仕事で数多くの「人事評価制度」を見てきた。

主観で評価する制度もあれば、評価基準がキッチリと決まっている制度ももあった。上司が部下を評価する制度もあれば、360°評価と言って、部下が上司、あるいは部下同士で評価をし合うという制度もあった。

評価制度は生き物であり、会社の考え方が反映される。そして、次々と環境の変化に合わせて変わってゆくものだ。

 

しかし唯一、どの会社でもさほど変わらないな、と感じる部分があった。それは

「人事評価」は先に会社に入った人に有利なようにできている、という点だ。

 

例えば、10人程度の未成熟な会社では「社長がOK」といえば、OKであるし、多少の異分子であってもそれは大目に見てもらえる。また、昇給の幅も裁量によってはかなり大きなものになったりもする。また、昇進も早い。

だが、会社の規模が100人、1000人と大きくなるに従い、人事評価制度はより精密になり、大きな昇給は減り、管理職になれるチャンスはなかなか回ってこなくなる。

 

よく考えて見ればアタリマエのことだ。10人の会社で競争するのと、100人の会社で競争するのと、1000人の会社で競争するのとでは出世レースの厳しさが全く異なる。

だから、人事評価制度は会社の規模が大きくなるにつれ不可逆的にシビアになる。

 

かつて私の同僚だった方は、私がその様な疑問を抱いたことに対して、「当たり前じゃないか、会社の規模が小さいうちに入る、というリスクを背負っているのだから。」といった。たしかにそうである。

 

しかし、これにはデメリットも有る。私が見た多くの会社では、

「会社が小さい時に入った、先に昇進した人たち」と、「会社が大きくなった後から入ってきた人たち」の争いが生じていた。

そして、当然「先に昇進した人たち」よりも、「会社が大きくなった後から入った人たち」の方が有能な場合が多かった。

 

この状況を社長が放置すれば、有能な人が辞めてしまい、会社は成長しない。

社長が「先に昇進した人たち」を切り捨て、後から入った人たちを評価すれば、社長は創業時代に苦楽を共にした仲間を切り捨てた、という十字架を背負わなければいけない。が、会社は成長する。

 

実は、スタートアップ企業の最初の分岐点は、ビジネスモデル云々よりも、ここにある。

よく、スタートアップ企業が大きくなると、「創業グループの一部が会社を辞めて、独立する」等のニュースが報道されたりするが、現場で起きているのは上のような話がほとんどである。

 

本当に優れた人事評価制度を作るのであれば、有能な人たちが騒ぎ始める前に、創業仲間たちを適切に評価し、彼らを成長させる評価制度を作らなければならないのである。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

▶ お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)