少しだけ、昔の中国の話をします。
今から約2200年前。
中国、沛県の小役人であった劉邦(りゅうほう)は、反乱軍の頭領から身を起こし、王となって宿敵であった項羽(こうう)を打ち倒し、400年にわたる漢王朝の初代皇帝となりました。
漢文の授業にも出てくるほど有名なこのエピソードは、中国の歴史書「史記」にかかれているのですが、単なる歴史上の出来事としてではなく、読み物として純粋に面白い内容を含んでいます。
というのも、最終的な勝者である劉邦は旗揚げの当初、宿敵である項羽にくらべ、経済的基盤や武力などにおいて何一つ勝るところが無かったからです。
戦っては負け、名門の家柄である項羽に地盤でも劣り、将兵は少なく、勇猛果敢で知られる項羽に腕っぷしでもかなわない。
その劉邦がなぜ、圧倒的不利を覆して、勝者になったのか。
実は、劉邦の軍には、不利な形勢を一気にひっくり返した立役者がいました。
名前は韓信(かんしん)。
全く無名であった韓信は、劉邦の腹心である蕭何(しょうか)によって「国士無双(並ぶものがないほどの優れた人物)」であると推挙されました。
とはいえ、劉邦はさぞかし困ったことでしょう。
いくら有能という話があれど、一介の雑兵だった人物です。
しかし、劉邦にとっては信頼ある蕭何の勧めです。「わかった、将軍にしよう」と渋々いいますが、蕭何は納得しません。
蕭何はなんと、全軍を預かる「大将軍」にせよというのです。
劉邦は結局これも受け入れます。
(出典:横山光輝「史記」 11巻)
現実に劉邦と蕭何の間にどのようなやり取りがあったのかはわかりません。
しかし、事実として劉邦は、この無名の人物を「大将軍」に任命しました。すごいですよね。
結局、大将軍に抜擢された韓信は、連戦連勝。形勢を大きく覆し、劉邦に皇帝の座ををもたらします。
その他にも数々の難局を、劉邦は結局「任せること」によって切り抜け、最終的な勝利を手にしたのです。
また、古代の中国だけではありません。
近代のアメリカでも、同様の人物がいました。
アメリカの富を独占した鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーです。
彼の墓碑には「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る」と記されています。
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーが自らの墓碑名に刻ませた、"おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男、ここに眠る"との言葉ほど大きな自慢はない。これほど成果をあげるための優れた処方はない。
「人に任せる技術」の極意とは
しかし、言うほど「任せる」ことは簡単ではありません。
これは一種の「王のスキル」と言っても良い、獲得難易度の高いスキルです。
実際、
・管理職になったはいいが、自分で仕事を抱え込んでしまっている
・仕事を任せるのではなく「丸投げ」するだけになっている
・部下が成果を挙げられない
などの状況はどの組織にも見られ、悩む管理職も多いようです。
では「人に任せる技術」の極意とは一体何でしょうか。
まず認識しなければならないのは、「任せる」というのは、「自分の代わりに作業をやってもらう」のではないという点です。
任せることの本質と、作業を与える事の本質は全く異なります。
むしろ逆と言っても良い。
では何か。
それは「責任」です。人にすすんで責任を負ってもらうことこそ、任せることの本質です。
端的に言えば
「私に任せてください」
という自発的な一言をもらうこと。
それが「任せること」において、最も重要なことです。
だから難しい。
なんの備えも保護もなく、人はそんなに簡単に責任を負えません。
備えなく責任を追わせることを「丸投げ」と言いますが、最もやってはいけない行為です。
したがって、「責任の与え方」こそ、人に任せる技術のコアと言えます。
「責任を与える」という重い言葉に尻込みする方もいるかも知れません。
ですが、これについては、マネジメントの大家であるピーター・ドラッカーが優れた知見を残しています。
人が責任を追うための三要素
ドラッカーによれば、人が責任を負うために必要な用件は、以下の三要素です。
1.仕事が設計されており、道具や管理の手段が明確であること
2.成果の確認ができ、自己管理ができること
3.継続学習ができること
しかし言葉で言うのは易くとも、上の三つはそう簡単な話ではありません。
例えば「仕事の設計」とは具体的には何か。
成果の検証はどのように行うか。
継続学習をどのように行うのか。
人が責任を負うには、ハードルがあります。
「任せる」ためのツール
そうしたニーズに対して、多くの企業が「任せる」ためのツールや、フレームワークを提供しています。
例えば、その一つが、株式会社スタディストにより開発・提供されているB to B向けの手順書作成・共有プラットフォーム「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」。
そんな「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」を提供している企業自身は、どのように業務を「任せている」のか。
事業戦略部長の木本氏は、「Teachme Biz」を使って業務の標準化を進め
「調査」
「データ分析」
「資料の作成」
などの業務について、アウトソーサーに積極的に任せており、そのいずれも「アウトプットイメージ」と「手順」の共有が鍵となっていると述べます。
(株式会社スタディスト 事業戦略部長 木本俊光氏)
「それは自分がずっと続けていく業務か」
「もっと自分がやるべき業務はないのか」
それを自分に問い続け、「誰かに任せるべき」と判断すれば、任せることを躊躇しないこと。
木本氏は「私見ですが「新しい働き方」が進めば、人に任せる技術は社内外を問わず、重要になる可能性の高いスキルになるでしょう。」と述べました。
「任される」ためのスキル
また一方では「任される」にもスキルが必要です。
スタディストの木本氏は、プロダクトマーケティング業務にオンラインのアシスタントサービス「キャスタービズ」を利用しており「特に新規事業ではプロのアウトソーサーの存在が心強かった」と言います。
その理由は「リソースの柔軟性」と「自分では気付きにくい観点に気付けるから」。
実際、ピーター・ドラッカーも、マネジメントには「任せる側」と「任される側」の協力が不可欠であると述べています。
となれば、「任せる技術」「任される技術」が両者にあって、初めて成果が出るのです。
今後は企業の枠を超えた「協力」や「コラボレーション」が当たり前になるでしょう。
webがインフラとして定着した世界では、「任されるプロ」に頼める環境も整ってきています。
そういう意味では「任せる技術」は、今後「王のスキル」ではなく「一般教養」となるのかもしれません。
*
木本氏が「調査・データ分析・資料の作成」を任せている、オンラインのアシスタントサービス「キャスタービズ」
・リサーチ
・電話/メール対応
・データ整備
・翻訳
など「任せたい業務」があればご相談を。
>>無料資料ダウンロードはこちら
>>もしくはキャスタービズサービスサイトで話を聴いてみる
【著者プロフィール】
◯Twitterアカウント▶安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者( tinect.jp)/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯note有料マガジンでメディア運営・ライティングノウハウ発信中
◯安達裕哉Facebookアカウント (他社への寄稿も含めて、安達の記事をフォローできます)
◯Books&Appsフェイスブックページ(Books&Appsの記事をすべてフォローしたい方に)