

 

さてこの文化だけど、何も形式張った貴族とか平民みたいな社会的階級にだけ存在するような高尚なものでは断じてない。

僕は中学生ぐらいの頃から随分と漫画に熱中していたのだけど、今でも好きな漫画が似通った人とは即意気投合できる。

あるいは僕はインターネットのフリーゲームがこれまた中学生ぐらいの頃から物凄く好きだったのだけど、これについて詳しい人とも即意気投合できる。

 

先程例にあげた貴族や平民にある文化資本は、どちらかというとそこの社会でいきるにおいて”常識”となるようなモノをさす事が多いけど、僕の漫画やフリーゲームのような文化は、どちらかというと脳がどういうものに面白みを見出すかという”趣味趣向”的なモノをさしている。

 

かつてはそういうマニアックな趣味を面白がる人達は雑誌の文通コーナーなんかで交流をかさねていたりしたようだけど、現代のインターネットをベースとする社会では、どんなマニアックな趣味をもっていようが人と人を結びつける事は非常に容易な事となった。

 

5chの話題が指定された界隈でそれらの話をする人もいれば、ブログでそれらに対する愛をぶちまける人もいる。

少し前ならば、mixiなんかはまさにそういう文化交流がよくおこっていた。今だとたぶん、フェイスブックやツイッターが主戦場なのだろう。

 

これら趣味の空間において、人は社会的な身分や地位、金銭的収入といったものの垣根を越えて真の意味で心と心を交わす事ができる。

もちろん仲良くなった後で、所属する社会についての情報を交換する事もあるだろうけど、それはメインではないだろう。

このように人は、文化を通じて気の合う人間を探す事ができるのだ。

 

無駄にこそ真理が詰まっている

ここまで書いて気がついた人もいるかもしれないけど、この文化、実に面白いことに冒頭で書いた

「そんな馬鹿な事やってないで、勉強しなさい」

「それ、何の意味あんの?一円にもならないじゃん」

という事をやることでしか身につかないのである。

 

いくら受験勉強に熱をいれて良い大学に入ろうが、頑張って福祉活動に取り組んでピカピカの履歴書を作成し一流企業に入ろうが、普通の人はその活動自体からは文化的な何かを得る事は難しい。

もちろんそれらを頑張ることで得られる良いことも沢山あるし、基本転機にはそれらも頑張るべきものの1つである事は間違いない。

 

しかし今になって身の回りで楽しそうにやってる連中をみわたすと、小さい頃から自分が楽しいと思える活動に、心の底から全力で取り組んでた奴が1番幸せそうな顔をしているな、と思うのである。

人生に無駄なことなんて本当に何一つない。自分が楽しいと心の底から思えるような活動に全力で取り組み続けた奴だけが、あとで本当の文化の良い面を享受できるのである。

よく学び、そしてもっともっとよく遊ぶ事こそが、あなたの人生を本当の意味で豊かにしてくれるのである。

 

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【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/6/2更新)

 

【プロフィール】

名称未設定1

高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます→ https://note.mu/takasuka_toki

 

(Photo:Ichut)