「何か食べたいものある?」

自炊生活において、この質問ほど答え続けるのに難しいものはない。

 

数日なら「カレー」とか「唐揚げ」とかアレコレ言えなくもないが、これが10日20日も続くとかなりウンザリする。

故に冒頭の質問に対する多くの人の回答はこうなる。

 

「何でも良いよ」

しかし…この”何でもいい”は時に人を怒らせる。

「その、何でも良いって答えが1番困るんだよ!」

「メニューを考えるの面倒くさすぎ!自炊なんて大嫌い」

今日もどこかの家庭で起きていそうなやり取りではあるが、これは自炊というものに対する捉え方を誤っているが故に生じる不幸だ。

 

自炊はちょっとしたコツを押さえてしまえばそこまで難易度の高いものではない。むしろ日常生活の中でも、かなり楽しい作業のうちの一つだ。

というわけで今日は誰でもラクチンにやれる自炊の本質を書いていこうかと思う。

 

食欲を使って、食材の声を聞け

自炊をやたらと難易度の高いものだと思っている人はグラタンとかハンバーグなどの”名前のある料理”を作らねばならないという強迫観念に捕らわれている。

まずはその既成概念をぶっ壊そう。自炊はもっと自由なもので、悩む必要など一切無い。

 

例えば冷蔵庫に大根が入っていたら、ジッと見つめて「どう食べたら旨そうか」をお腹に聞いてみよう。

食欲は素直だ。食材を目の前にすれば必ず声をあげてくれる。それを汲み取るのが自炊の醍醐味で、台所というのは己の欲と真摯に語り合える数少ない聖域だ。

 

何が食べたいのかはあなたのお腹が1番よく知っているのだから、頭で考える必要などどこにもない。

Don’t think, feel(考えるな、感じろ)で全部行ける。

「今日はサッパリといきたいな」と思ったのなら生のまま細切りにしてサラダでも作ればいいし、「今日はジュワッとジューシーにいきたいな」と思うのなら煮込めばいい。

 

このように食材の声を聞く訓練をし続けるとレシピなんて考える必要性が全くなくなる。

スーパーで売ってる旬の旨そうと思った食材を冷蔵庫に入れておき、実際に何を作るかは直前のインスピレーションで全部決める。それが自炊の極意である。

 

もっと食欲の力を信じよう。あいつらは食材を目の前にしたら、必ずあなたに食材の声を届けてくれる。あとはそれに忠実に従って料理を作ればいい。<参考 トリコ 島袋光年>

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自炊は調理方法×調味料で全部なんとかなる

全ての自炊はシンプルな式で表現できる。それは味付け×調理である。

この魔法の方程式にぶち込めば、どんな食材だろうが必ず料理になる。だから自炊において技術の必要性など基本的には無いに等しいし、具体的な献立名なんて考える必要はない。

 

大根を豚バラとごま油で炒めてみたら旨そうだと思うのならそうすればいいし、味噌を塗って焼いたら旨そうだと思うのならそうすればいい。

どういう風に自分がその食材を食べたいと「思った」のかが1番肝心だ。結果的に出来上がったものに名前をつけようと思えばつけられるけど、本質はそこにはない。

自炊の1番の醍醐味は”名前のない料理”を自分の食べたいように無限に生成可能なところにある。

 

誰にも邪魔されずに思う存分、己のインスピレーションを発揮できる場所。それが自炊だ。

食べたいように食べればいいし、やりたいようにやればいい。そこに正解も不正解も無い。全てあなたの自由である。

全てを食欲に委ねよう。そうすれば旨いは必ず貴方の元に訪れる。

 

自炊とは食欲を皿の上に表現するクリエイティブな営みである

僕が思うに、自炊というのはある種のアートである。なぜなら自炊とは食材を元に己の欲望を忠実に引き出し、それを皿の上に表現するものだからである。

全ての創作活動というのは突き詰めれば個人の中にあるグツグツとした何かがベースとなって生じるものである。

 

そういう意味では自炊というのは食欲をベースにやる創作活動と言えよう。

自分の食欲を忠実にお皿の上で表現したものが料理だという事が理解できると、人の作った料理がまた違った風に見えてくる。

 

日本を代表する芸術家・村上隆さんは

「高い価値が付く現代アートは「作家が自分のコンプレックスと真正面から向き合って、それを恥ずかしげもなく表出」したもの」

だというが、これは料理においても全く同じだ。

<参考 芸術起業論>

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己の欲望を極めて忠実に表現している料理は正に現代アートである。

例えば、漫画家の小林銅蟲さんの作る料理の破壊力は実に凄い。

彼の料理ブログは見ているだけで妙にワクワクしてしまうが、僕はその秘密は彼が”己の欲望に極めて忠実”であり続ける事にあるように思う。

パル

 

彼の作る料理は自分の食欲が一切合切隠さずに表現し続けられており、そこには妙な味がある。あそこまで”よそ行きの顔”をしていない料理はかなり珍しい。

小林銅蟲さんのブログの料理写真を見ていると現代アートに惹きつけられる人の気持もちょっとだけわかる。

私達が目指すべき理想像は間違いなくコレだ。人は自炊道を突き詰めていけば芸術家にだってなれるのである。こんなにも自由で創作性に溢れた家事の時間は、ちょっと他にはない。

 

レシピなんかに囚われて自分の食欲を表現する機会を失うだなんて、あまりにも勿体ない。もっと自由になろう。誰でもクリエイティブになれる時間、それが自炊なのだから。

 

本物の欲は成長させられる

繰り返すが、自炊において大切なのは貴方がどう食べたいかだけである。

 

己の欲望にキチンと耳を傾けられるのなら、そこから先はいかようにもなる。

足りない知識はインターネットでいくらでも補充できるし、技術だって調理家電を買えば最初からチート級だ。やりたい事の方向性さえわかれば後はどうにでもなる。

 

ただ、この”何をやりたいか”という部分だけは誰も決めてくれない。それを決められるのは貴方だけだ。

これがある意味では自由の醍醐味でもあるし、自由につきまとう責任だとも言えよう。

 

料理に限らず”何をやりたいか”というのは人生の核である。

そしてその核を欲でもって正しく導いてあげると、欲も成長する。人生はその繰り返しでもって色鮮やかさを増してゆく。

 

例えば「美味しいものが食べたい」という欲が貴方の中に本当にあるのなら、あなたはそのうち新しい食材や高価な調味料といった未知のものに手を出す事だろう。ハイレベルな調理技術の習得を目指したりもするかもしれない。

以前は触りもしなかったものを取り扱うようになったり、高次元な技術を身に着けたりしようとする。これは明らかに”成長”である。

 

実は成長とはこのように己の魂に語りかけて欲望を正しく導いてあげれば結果として必ずもたらされるもので、その歩みを振り返って再実感する事には人生の大きな喜びが隠されている。

これが成長の本質だ。成長とは己の内なる声に耳を傾け、その声が指し示す方向に向かって欲でもってエンジンを吹かせ、先に進んだ結果に他ならない。

 

そして実は欲望も成長する。美味しいものを食べたいという原始的な欲望だって、それをどんどん純化させていけば最初の頃はまるで想像もできなかった感性に辿り着くようになる。

食欲の深淵に触れた人間の言う”美味しい”は子供の言う無邪気な”美味しい”とはまるで異なる。その深淵に触れた人間にしかわからないものがあるし、その深淵に触れた人間にしか作れないものがある。

 

真の欲望というものは決して満たされるような甘いものではない。

あなたの飽くなき欲望をどこまでも丹念に追いかけて、その先にある遠い場所に辿り着く事はあなたの人生を賭ける価値がある。

 

本当に”やりたい事”でしか遠い場所には行けない。そしてそのたどり着いた遠い場所では欲も最初とは全く異なる様相を呈する事だろう。

その姿を見納められるかどうか。それが、私達に与えられた人生の100年という制限時間の意味なんじゃないかと僕は思う。

 

 

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【著者プロフィール】

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高須賀

都内で勤務医としてまったり生活中。

趣味はおいしいレストラン開拓とワインと読書です。

twitter:takasuka_toki ブログ→ 珈琲をゴクゴク呑むように

noteで食事に関するコラム執筆と人生相談もやってます

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