1、2ヶ月前、私は珍しく風邪をひいた。病院に行くのは久しぶりだった。
たまたまネットで検索して見つけたその病院で、ふと「休むこと」について考えさせられたので、今回はそのことについて書いていく。
受付で「どうされましたか?」と聞かれた。
私は体調が悪いのでインフルエンザかどうか診てほしい、と伝えた。
ちょうどインフルエンザが流行っていた時期でもあり、一番の関心はインフルエンザか否かだった。
インフルエンザでなければ薬を飲んで出勤することも可能だが、インフルエンザだったら絶対に休まなければならない。出勤が可能なのかどうか、とにかくそれが知りたかった。
いつから具合が悪いのか、食欲はあるかなど、症状についていくつか質問したあと、お医者さんはこう言った。
「インフルエンザではなく、ただの風邪だと思いますよ」
「そうですか」と私は答えた。
だがどうにも落ち着かない。なぜなら、お医者さんが非常に申し訳なさそうにインフルエンザではないことを伝えたからだ。
一般的に考えて、風邪かインフルエンザかだったら風邪のほうが症状は軽く、嬉しいのではないだろうか。私だって当然、風邪かインフルエンザかの二択だったら風邪を選ぶ。
それなのに、あたかも私がインフルエンザであることを望んでいるかのような言い方だった。
なぜインフルエンザでないことを私が残念に感じると思ったのか。推測でしかないけれど、おそらく私が会社を休みたがっていると思ったのだろう。
インフルエンザではなく風邪でも休むべき、という意見もあることは承知の上だが、私はこの時どうしてもやりたいことがあったので、インフルエンザでないのなら仕事をしたかった。
私は会社に行けるのなら行きたいのだ。お医者さんは申し訳なさそうな顔をしているけれど、インフルエンザではなく風邪だと言われて私は嬉しいのだ。
インフルエンザでなくてよかったことを伝えようと、さりげなく、会社に行けるようで安心したことをアピールした。
アピールしながら、ああ、これって「休むには理由が必要」であることを示している一例だな、と思った。
インフルエンザと診断されない限りは休めないような会社もあるのだろうな、と。
お医者さんの申し訳なさそうな顔は、そういう患者さんがいることを知っているからこそ滲み出てしまったものなのだろうと推測する。
誤解されたくないので付け加えると、私の会社は休暇を取りやすい環境にある。少なくとも私はそう思っている。
「体調がすぐれないから」
「旅行で」
「なんとなく」
とどんな理由でも休めるので、インフルエンザでないと休めない環境、というわけではない。
でも、そうじゃない会社もきっとたくさんある。そんな会社で“役に立つ”のがインフルエンザ。
休みを取ることへの罪悪感を拭ってくれ、休みを取る言い訳を与えてくれる、そんなお役立ちアイテムだ。
私にもこのアイテムが欲しくてたまらない時期があった。
人間関係に悩んでいた思春期は、この悩みから解放されるのなら、怪我でも病気でも、なんでもいい、とにかく「やむを得ない理由」で休みたい。心の底からそう思っていた。
でも、今はそうは思っていない。実際、周りの人を見ても、無理に休みたいと思っている人はあまりいないように思う。
休日は制度としても個人的な感覚としても必要なものだと思っているけれど、仕事をしたいという気持ちとちゃんと両立している。
休みたいというのは、「仕事をしたくない」と同義ではなく、「プライベートの時間もほしい」ということであり、必ずしも仕事を嫌がっているわけではない。むしろ仕事はしたい。そういう人のほうが感覚としては多いように感じる。
中には会社の悪口を延々と言う人もいる。でも、実際はなんだかんだ言いつつ、仕事が好きなんだな、と思う人が多い。
だからお医者さんが私に向けた申し訳なさそうな顔に対しては、インフルエンザを休むための道具として使いたい人なんて、そんなにいないのではないか、というのが正直な感想だ。
そもそもインフルエンザのほうがマシだと思うような仕事は続けるべきか見直す必要もあると思う。インフルエンザよりもつらい仕事を毎日するなんて、つらすぎる。
と長々と書いたけれど、もちろん、私の思い違いである可能性は否定できない。お医者さんの言い方ひとつで、しかもあくまで自分の想像でしかないことで、こんなに話を膨らませるのもどうかと思うので、このあたりでやめておこう。
ではまた!
(2024/4/21更新)
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名前: きゅうり(矢野 友理)
2015年に東京大学を卒業後、不動産系ベンチャー企業に勤める。バイセクシュアルで性別問わず人を好きになる。
【著書】
「[STUDY HACKER]数学嫌いの東大生が実践していた「読むだけ数学勉強法」」(マイナビ、2015)
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(Photo:ILO in Asia and the Pacific)