この記事で書きたいことは、大体下記のような内容です。

 

・「ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム」をクリアしました

・全体としては滅茶苦茶面白かったし、素晴らしいゲーム体験でした

・ただ、唯一今回のゼルダにおける「暗い場所での探索」だけはどうにも苦手で、最後まで四苦八苦しながら何とか突破しました

・遊んでいる途中、「この感覚どっかで覚えがあるな」と思ったら三か月くらい前に詰まって攻略が止まっていた「Outer Wilds」でした

・ふと思いついてOuter Wildsを遊んでみたら、以前詰まっていたところで「なんでこんなこと見逃してたんだ……!?」という発見をして、以降もスルスル進んでいます

・自分の中で、「暗いと何がダメなのか」ということが言語化によって明確にされた故に見つけられたポイントだったと思います

・どちらかというとコンテンツの好きな部分を言語化する方が好きなのですが、苦手な部分を言語化することによって得られるものも色々とあるのだなあ、と改めて認識した次第です

以上です。よろしくお願いします。

 

さて、書きたいことは最初に全部書いてしまったので、後はざっくばらんにいきましょう。

この文章ではストーリー上のネタバレになるようなことは書きませんが、どうしてもゲーム内容に触れてしまうことだけはご承知おきください。

 

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「あるゲームを攻略していたら、その過程で脳のスイッチが切り替わって別のゲームが攻略出来た」という、自分の中ではちょっと珍しいと感じた体験の話をします。

 

ここひと月くらい、「ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム」(以下TotK)を隙間時間でちまちまと遊び続け、つい最近クリアしました。

 

プレイ時間は50時間あまり、一応攻略サイトの類は一切見ずに、なんとか独力でクリアまでこぎ着けました。

おかげで山のように取りこぼしがありまして、今改めてハイラルを探索し直しています。遊び尽くすまで3年くらいかかりそう。

 

元々、前作であるブレスオブザワイルド(以下BotW)には人生でもトップ3に数えられるくらいハマり込んでおり、数十回クリアする傍ら「記憶をなくしてもう一回BotWを遊び直したい」とずっと思っていたので、その夢が丸々叶ったどころか、あまりのゲームのスケールと懐の広さに完全にオーバーキルされた形です。「誰がここまでやれと言った……!?」と言いたくなるような凄まじいボリュームでした。

 

元々私、BotWの何が一番好きかって「遠くまで見えること」だったんですよ。視野の広さ。

BotWのマップってだだっ広いのに物凄く高密度で、大体どこに行ってどう探索しても、何かしら新しい「発見」があるんです。

ただ辺りをうろついているだけで色んなものを見つけることが出来て、それが十分な報酬効果になる。つまりうろうろしているだけで楽しい。

 

更に、マップ上にはプレイヤーが興味を持つようなものがあちこちに配置してあって、しかもゲームに慣れれば慣れる程「あ、これも怪しいぞ」「ここにも何かありそうだぞ」と分かるようになる。つまりアンテナが鋭敏になる。

 

そこに、広々とした視野が乗っかって、「とにかく目についたところに行きたくなる」「進む内に色んな障害に突き当たって、自然と試行錯誤をすることになる」「試行錯誤をしていると、先に進むための選択肢が途方もなく広いことに驚愕する」「試行錯誤によってごく自然にゲームに習熟して、更にゲームが面白くなる」という、恐ろしい好循環が形成されていました。このサイクルが、私にとってのBotWの体験、ほぼそのものでした。

 

今回、TotKでも、このサイクルは再現、というかむしろとんでもなく強化されていました。

もちろん前作同様の広々とした視野。ただ周囲をぐるぐる見回しているだけで、何かしら興味を惹くオブジェクトを見つけることが出来ます。「あそこには何があるんだ?」「あ、あそこは今近づいたらヤバそう……」という嗅覚が自然と働くように出来ている。

一方、ウルトラハンドやモドレコによって、前作以上にプレイヤーに出来ることは増えていて、ありとあらゆる障害を、ありとあらゆる手段で突破できるようになっている。

 

どんな解き方をしても「この解き方で良かったのか?他にもこういう解き方が出来たんじゃ?」という別解が際限なく浮かんできて、試してみると大概それも通用するんですよ。プレイヤーが思いつくこと、全部実際に出来る。

「これ、テストするだけでも地獄だったんじゃ……?」としか思えなくって、この一点だけでも開発チームを心から尊敬する他ありません。

 

更に、前作ではいまひとつ「モンスターを倒した時の素材の使い道」が限定されていた中、スクラビルドによってどんな素材にも何かしらの使い道が出来て、収集のモチベも上がりまくり。強い武器や防具、ゾナウギアを集めて使いこなす過程。

さらにウルトラハンドやブループリントを応用して新しい乗り物を作ったり、その乗り物を駆使して難局を突破していく気持ち良さは、もう「沼」以外に表現のしようがありません。

 

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とまあ、TotK自体は最高に楽しめている半面、どんなゲームでもそうであるように、やはり「どうしても苦手な部分」という点もありまして。

何が苦手って、「暗い」「しかもその暗さを打破することが一種のギミックとして組み込まれている」場所がやたら多い、というところが、私どうにも苦手だったんです。雰囲気が、とかじゃなくて、物理的に暗い、光量が少ない。

 

前作BotWにももちろん「暗い場面」「意図的に暗くされている場所」というのはあったんですが、今作ではそれが激増しています。「洞くつ」や「地底」が新たに主要な探索先として追加されたこともあり、その他のダンジョンでも「暗い場所」というものがかなり多いです。なんなら雨や雪でもかなり暗くなります。

もちろん「明るくする手段」というのも用意されていて、例えば発光する装備や周囲を明るくするアイテムもあるんですが、それもあって環境はBotW以上に「暗く」されていたように思います。感覚的には、攻略過程の1/3くらいは「暗い場面」だったんじゃないかなーと。

 

で、自分でもちゃんと認識していなかったんですが、どうも私、「暗くて視認性が下がる」ことに過剰にストレスを感じてしまうみたいなんですよ。

「よく見えない」ということが問題になるだけではなく、ただ「暗い」ということそれ自体が気になって、普段なら簡単に気付けるようなギミックにも気付けないし、注意をはらうことが出来なくって探索がおざなりになってしまうんです。

 

前述した通り、暗さを打破する為のギミックもあるので当然それを使うわけなんですが、いちいちアカリバナの種を投げる手間もストレスだったし、そもそも毎度毎度明るくしていたら種が何百個あっても足りません。

もちろん意図的なデザインだということは理解できるんですが、ここだけはどうにも閉口しまして、克服するまでに随分かかりました。

 

元々、「暗い画面が苦手」って、2Dゲーだと感じたことがなかったんですよね。昔のアクションゲームで画面が暗くってもなんてことなかったし、ホラーゲームで周囲が暗くっても全然平気だったし、視野が狭い中それを広げていくギミックも別に嫌いではなかった。

 

ただ、先述した通り、BotWの「視野が広い」という要素が私にとってとても重要だったこともありますし、TotKが「周囲を見て、考えて、試行錯誤する」という要素が非常に重要なゲームだということもあります。

また私自身、耳も鼻も舌もあんまりよくない中視力頼りの人生を送ってきたことの影響もあるのか、「見えにくい」ということが妙に自分にとってのストレスになるということに、今作で初めて気づきました。

 

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ところでいきなり話が変わるんですが、昨年の夏くらいから、私はとある宇宙探検ゲームにハマっていました。

そのゲームの名は「Outer Wilds」。「ゲームを開始してから22分で、太陽が超新星爆発を起こして星系が滅んでしまう」というとんでもない設定の中、ちっちゃな宇宙船を駆使して星から星を探索していき、宇宙の謎を解き明かしていくという、端的に言って物凄く面白いゲームです。

このゲームはこのゲームで、「試行錯誤して少しずつ自分の視界を広げていき、何が起きているのか、何をすればいいのかを解明していく」という過程が個人的にジャストフィットしたゲームでして、語り始めると長くなり過ぎるので別途ちゃんと記事として書きたいなあと思っているのですが。

 

実は私、Outer Wildsの本編をクリアした後、DLCの「Echoes of the Eye」でずーーーーっと詰まっていたんですよ。

攻略サイトはクリアするまで見ない主義なんですが、ここ数か月ちょこちょこプレイしては、「全然先に進めない……どこで詰まってるのかもよくわからない……」ってなりまして、どうしたものかと悩んでいたんです。

 

で、TotKを遊んでいて、上述した「暗い場所」と格闘した時、頭の中で唐突に何かが繋がりまして。

「あれ、これOuter Wildsじゃねえか?」

と思ったんですよ。

 

TotKの洞くつやダンジョンは、ある程度意図的に「暗く」されていて、ギミックもその暗さを前提に作られています。

そして私はそれが苦手で、普通なら簡単に見つけられそうなギミックを、「暗さ」それ自体が気になってどうしても見つけられませんでした。「とにかく明るくしなくちゃ」と思って、それがストレスになってしまっていたし、視野も思考も狭くなっていた。

 

それと同じように、「Outer Wilds Echoes of the Eye」では、一部の場所で「暗さ」がギミックとして使われています。

Outer Wildsのアクション性はゼルダ程ではないということもあり、プレイしている時点でははっきり認識出来ていなかったのですが、もしかするとTotKと同じような見落としを、その「暗さ」のせいでやらかしていたのかも知れない。

 

そう思って改めてOuter Wildsを起動して、「暗さをストレスと感じる自分の特性」を計算に入れた上で詰まった個所を探索してみたところ、

見事に「これかよーーーーーーー!!!!!」ってなる体験をしたんです。「なんでこれ見逃してたんだ!?!?!?」ってなりました。

 

ネタバレは避けるんですが、Echoes of the Eyeのとある場所では、「暗さ」と「明かり」が重要なポイントになっている場面があります。

 

私はそこで、「暗くて視認性が悪い」ということ自体が気になって、まずそこを「明るくするにはどうすればいいんだ」という方向でしか考えていなかったのです。

暗いなら暗いままどうにかすればいいじゃん、という思考が出来ていなかった。そこに、遊んでいる間は気付けていなかった。

ここ数か月詰まっていた箇所をどうにか突破して、その後も同じようにスルスルと進められていて、まあ滅茶苦茶怖い場面に当たってぎゃあああってなったりもしたんですが、まあ何はともあれ「ゼルダをやっていたら脳のスイッチが切り替わってOuter Wildsも攻略が進んだ」という、そういう話なわけです。

 

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ポイントとなったのは、「開発者の意図読み」と「自分の注意力の特性の把握」だったような気がします。

 

今回TotKを遊んでいて初めて、「暗い場面だと注意力が極端に下がって、思考が一方向になってしまう」という自分の特性に気付きました。

同時に、それを言語化することによって、「とはいえこれは別にゲームが不出来なわけではなく、開発者が意図的にデザインしているのだから、それを活かした謎解きも、それを回避する方法もある筈だよな」ということに思い当たりました。

 

これ、いわば「思考の方向性が切り替わった」という話じゃないかと思うんですよ。例えばパズルゲームでは、脳のピントが合うかどうかというのが非常に重要で、どんなに頭がいい人でもそのゲームにピントを合わせないと全然解法が浮かばなかったりすることがあるんですが、その「ピント合わせ」に近い。

 

これは恐らく、TotKで「暗いの苦手……」で止まっていたら発生しなかったことで、TotKを頑張って攻略しつつ、自分の苦手ポイントをちゃんと言語化したからこそ達成できたことだろうと考えるわけです。

 

私は普段、どちらかというと「自分は何が好きなのか」「自分は何が楽しいのか」というところにポイントをおいて言語化する方が好きではあるんですが、とはいえ時には「自分はどこが苦手なのか」というところに力点を置いた言語化をすることで得るものもあるのだなあ、と。

そんな風に考えたわけなのです。

 

まあ、TotKはやり残しが思いっきり残っている一方、Outer WildsのDLCもまだ完全制覇したわけではないので、引き続き遊びこんでいこうと考える次第です。よろしくお願いします。

今日書きたいことはそれくらいです。

 

 

 

 

 

【著者プロフィール】

著者名:しんざき

SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。

レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。

ブログ:不倒城

Photo:Eugene Chystiakov