英国オックスフォード大学のの教授が、『雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文を出し、話題となっている。

オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった

702

米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析しました。その結果、今後10~20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高いという結論に至ったのです(出典:現代ビジネス)

「オックスフォード認定」という言葉は眉唾だが、10年から20年も経てば、今の多くの仕事が異なる仕事に取って代わるのは当たり前といえば当たり前だ。例えば1994年当時、日本において情報サービス産業で働いている人は40万人程度であったが、現在は100万人となっている。ある仕事が増えれば、別の仕事は減る。そういうことだろう。

 

これは煽りでもなんでも無く、下のデータを見ると実際に、2000年からの5年間で経理の事務員が30万人も減っているのは、ショッキングな数字だ。その代わり「一般事務員」が30万人以上増えている。これは、おそらく非正規雇用者に置き換わったのだろう。

また、管理職も不要になっているようだ。会社役員と管理職が合わせて30万人も減少している。また、営業職と思しき、「商品販売外交員」も30万人減少。もはや、「ホワイトカラー」は希少種だ。

2030

(出典:2030年 あなたの仕事がなくなる 東洋経済オンライン)

こうしてテクノロジーの進展により、高所得を得られる創造的な職場と低賃金の肉体労働に雇用は二極化される。そして、それ以外の中間層の仕事は急速にコンピュータに置き換えられ、それが現下の総雇用減少の一因になっている

長期的には、創造的な仕事に人類全体がシフトしていくのかもしれないが、急過ぎる変化は社会に歪みをもたらす。

 

さて、オックスフォード大学の教授が言う「消える仕事」というのが仮に正しいとした時(本当に正しいかどうかは私の知るところではない)、現在「消える仕事」に就いている人は一体どうすればよいのだろう。

 

よくあるアドバイスとして多いのが、「どこへ言っても通用するスキルを身につける」「コンピュータに置き換え不可能な事ができるようになる」という話や、「英語能力を身に付ける」などの話だ。しかし、この手の話は私はあまり信用していない。

それは残念ながら、「一度身につけば、一生食べるに困らないスキル」というものがほとんどないからだ。今は、「これさえやっておけば安心」というものが無い時代なのだ。「簿記」を身につけても、「英語」を身につけても、「資格」をとっても、本当に安心することは出来ない。

だから、本当に重要なのは、そういった表面的なスキルの話ではない。

 

では、何が大事なのか。実際には、本当に大事なのは、「まわりから助けてもらえる」力、「まわりと助け合える」力だ。大きな変化に自分の力だけで対抗するのは難しい。いま勤め人であればなおさらだ。「助けあって、時代の変化を乗り切る」のが、正しい選択だ。

私はその答を、「フリーランスになった人々」に見ることができた。フリーランスは個人のスキルで生き抜いているわけではない。周りの人と助け合いながら生きている人がほとんどだ。

フリーランスとなってもうまくいく人は、次の点で共通している。

 

1.「まずは目の前の人」を助けようと全力を出す。

大きな夢も大事だが、社会で信用されるのは間違いなく、「目の前の人」を全力で助ける人だ。そういう人は、自分のつとめている会社がなくなっても、必ず引き取り手がある。「自分のために頑張ってくれていた人」を見捨てる人は少ない。

50代になってリストラされてしまったが、以前一生懸命尽くした相手に、「ウチに来ないか」と声をかけられている人を私は幾人も見た。

 

2.知り合いが多い。

以前の記事でも書いたが、仕事がほしいなら、「すごく親しい友達」を少数持つよりも、「ちょっとした知り合い」が多いほうが良いと、ネットワーク科学の第一人者である、アルバート=ラズロ・バラバシは述べている。

仕事がほしいなら、親しい人ではなく、「ちょっとした知人」をたくさん作ること(Books&Apps)

人々はいかにしてネットワークを作り、社会的絆を利用して職を得るのだろうか?彼は、それを調べるために、何十人もの管理職や専門職の人たちにインタビューして歩き、今の職を得るために力になってくれたのは誰だったかを尋ねた。今の職を得たのは友だちのおかげなのだろうか?

返事はいつも決まっていた。力になってくれたのは親しい友達ではなく、ちょっとした知り合いだというのだ。

それは論文として発表されたが、暫く後にセンセーションをまきおこし、1986年には、「カレント・コンテンツ(学術雑誌目次情報)」の選ぶ、「サイテーション・クラシック(頻繁に引用される論文)」となったという。

論文のタイトルは、「弱い絆の強さ」だ。

いざというときに声をかけることのできる「知り合い」をたくさんつくろう。社内の人としか交流していない、というのはリスクが高すぎる。

 

3.「今までにやったことのないこと」を積極的に引き受ける。

「やったことのないこと」に対する耐性は重要だ。もちろん、彼らもやったことのないことに対して恐怖を感じていないわけではない。それどころか、人並み以上に恐怖を感じる人も多い。

しかし、彼らは「やったことのないことをやること」は能力の限界を著しく広げることを知っており、常にそのようなチャレンジを求めている。そのような人は、「もう歳だから」であったり、「興味が無いから」といったことは言わない。町内会会長でも良い、マンションの管理組合長でも良い、ボランティアでも、少年野球のコーチでも良い。とにかく何かを引き受けよう。

「ヨルタモリ」という番組がある。視聴率が好調とのこと。しかし、主役は既に70歳になろうという人物だ。彼は70歳になっても「やったことのないこと」を積極的に引き受けている。そして、そういう人は必ず働き口がある。

現在、「やったことのある仕事」ばかりをルーチンで回しているだけの日常であれば、一度メスを入れて見る必要がある。

 

4.「変なプライド」を持っていない。

プライドは大事だが、「変なプライド」は困る。特に大企業で出世した方は「自分は仕事ができる」という自負があり、異なる成果を要求された時にも仕事のやり方を変えないケースが多い。

ピーター・ドラッカーはこれについて、あるエピソードを紹介している。ドラッカーは証券アナリストをつとめた後、投資銀行に転職をし、そこでエコノミストとして働いた。3ヶ月ほどして年配の創立者に呼ばれた時の話だ。

「君が入社してきたときはあまり評価していなかったし、今もそれは変わらない。しかし、君は思っていたよりも、はるかに駄目だ。あきれるほどだ。」

2人のシニアパートナーに毎日のように褒められていた私は、あっけにとられた。

その人はこう言った。「保険会社のアナリストとしてよくやっていたことは聞いている。しかし、証券アナリストをやりたいのなら、そのまま保険会社にいればよかったではないか。今君は、補佐役だ。ところが相も変わらずやっているのは証券アナリストの仕事だ。今の仕事で成果をあげるためには、一体何をしなければならないと思っているのか。」

私は相当頭に血が上った。しかし、その人が言うことが正しいことは認めざるを得なかった。そこで私は、仕事の内容も、仕事の仕方も、すっかり変えた。

異なる仕事には、異なるやり方がある。固執してはいけないのだ。

 

5.感謝を形にする。

「すべての人に感謝」と述べる人がいるが、そういう話ではない。実務的には感謝は「形」にする必要がある。

お世話になった人へ、「礼状」を書いたり、「お歳暮」などを送ったりすること。そういったちょっとしたことの積み上げが、次の信頼関係をつくる。

 

このような変化の中、ほんとうに困る人は、「会社の中で、社会の中で、助けてくれる人もなく、孤立無援になってしまう人」だ。そして、逆説的だがサラリーマンは残念ながら一つの組織で長く働けば働くほど孤立化しやすい。会社の中の人脈に全面的に依存するようになるためだ。

昭和の激動の時代、「近所づきあい」で人々は助けあっていた。これからの世の中も、助け合いが大事なのは、きっと同じなのだ。

 

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