ちょっと前の話になるんですが、はてな匿名ダイアリー、通称「増田」でこんな記事を読みました。
知識がなくて質問できない部分も確かにあるけれど、少し考えれば分かる違和感に気付かないままの時もある。
そして質問しても、後が続かない質問しか出てこない。もしくは、本質的ではない的外れなものしか出てこない。
論議に対してクリティカルに効くような質問が出来ないし、それを引き摺り出すことも能わない。
ベストディスカッション賞を取る質問なんか一生出てこない。
「質問が思いつかない」「いい質問が出来るようになりたい」という増田の話ですね。
当たり前の話なんですけれど、「質問」というのは確かに非常に重要でなんす。
基本、話す側には、「聞き手が何を知らないか」が分かりません。
ゼミだろうが発表会だろうが関係なく、話し手と聞き手の間には、間違いなく知識の溝が出来るものでして、話す内容だけでそれを埋めることは非常に困難です。
話し手も人間なので、必要なこと全て話せているとは限りませんし、大抵の場合何かしら重要なことを見落としているものです。
それを埋める為には、聞き手に「何を知らないか」「何が分からなかったか」を表明してもらう必要があります。
そこを契機に情報が深まっていくものですし、場合によっては話し手も知らなかった新しい知見が産まれるかも知れません。
ただ、これは大学時代、ゼミの教授が口酸っぱく言っていたことの受け売りなんですが、
「質問が出ないのは話し手の責任が8割」
です。話し手というか、その場を作る人の責任が8割。
これを、増田含め、結構たくさんの人が誤解しているような気がするんですね。
そもそも、人間の頭って、何もフックなしだと「疑問」を持てるように出来ていないんです。
全くのゼロベースで「こうなんだー!」と言われると、「あ、そうなんだ」と受け取ってしまうようになっている。
それに対して「そうなのか?」と疑問を持つ為には、ある種の慣れとフックが必要です。
「疑問を持つことが出来る」って、実は結構習得が難しいスキルなんです。
誰でも持ってるスキルじゃないんです。
つまり、ただ「説明」をしただけでは、質問って出なくて当たり前なんです。
「何か質問ありますかー?」で「しーーーん」ってなる状態が、デフォルト。それが普通。
そこでいい質問をしてくれる人がいた場合、それは単に運が良かっただけ、たまたま聞き手の中に訓練を積んだ鋭い人がいただけです。
あるいはその人が、「この分野は専門外なんですが」と言いながらクリティカルな指摘を突っ込んでくるスーパーサイヤ人みたいな人であった可能性もあります。
あなたの発表の場が学会のようなアカデミックな場でない場合、スーパーサイヤ人の存在を期待してはいけません。
学会だったらほっといてもスーパーサイヤ人が登場するんで特に難しいことを考える必要はありません。諦めてください。
つまり、増田が「どうすればいい質問が出来るのか」と悩むこと自体は別に悪いことじゃないんですが、より重要なのは、話し手が「どうすれば質問がたくさん出る説明が出来るのか」「どうすれば質問がたくさん出る場になるのか」と悩むことじゃないかなあ、と思うんです。
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これも昔ゼミの教授が言っていたことのそのまんま受け売りであって、別に私が考えたことじゃないんですが、「いい質問をして欲しければ、クソ質問も平気で出来る場にしろ」というのが、まず一つ、重要な基本です。
つまり、そもそも質問をしにくい場、質問をしにくい空気であれば、質問自体が出なくて当然。
どんなしょーもない質問でも誰にも責められず気軽に出来る場にすることがまず第一歩、ということなんですね。
私、SI会社に勤めていた頃、先輩と一緒に隔週で勉強会を開催していたことがありまして。勉強会っていってもそんな大げさなものではなく、参加者が持ち回りで自分の得意分野についての適当なトピックを喋る会だったんですが、同じく大学のゼミの頃の空気を思い出して、途中からこういうルールを作ったんです。
・同じことを何度でも聞きましょう
・もうこれ話されたかな…?と思ったことでも聞きましょう
・どんなしょうもない内容でも聞きましょう
・「さっきも言いましたが」は禁句です
・人の説明に横から突っ込みましょう
・人の質問に横から突っ込みましょう
まず、質問をする時の心理的ハードルって幾つか種類があるんですが、その中の結構大きなものに「これ俺が聞き逃してただけかな…?」「こんなしょうもないこと聞いていいかな…?」ってのがあるんです。
人間意識が飛ぶことはどうしても避けられないので、もしかすると自分が聞いてなかった間に話された内容かも知れない、「聞いてなかったんか」って思われちゃうかも知れない、ってどうしても考えちゃうんですよ。
だから、「別に聞き逃してた質問でもいいしどうでもいいような質問でもいいから聞け」ってことをルールとして明文化して、一方話し手もそれに対して嫌な顔をしてはいけない、というのも同じくルールとして明文化してみたんです。
実際のところ、たとえ「単に聞き逃していただけ」であっても、質問者によって口に出されるだけで、結構それがトリガーになって新しい思考が始まることってあるんですね。
なんとなく漫然と聞いていたことが再注目されることによって、それ自体が次の質問のフックになったりするんです。
それに対して、更に「横から突っ込んでいい」というルールを設けたことによって、しょうもない質問を基点とした議論が始まることがある。そこから色々な違った質問に派生することもある。
ルール設定した当初は「んーー?」って顔をする人も多かったんですが、決めてしまいさえすれば人は順応するもので、「どんなクソ質問でも歓迎される場」という認識は徐々に浸透していきました。
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もう一つ、その勉強会におけるルールとして設けていたことが、
「決められた時間はきっちりやり切る」
「誰かの番で時間が余ったら次の人がそのコマで途中まで何か話す」
からそのつもりで参加してね、ということでした。
「質問がないようですので、じゃあ今日はこの辺で」という形式で打ち切っちゃうと、そこで「質問をしない」ことによるインセンティブが産まれてしまうんですよ。
勉強会のテーマによって聞き手にモチベーションの段差が産まれてしまうことはまあ仕方ないことで、中には「はよ終わらんかなー」と思ってる人もいるかも知れません。
そこで、「誰も質問しなかったらそれで終わり」というルールがあると、「質問しないでさっさと終わらせよう」という意識が出てしまうかも知れないし、それに気を使って質問しにくくなる人が出てきてしまうかも知れない。
だから、「用事がある人や飽きた人は時間に関わらず退席していいよ」という前提の上で、「決められた時間は質問あってもなくてもやり切るよ」というルールにしたんです。
結果、ろくに準備もしていないのに唐突に自分の番が回ってきて、徒手空拳で話す羽目になる、なんてことも発生しましたが、少なくとも「質問をしない」メリットはこれによって存在しなくなったんです。
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これらルールを設定してから、参加者の間に空気が浸透するまでやっぱりしばらくかかったんですが、なんだかんだでこれらの作戦は図に当たり、勉強会は狙い通りクソ質問が飛び交う場になりました。
で、クソ質問が飛び交うと、ある程度の確率でやっぱり「話し手も見落としていた新しい知見」を導けるような質問も出てくるようになるんですよ。
つまり、これらルールの設定は、少なくとも私が参加していた勉強会では間違いなく「成功」でした。
まあ、当然場の性質によっても変わってくると思うんで、どんな場でもこのルールが適合する、と主張する気はないんですが。
この経験から、中間管理職になった後でも、私は周囲に対して「どんなクソ質問でも何度でもしてね」というスタンスで接するようにしています。
上記のような話から、私は、「いい質問が出来ない」というのは必ずしも聞き手の問題ではなく、そもそもその場がクソ質問でも許容する場になっていないんじゃないか、と思うようになりました。
そういう意味では、増田が「いい質問が出来ない」と悩む必要は多分あんまりなくて、その場を作ってる人に「もっと質問出来るように工夫しろやコラ」というべき案件なんじゃないかなあ、と感じています。
その上で、クソ質問でも遠慮なくする。そうしている内に、段々慣れてきていい質問も思いつくようになる。
そんなもんだと思うんです。
質問が出ないのは場を作る側の怠慢、という認識が、もっと一般的になってもいいんじゃないかなあ、と。
今の私はそういう風に考えている、という話でした。
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システム開発やITコンサルティングを経て、
外資系製薬企業で15年以上のITビジネスパートナーとして人事からコマーシャル、 メディカルなど製薬企業の様々な分野のプロジェクトに携わる。
現在はネクセラファーマ株式会社で、システムだけではなく、企業風土改革や業務改善をリードし、
日本発グローバルバイオ製薬企業にむけて、同社の成長基盤の構築に尽力している。
岡田 雄太(ワークワンダース株式会社 CTO)
野村総合研究所に新卒入社後、証券総合バックオフィスシステムやオンライントレードシステムなどの開発に従事。
その後、8 Securities(現SoFi Hong Kong)へ出向し、日本人唯一のエンジニアとして国際的なプロジェクトに携わる。
BOOSTRYでは信託銀行向けSaaSの立ち上げと成長を牽引。
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(2026/01/19更新)
【著者プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Artem Maltsev)














