またひとり、友だちがいなくなってしまった。
とあるゲームのボスを連戦していたところ仲良くなり、時折一緒に遊んでいた人だ。
向上心が高く仲間のフォローもうまいし、いろんなイベントを企画して楽しく遊んでいたはずなのに、どうして。
その人は、苦笑いして言った。
「マジメにやってたのがバカみたいだなって思って、もうやる気なくなっちゃった」
※最近ゲームネタばっかりだが、ステイホーム中なので許してほしい
「別にいいじゃん」派と「ちゃんとやろうよ」派は水と油
世の中には、2種類の人間がいる。
「そんなの別にいいじゃん」派と、「やるならちゃんとやろうよ」派である。
このふたつは水と油で、基本的に同じ場所に突っ込んではいけない。
お互いが反発して火傷するからだ。
とはいえ、みんながみんな、そのどちらかに全振りしているわけではない。
「純水」「100%油」なんて人はまれで、たいてい「適当な部分もあるけどしっかりやる部分もある」という具合で生きている。
が、それでもやはりどちらかに天秤が傾くのが人間というもの。
そして「マジメ」な割合が高い人は、「適当」な割合が高い人よりも、消耗しやすい。
ゲームから去ると決めた友人が、まさにそうだった。
「20時開始って言ってるのに、20時すぎても来ないから連絡したら『ご飯食べてからいく』って言われてさ」
「ゲームだからそんなにきっちりする必要はないかもしれないけど、約束は約束じゃん」
「事前に連絡くれれば開始時間を遅くすることもできるのに」
「今日はこのボス倒そうねって話してたのに、必須アイテム用意してない人もいて」
「でもみんな、『じゃあいまから買ってきなよ待ってるよ』って言うんだよ」
「ちゃんと事前に用意してた人たちが待つのっておかしいじゃん」
「自分は主催者だから、みんなに楽しんでもらうために、滞りなく進行したいって思う」
「でもみんな、『まぁまぁ』って言うんだよ」
「遅刻した人とかアイテム用意しなかった人になにか言うと、こっちが悪者になる」
「やるならちゃんとやりたいってだけなのに、心が狭いみたいに言われてさ」
「なんかもう疲れた」
怒り、というより諦めに近い言葉たち。
話を聞きながら、胸が締め付けられた。
なぜならわたしも、まったく同じ経験があるからだ。
マジメな人間は期待値が高いから、他人にがっかりしやすい
この記事でいう「マジメ」は「物事を計画通りきっちりやりたい性格」という意味で、「適当」は「計画通りにならなくても気にしない性格」という意味で使っている。
だから、「マジメな人間が正しくて適当な人間が悪い」と言いたいわけではない。
ただいえるのは、適当な人間のほうがたいていのことを楽しめるし、イライラしなくていいってこと。
マジメな人間は、「当然これくらいやるよね?」と相手への期待値が高いから、「なんでちゃんとしないの」と消耗しやすいってこと。
で、わたしは完全に後者。
ちゃんとやらない人にイライラするし、きっちり物事が進まないとストレスを感じる。
「気にしなければ楽」というのは理解してるけど、なかなかそうはいかない。
自分の「ちゃんとやりたい」と、まわりの「この程度でいい」の温度差にがっかりする。
イライラして、疲れて、なんだかもうイヤになる。
その繰り返しだ。
「まぁそこらへんは、融通を利かせる必要もあるよ」
そんなセリフ、何度も聞いた。
わかってるよ、わたしが「気にしないから大丈夫ですよ〜」って言えば丸く収まることくらい。
でも、ねぇ、なんで?
なんで時間守ってアイテム用意したこっちが悪いことになってるの?
時間守らない、アイテム用意しないほうが悪いに決まってるじゃん。
適当な人間を許せないマジメな人間は、心が狭い分からず屋なの?
そうやってモヤモヤする。
いやまぁ、「わたしは悪くないよね?」となぐさめてもらいたいわけではないんだけど。
ただ、きっちりやってるこっちが、「まぁまぁ」ってまわりからたしなめられるのがイヤなんだ。
「悪気ないんだから許してあげなよ」って苦笑いされるのが納得いかないんだ。
わたしはちゃんとやってるのに、と。
つねにマジメがいいわけじゃないけど、まちがってはいないと思う
「笑って流せばいいだけなのはわかってるのに……」と落ち込んだこともあったけど、高校時代からの10年来の親友が、こう言ってくれたことがある。
「マジメなのはいいことだし、そういう人がいるから成り立ってることも多いよ」と。
「そういう人がいると助かるし」と。
マジメな人はまわりにも同じものを求めがちだから、それを窮屈に思って、まわりの人が離れることもある。
もう少し柔軟になったほうが丸く収まっていた、という状況もありうるから、マジメ一徹がつねに正しいと言うつもりはない。
でも、それでも、わたしはあえて伝えたい。
「あなたはまちがっていない」と。
もちろん、なんにでも100%を求め、少しの妥協もしない、というのはやりすぎだけど。
でも本来、「ちゃんとやる」のは、いいことなのだ。
適当でうるさいことを言わない人のほう、物分かりがいいように映る。
でも、まわりはちゃんと見ていてくれてる。気づいてくれる。
あなたが、丁寧に物事を進めていることを。
学生時代のアルバイトで、あんまり融通が利かず、チクチク小言を言う苦手な先輩がいた。
でもその先輩が、他人のミスに気づいて毎回ひっそりとフォローしていたり、タイムスケジュールを表にしてくれたりして、円滑に仕事をできるようにしてくれていたことも知っている。
だからその先輩は、とっつきづらい性格ではあったけど、みんなから信頼されていた。
逆に、ムードメーカーで人気者だけど時間とお金にルーズで、本当の意味ではだれからも信頼されていない人もいた。
時間を守る人、準備をちゃんとする人、滞りなく進行できるように気を回せる人。
まわりはちゃんと見てるし、評価してくれているんだ。
大丈夫、伝わってるよ。
その「マジメさ」が、あなたの魅力だってこと。
マジメさはあなたの魅力だから、自分を嫌いにならないで
生きやすさノウハウでは、「気にしないこと」「こだわらないこと」「他人のことは気にしない」ことなどが、「良い」とされる。
期待しなければがっかりすることもなく、ストレスフリーになるからだ。
でも、きっちりと物事を進めていくことだって、大事だと思う。
それはあなた自身の生きやすさにはつながらないかもしれないけど、まわりの人はきっと気づいてくれる。
「この人に任せておけば大丈夫」
「いつも大変な役割をやってくれてありがとう」
「きっちりやってくれるから安心」
こうやって、信頼につながるから。
状況に応じて融通を効かせるべき部分ももちろんある。
でも、だからといって「ちゃんとやってる側」が「そうじゃない側」に合わせなきゃいけない、ってわけではない。
マジメであることがつねに正しいとは限らないにせよ、「マジメなのがまちがってる」とは思わないでほしい。
マジメなのは悪いことじゃないよ。
疲れることも多いだろうけど、そんな自分を嫌いにならないでね。
それはあなたの魅力だから。
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【著者プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
ハロプロとアニメが好きだけど、
著書:『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)
ブログ:『雨宮の迷走ニュース』
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