当メディアに寄稿をしていただいている熊代亨氏から、本を贈っていただいたので読んでみた。
タイトルは『認められたい』
認められたい
- 熊代亨
- ヴィレッジブックス
- 価格¥2,005(2025/07/03 12:54時点)
- 発売日2017/02/28
- 商品ランキング342,665位
面白い本だった。
内容で私が特に気になったのは、「手っ取り早い承認を求める人々」について書かれている部分である。
熊代氏は、本の中で
「ゲームやキャバクラなど、手っ取り早く承認欲求を満たせることばかりに時間を使っていると、身につくスキルがひどく偏ってしまって、将来を生きていくためのスキルがロクに身につかないまま、歳をとってしまう」
と述べる。
******
承認欲求と言えば、一昔前のある人物を思い出す。悪い人ではなかったが、1つだけ褒められないクセがあった。それは
「仕事を抱え込んでしまうこと」
だった。
若手で経験も浅かったその人物は、自分が引き受けられる以上の仕事を「褒められれたい」「失望されたくない」という理由で引き受けてしまい、結局後で問題が発覚する、ということもしばしばだった。
ええカッコしいのその人物に業を煮やした上司は、一喝した。
「その場しのぎで安易に仕事を引き受けるのはやめろ。できないときはできないと言え。」
「そういうわけでは……」
「言い訳はするな。実力に見合わないことをしても、認められるどころか信頼を失うだけだ。」
「私はわるくありません。頼まれたら引き受けてあげたいんです」
「ちがう、お前は嫌われたくないと思っているだけで、自分の実力を認める勇気もない。」
「しかし……」
「お前が「できる人間と思われたい」と願っていることは理解できる。だが自分の仕事を振り返って見てみろ。焦って自分を大きく見せようとするな。」
その人物は後にこう言っている。
「怒られて、いいカッコをしなければ、という思い込みはきえたかな。お前は実力不足、とはっきり言われたので、逆に仕事に集中できるようになったかも。」
******
「手っ取り早く承認を求める人」は、残念ながら企業内で大きな問題になることも多い。
特にそれをはっきり言ってくれる指導者がいない場合は、なおさらだ。
彼らは例えば、以下のような発言をする。
・上司が褒めてくれないので、やる気が出ない
・地味な仕事は皆が認めてくれないので、やりたくない
・見てくれている人がいないので、やめてしまおう
・何故あいつよりオレのところに先に話を通さないんだ
・オレのほうが学歴がいいのに、何であいつが先に出世するんだ
反対に、承認欲求を自己のコントロール下に置いている人は、次のように発言する。
・上司をうならせるような仕事をしよう。
・地味な仕事こそ、大事にすることが自分のためになる
・見てる人がいないときこそ、自分が自由にできるチャンスだ
・私は彼を信頼しているから、私に相談するかどうかは彼に委ねよう
・彼の実力が上だったということか。頑張ろう。
当然、下の考え方の方が実力がつく。実力がつけば、認めてくれる人は自然に増える。
人から羨ましがられたり、褒められたりすることに頓着しないことが、結果的に人の評価を受けるのだ。
また、彼らは積み上げてきた自信や「自分の中の評価尺度」があるので、他者の評価、賞賛を「参考意見」と捉える。
それゆえ、周りの人間は彼と適度な距離を保つことができ、彼は「付き合いやすい人間」と感じてもらえる。
逆に承認欲求の強すぎる人は、
「何でオレを褒めないんだ!」
「頑張ったのに、認めないのか!」
と常に不満を抱える。
もちろん、彼らをなだめるために大人の対応をする人もいるが、彼らの相手をするのは面倒なため、徐々に周りは彼らを相手にしなくなり、彼らはますます孤立する。
とうぜん、実力もつかない。
アドラー心理学では承認欲求について次のように述べる。*1
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれない
逆説的ではあるが、認められたい人ほど認められず、評価を気にしない人ほど認められる結果となる。
「承認欲求」を必要としない人ほど、逆に他者から承認され、それを求める人ほど孤立してしまう。
人間関係とは誠に皮肉なものだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Twitterアカウント安達裕哉(人の能力について興味があります。企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働者と格差について発信。)
・安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)
・すべての最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ
・ブログが本になりました。
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*1
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