「ライターとして売れるためにはなにが必要か」

 

こういった成功条件に関する質問の答えは、三者三様だ。

たとえば「注目を集めるタイトルづけ」「共感されるテーマ選び」「わかりやすい文章を書く」というように。

 

しかし、こう答える人はまずいない。

「マナーや常識、礼儀」と。

 

あまりにも当たり前だから、話の俎上にも載らない。

でもこの「当たり前」ができてない人なんて、山ほどいるんだよなぁ。

 

納期を破って逆ギレ…想定外な人はどこにでもいる

以下、現実であった怖い話です。

 

・数年前に月間PV3000万を記録した現在も人気のメディア。「寄稿お願いします」というお話をいただいたのでテーマを相談するも、その後なんど連絡しても完全無視。音信不通。

・界隈で有名な人気ブロガーへの寄稿。自分のブログでさんざん金の儲け方や自分哲学を語っておきながら、蓋を開けてみると連絡がまったく返ってこないうえ報酬も出し渋り。友人も同ブロガーに仕事依頼されたが返信が来ず話は立ち消え。

・金曜日の15時に編集部から記事の修正依頼が届く。「ライターは24時間以内に修正、納品すること。ただし編集部は週末休みなので確認は月曜日」というお言葉をいただく。

・クラウドソーシング案件のグループチャットワーク。納期をすぎても記事を納品しないライターに編集者が「せめて事前に連絡を」と伝えたところ、ライターは「こんなところやめてやる!」と逆ギレ、音信不通。

 

こんな話、めずらしくもなんともない。驚きはしない。

よくある……とまで言わないけれど、日常的に起こりうることだ。

 

そう。

適当で、失礼で、他人を軽んじる人なんて、世の中いくらでもいる。

もちろん自分だって気づかないうちに無神経なことをしているかもしれないし、言葉遣いがまちがっているかもしれないし、すべてのマナーに精通しているわけではないんだけど。

それでもまぁ、「どういう角度から考えてもこれはアカン」という人に出会うことはままあるのだ。

 

さて、あなたはそういう人と、いっしょに仕事をしたいだろうか?

 

好きな人のためにがんばるから、良い仕事には良い人間関係が必要

「良い仕事には良い人間関係」というのは、わたしの持論だ。

人間は、好きな人のためにがんばれる生き物だと思っているから。

 

たとえばあなたも、嫌いな同期のためには融通利かせたくないけど、仲良い同期のためには積極的にいろいろ取り計らったりするでしょう。

ムカつく上司には反抗するけど、信頼してる上司のためならちょっとの残業くらいするでしょう。

 

好きな仕事をやってたくさんお金を稼いでいても、毎日上司にネチネチと嫌味を言われ、同僚から無視されていたら、だれだって胃が痛くなる。

辞めたくなる。

環境が最高でも、人間関係ひとつで最低な職場になりうるのだ。

逆に、仕事がしんどくても、「まわりがいい人ばかりだから辞めるのは……」と留まっている人もたくさんいる。

 

人間関係がモチベーションに及ぼす影響は、想像以上に大きい。

だから、円滑に、心地よく、うまいこと仕事をまわすためには、お互いが好きでいること、要は仲良しなのが一番効率的なのだ。

そしたらみんな、勝手にがんばるから。

 

……というのが、わたしの持論でして。

もちろん、「仲良しサークルのノリで仕事をしろ」というわけではない。

仲が悪ければ腹を割って話せないし、不満が怠慢に繋がるし、情報を共有しなくなるし、単純に手間が増えるから、人間関係はいいに越したことはないというだけ。

で、その「いい人間関係」に必要なのが、マナーや常識、礼儀なのだ。

 

信用できない人はいつどこでトラブルの引き金になるかわからない

お互い好き・嫌いはあるにせよ、面倒な人間関係トラブルを避けるため、ある程度みんな折り合いをつけて仕事をしている。

でもそこに、マナー違反、非常識、無礼な人がいたらどうだろう。

折り合いどうこうを考えるまでもなく、「話にならないからムリ」となってしまう。

「いい人間関係を築く」という土俵にすら上がれないのだ、そういう人は。

 

信頼できない人がひとりでもいると、その場の雰囲気が一気に悪くなる。

その人を許す人と許さない人のあいだでさらに溝が生まれ、気づいたら取り返しのつかない自体に……なんてことも起こりかねない。

人間として信用ならない人の存在は、好き嫌い以前にトラブルの種なのだ。

関わるにはリスクが高すぎる。

 

ちなみにここでいう礼節は、最近物議をかもした「説明会で机のうえにペットボトルを置くのはマナー違反」「休憩中にアイスを食べるのは非常識」「内定を断るなら直接会社に足を運ぶのが礼儀」とかいう、よくわからんマイルールのことではない。

 

たとえば

・「金曜日までに連絡する」と言ったら金曜日までに連絡する

・できないことを安請け合いせず、任されたことはしっかりやり遂げる

・困ったこと、失敗したことがあればちゃんと素直に話す

・約束通り納品し、約束の金額を払う

といったレベルの話だ。

 

ところがどっこい(死語?)、こういうのを大事にしない人は少なくない。

「明日連絡するって言ったじゃん」「知らないうちに話が進んでるんだけど……」「えっなんで勝手に納期変えるの?」なんてこと、きっとだれもが経験したことだろう。

最初にいくつか例を紹介したとおり、案外いるのだ、どこにでも。

 

というわけで、もう一度聞きたい。

あなたはそういう人と、いっしょに仕事をしたいだろうか?

 

効率がよくても定型文ひとつ打てない人とは仕事をしたくない

「自分で稼ぐ道を切り開く」「効率的に働くことが最善」という風潮があるからか、テクニックにばかり気を取られ、マナーや常識、礼儀を軽んじる人をちらほら見かける。

 

たとえば、

「『いつもお世話になっております』なんてタイピングする時間がもったいない。そういうのに気づけない人はいつまで経っても仕事ができない」

「電話は人の時間を奪う迷惑行為」

というように。

 

そういう主張は極端でわかりやすく、なおかつ最先端っぽい雰囲気をかもしだしているので、なかなかウケがいい。

なんだかデキる人っぽい意見だし。

 

でも、実際はどうだ?

「常識にとらわれない」とかなんとか言って、「いつもお世話になっております」程度のことが言えない人間を取引先に紹介できるか?

「電話なんて仕事ができない人のツール(フン)」という人に合わせてまで、わざわざチャットアプリをダウンロードするか?

 

結局多くの人は、「いつもお世話になっております」という文面からはじまるメールを打って、必要あらば電話で話を進めてくれる人と仕事したいのだ。

だって、同じような常識やマナーをもっている人とのほうが、仕事がスムーズにいくもの。

 

それを「古い」と一蹴したいならすればいいけれど、その結果、ただの「ワガママで非常識な人」に成り下がるかもしれないということは、頭の片隅に置いておいたほうがいいと思う。

まぁ効率の話でいえば、「いつもお世話になっております」と打っただけで「まともな人だ!」と認識してもらえるなら、コスパ最強の気がするけど。

 

仕事において大事なのは、テクニックよりまずはマナー

唯一無二のスキルをもっている人であれば、多少「難アリ」な人間性でも需要はある。

でもそんな人、ごくごく少数のかぎられた人だ。

そのかぎられた特別な人間になれるほどの際立った能力がないのなら、せめてお行儀よくしておいたほうがいい。

 

いくら「人によって価値観はちがう」とはいえ、

・言ったことはやる

・返事をする

・約束(期限や報酬)は守る

くらいは、どんな状況でも心がけるべき姿勢だ。

 

いい仕事をするためには、相手にとって「信頼できるビジネスパートナーになること」が必要。

そのためには、マナーや常識、礼儀といった、やや古めかしくて非効率な要素もまた必要。

 

マナーや常識にとらわれすぎて旧態依然としているのも問題だし、アップデートすべき慣習もあるけど、だからといって礼節を軽んじるのはちょっとちがう。

作業の効率化や稼ぐノウハウが幅を利かせることでそういう根本的なものが軽視されている気がして、なんだか心配になる。

 

仕事の効率化も時には必要だけど、そういうのは「いつもお世話になっております。ご提案いただいた企画、とてもいいですね!」というメールでいい人間関係を築いてからだよね、まずは。

その順番を、まちがえないようにしないと。

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

 

 

【著者プロフィール】

名前:雨宮紫苑

91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&写真撮影もやってます。

ハロプロとアニメが好きだけど、オタクっぽい呟きをするとフォロワーが減るのが最近の悩みです。

著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)

ブログ:『雨宮の迷走ニュース』

Twitter:amamiya9901

 

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