いわゆる「新しい働き方」にまつわる問題、具体的には複数の会社の仕事をしたり、リモートワークを行ったりといった仕事の形に必ずついてまわる問題として、「自己管理」がある。

当たり前だが、自己管理ができない人に、新しい働き方はできない。リモートワークやパラレルワークは、人の監視がなければ仕事ができない人には、向いていない働き方なのだ。

 

先日お会いした経営者は、「社員にリモートワークを認めてあげたいけど、ウチの社員に自己管理ができるかなぁ……上司が見てないと仕事しないんじゃないかなぁ…」と言っていた。

リモートワークやパラレルワークが多くの会社で認められていない理由は、表向き「直接会うことが重要」と標榜してはいるが、実のところ「社員が自己管理ができるかどうか」に対し、まだNOだと考える経営者が多いからではないだろうか。

 

しかし、有能な人々はもはや、会社の中にとどめておくことはできない。会社としてもむしろ、有能な人にほど新しい働き方を認めてあげたい。

でも一部の人だけそれを認めるのは不公平だ……そんなジレンマがあるように見受けられる。多くの経営者は「もっと多くの人に自己管理できるようになってほしい」と願っているのだ。

 

だが、改めて考えてみると「自己管理」とはなんだろうか。何ができれば、「自己管理」できたといえるのだろうか。

 

 

これについては、かつて一緒に仕事をした、あるコンサルタントの知見がわかりやすいだろう。

かつて「自己管理せよ」という上司の下で、何をすべきかわからず、迷っていたとき、「自己管理が上手である」と言われる彼に相談したのだった。

 

「自己管理について教えてくれって?」

「そうです。」

「ふーむ。それは、自己管理、という言葉の今のイメージから聞こうか。」

「えー、遅刻をしない、とか約束を守る、とか。そんなイメージです。」

「おいおい、ここは小学校か。そんなこと、当たり前じゃないか。」

「え…。ちがうんですか?」

「ちがうね。少なくとも会社における「自己管理」は全くちがう意味だね。たぶん今のことは「規則を守る」とか「きちんとする」とか、そんなレベルの話だろう?本当の自己管理は、もっとレベルが上だね。」

「で、では……。「人格者になる」とか、そう言ったレベルですか?」

「全くちがう。」

「……ギブアップです。」

「おいおい、そんなことも知らないでコンサルタントやってるのか。そりゃマズいよ。」

「意地悪しないで、教えて下さい。」

「いいよ。「自己管理」ってのは、中身は3つ。考え方、データ、そして業務設計から成る。

「3つ。」

「まず考え方。自己管理は「目標指向」だ。」

「目標指向とは……」

「管理は何のためにする?目標を達成するため、成果をあげるためだ。言い換えれば、管理は前提として必ず目標を持つ。そこに「自己」と付くのだから、この意味は明らかだ。つまり、「自己管理」は「自ら設定した目標を達成するためにやるもの」なんだ。」

「自分で目標を立てろということでしょうか?」

「そう!他人の立てた目標ではダメだ。自分で立てた目標、自分で決めた目標を守るのが、自己管理だ。」

「なるほど、与えられたものではない目標……。」

「そう。」

「次は?」

「次はデータ。成果についてのデータを見て、自分で行動を修正できなくてはダメだ。」

「どういうことでしょう?」

「ドラッカーの言葉を知ってるかい?「自己管理には、自らの成果についての情報が不可欠である」と言ってるんだよ。彼はまた、こうも言ってる。「理想は「結果はもう本人が知ってるから、わざわざほめたり叱ったりする必要ないよね」という状態だって。」

「つまり、自分でどの程度成果が出ているか、自分で見えなくちゃダメ、ってことですか?」

「そう。上司が教えたり、尻を叩いたりするのはダメ。」

「言われてみれば当たり前ですね……でも、肝心な情報を上司しか持っていない、という状態はダメってことですね。」

「そうそう。」

「最後は?」

「基本的に「自己管理」は自分の仕事の進め方を自分で作らないといけない。非定型業務なら当たり前だよね。ボスがやり方を逐一指示してくれるわけじゃない。」

「確かにそうですね。」

「だから、仕事を細分化して、順番を定め、トライアル・アンド・エラーを繰り返して自分で仕事を作っていく。つまり業務設計が自分でできる人しか、自己管理はできない。

「うーむ、難しいですね。」

「そう、だって今までボスがやってくれたことを、自分でやらなくちゃいけないんだよ。大変だよ。」

「まあ……そりゃそうですね。そういえば、「モチベーションの管理」とかは要らないんですか?」

「要らないよ。」

「何故ですか?」

「全部自分で決めてるからさ。自分で決めてる感覚なら、モチベーションも何もない。もし「モチベーション」が気になるようなら、それは自己管理できているとはいえない。モチベーションの減退は、疲れか、やらされ感だから。」

「なるほど」

「疲れは、自分で管理できるだろう。やらされ感を持っているなら、それは自分で決めた目標じゃないからだ。」

「なるほど、ありがとうございます!」

 

——————–

 

以上の話から、「自己管理」ができる人の条件は、

1.目標を自分で作ることができる

2.成果に関するデータを見て、自分の行動を修正できる

3.業務設計ができる

の3点となる。

 

 

【お知らせ】
Books&Apps及び20社以上のオウンドメディア運用支援で得られた知見をもとに、実際我々ティネクト(Books&Apps運営企業)が実行している全48タスクを公開します。

「成果を出す」オウンドメディア運営  5つのスキルと全48タスク
プレゼント。


これからオウンドメディアをはじめる企業さま、現在運用中の企業さま全てにお役に立つ資料です。ぜひご活用ください。

資料ダウンロードページはこちら↓
https://tinect.jp/ebook/5skills48tasks/
メールアドレス宛てに資料が自動送信されます。

ティネクトの事業・サービス詳細はこちら

 

書き手を募集しています。

安達裕哉Facebookアカウント (安達の最新記事をフォローできます)

・編集部がつぶやくBooks&AppsTwitterアカウント

・最新記事をチェックできるBooks&Appsフェイスブックページ

・ブログが本になりました。

(Chapendra)