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ーー以上は筆者がいま適当に考えた自己啓発書のタイトルであり、現実には存在しない。
もっとも、巷にはこの種の本が腐るほどあり、ブックオフなどに行けば100円コーナーに山積みになっていることから、人生や仕事に迷いを持った時、手にとってしまう方は少なくないかもしれない。
では、あなたが友人宅を訪れた時、本棚にこういった啓発書が並んでいたら、果たしてどう感じるだろうか?
必死だな、頑張ってるな、金の無駄だな等々、考えは人それぞれだろう。
だが、筆者の場合、親しくない方なら見ないふりをする。
そして、大事な人なら、「今すぐこの本を焼き捨てて!」と直言したいというのが本音である。
というのも、出版社勤務時代に、啓発書を含む「何かを教えようとする媒体」作りをしてきた筆者は、この手の本を読みまくっている割にはそれが全く生かされておらず、むしろ無用の人と成り果てている自己啓発アディクトを嫌というほど見てきたからだ。
啓発した後のことまで出版社は考えない
まず最初に言っておくと、何かを教えようとする雑誌や書籍は数あれど、その作り手が中に書かれていることを実践できているとは限らない。
筆者が都内の中堅出版社で働いていた頃、同じフロアにはファッション誌と競馬雑誌の編集部があった。
が、前者にはオシャレ以前に風呂に入らず異臭を放つ人がいた。
そして後者は必勝法を教える媒体でありながら、編集長は会社に借金を肩代わりさせ、さらには一番下っ端の部員に金を借りて馬に金をつぎ込んでいた。
むろん、中には本当に答えを必要としている方のため、実際に役に立つヒントなりアドバイスなりを伝えようとする良心的な媒体・書籍とてあるだろう。
だが、濃淡こそあれど現実にはこのポリシーで動いていない出版社の方が少ないと思う。
何しろ、儲からないと会社が潰れてしまう。
だから啓発書を刊行する際には、切実に必要としている方だけでなく、該当テーマに少しは関心のある人、ひいては全くその情報が要らない人にまで買わせる努力をする。
そうしなければ、よほど著者にネームバリューがあるか、もしくは何らかのきっかけで話題にならない限り、ベストセラーなど望むべくもないからだ。
よって、啓発書の内容は煽り要素多めで、多少無理でも奇説・新説重視となりがちである。
かつての職場には入社1年目にして啓発書を手掛け、3塁打くらいの成績を上げた新人がいた。
著者はそこそこのビッグネームで、中身は自分の好きに生きろ、起業しろ、人の話は聞くなといった強気メッセージのオンパレード。
そこで自分は担当編集に
「編集者は最初の読者なんだから、書いてあることをちゃんと実践してさっさと起業しなさいよ」
と冗談混じりで話を振ると、返ってきたのは
「こんなの真に受ける方がバカじゃないっすか」
という。
また、逆にこの仕事をしていながら「教えの書」をストレートに信じてしまう人もいる。
世間知らずの新人君は
「うちで出してる書籍で『セクシー女優が教える本当に女性が喜ぶ性愛』って本があったのでしっかり予習していったんです。いきなり求めるんじゃなく、まずは女の子の耳元で愛の言葉をささやいて、って書いてあったんで、ちゃんと実践したんですけど駄目でした」
と言っていた。
その話を聞いた担当編集は、
「まさかゴーストライターに適当に書かせた本を真に受ける奴が、こんな身近にいようとは」
と言っていた。
しかし「教える本」を世にバラまいている以上、こういうあまたの被害者が発生しているのは自然な話で、「騙しやがって!」と会社に怒鳴り込んでくる読者がいても全く不思議でないのではないか。
それでも人生訓や恋愛論などはまだマシな方だ。
デメリットを被るのは本気にしてしまった本人だけで、他人に害を及ぼす可能性はそう大きくない。
もっと悪いのは、ビジネス系の啓発書が生み出す、意識だけはやたらと高い残念な人たちだ。
彼らは同僚を苦しめるだけでなく、場合によっては会社全体を左前にするパワーすら持っているからだ。
他人の教訓はどこまでいっても他人のもの。
世間にはビジネス書を正しく活用している方も大勢おられるだろうし、その内容がインチキだと断じるつもりも毛頭ない。
だが、問題は「分かったつもりになる人」を大量発生させることだ。
そもそもビジネス関係の啓発書が教える教訓とは、長年にわたる実務の積み重ねで試行錯誤を繰り返し、気付きに至るたぐいのもの。
その過程をすっ飛ばして結論だけを習得しようとするのは、試験を前にしていきなり解答を教えてもらうに等しい行為だ。
とりわけ筆者が厳しいなと感じるのは、まだ若いのに自己啓発に走りまくり、自意識を高めたあげく、実務的には全く使い物にならない人々だ。
こういう若手に仕事をふると
「何で僕がそんなくだらないことをやらないといけないんですか」
と文句を言ったり、はたまた生返事をして全く手を動かさず、それを叱るとビジョンや戦略がどうこうなどとでかい話で返してきて、ややこしいことこの上ない。
最近、友人が勤める会社の本部に中途採用で入社し
「知財のプロ」
「法律家と思っていただいて構わない」
とあれこれ口出しする立場を得た、意識高い系の人物がいる。
その指示が余りにも現場を知らないひどいものだと聞き、自称有能の「啓発アディクト」に違いないと調べたところ、彼のメルカリのアカウントには、本人によって出品された大量の自己啓発書、そして若干の入門系の知財・法律関係の書籍が出されていた。
意図していないとはいえこれほどみっともない蔵書の見せ方をしてしまった方も、そう世の中に多くはないだろう。
「高み」に登りつめた人を地上に下ろすのは、限りなく不可能に近い。
若いうちなら矯正の余地があるかもしれないが、そうでなければ「新規事業開発特設班」といった何もしなくていい部署を作って放り込み、一切仕事に触れさせないのが一番だ。
結局のところ、他人の教訓はどこまでいっても他人のもの。
自分の頭で考え、汗を流して、その果てに得られた知見に勝るものはない。
自己啓発書は、参考程度にするのはいいが、勘違いし全能感すら覚えてしまうのは会社員として馬鹿野郎もいいところだ。
「記憶に残る企業」になるには?“第一想起”を勝ち取るBtoBマーケ戦略を徹底解説!
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・Books&Apps立ち上げと読者獲得ストーリー
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・記憶に残る記事の3条件(実体験/共感/独自視点)
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第3部:「リストを“資産”として運用する日常業務」
登壇:楢原 一雅(リスト運用責任者)
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・配信頻度・中身の決め方と反応重視の運用スタイル
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日時:
2025/5/21(水) 16:00-17:30
参加費:無料 定員:200名
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
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(2025/5/12更新)
【プロフィール】
御堂筋あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。
Photo by Shiromani Kant