私は社会人1年目の頃、研修で「メールは必ず1日以内に返すこと。それがマナー」と、教わった。
その6年後、私の在籍していた会社は、「企業向けの研修」をやっていた。その一つに「若手向けのタイムマネジメント」のコースがあったのだが、そのテキストには「メールを開くのは1日3回程度にしましょう。」と書かれていたのを覚えている。
そのテキストには、
・メールが着信した都度、それに対応していたら作業が中断され、作業の能率が落ちる
・メールの返信が3時間程度遅れたところで、怒る人はいない
と書かれていた。従って、そのテキストの教えるところでは、メールを開くのは朝、昼、夕方の三回。余計な仕事への割り込みを減らし、生産性を高めようという趣旨だった。
しかし、今はどうも状況が違ってきているようだ。最近訪れた複数の会社でこの話をした所、
「安達さん、メールはすぐに返さなきゃ駄目でしょ」と言われたのだ。
私が教わってきたこととは異なる。話を聞くと、「うちの上司はメールを送って、1時間以内には返信しないと怒りますよ」というものや、「メールを見たら、直ぐに返信して欲しい」という方まで、様々だった。
しかし、どうなのだろう。メールを常にチェックし、返信をすぐにしなければならない、というのは結構なプレッシャーだ。特に作業があったり、お客さんの対応をしていたりすると、どうしても返信は遅れるし、時には相手に再考を促すため、わざとすぐに返信を送らず、時間をおいてから返信をするということもある。
もちろん、私だってメールを送った相手が直ぐに返事を返してくれたほうが助かることが多いし、嬉しいとは思う。
しかし、だからといって「直ぐに返信してくれないと相手に対して怒りがこみ上げる」というのは若干行き過ぎである気もする。
本当に緊急の用事であれば、電話を使ったほうが良い、と思ってしまうのだ。
LINEの「既読」機能はなぜ無くならないかという記事にも書いたが、すぐに返信を返さない、という行為が「失礼である」と認識されだしたのは、LINEが普及しだしてからではないか。
この時期から、「メッセージの受信者」よりも、「メッセージの発信者」の方が優遇され始めたと感じる。
本来、メッセージの処理は「受け手」に任されてきた。無視しようが、返事を返そうが、いつ反応しようがそれは、「メッセージを受け取る側」に任されてきた。「返事を返さない、という返事」も選択肢として存在していた。
その権利を、LINEは取り上げたのだ。
「LINEはメッセージ送信者のワガママを叶えます!」
そういうことだ。
しかし、本来メッセージは「受け手」を中心に考えなければならないものである。コミュニケーションとはそういうものだ。
(LINEの「既読」機能はなぜ無くならないか 一部修正)
私の考え方が間違っているかもしれない。しかし、ピーター・ドラッカーも言っているではないか。
コミュニケーションを成立させるのは受け手である。コミュニケーションの内容を発するものではない。彼は発するだけである。
自分も年をとったせいで説教臭くなったのかもしれない。「そんな小難しい話ではない」と一蹴していただければ幸いである。
【Books&Appsからのお知らせ】 今年最後のティネクト主催ウェビナーです。
(2025/10/27更新)

<2025年11月13日(木)実施予定>
その外注費、クソコンテンツに消えてませんか?
AIで“成果につながる記事”を、低コスト・高品質に実現する方法 —
【セミナー内容】
第1部:外注費の重さと、企業が抱える「記事制作の現実」
登壇者:倉増 京平(ティネクト 営業・マーケティング責任者)
・プロダクション・代理店が直面するコスト構造とリスク
・外注依存が招く“品質と費用”のジレンマ
第2部:いいライターが見つからない理由
登壇者:桃野 泰徳(ティネクト 編集責任者/取締役CFO)
・「書ける人」は全体の0.2%。採用・外注の限界とは
・品質管理を難しくしている構造的課題
第3部:AIで書ける時代へ
登壇者:安達 裕哉(ティネクト 代表取締役)
・生成AIで“成果につながる記事”を内製化する方法と成功事例
・AI×編集で再現性を高めるワークフロー構築
日時:
2025年11月13日(木)15:00〜16:00
参加費:無料(事前登録制)
配信形式:Zoomウェビナー
お申込み・詳細はこちらのティネクト公式ページよりご確認ください。














