1024px-Lens,_Cornelis_-_Regulus_Returning_to_Carthage_-_1791マルクス・アティリウス・レグルスと言う人物がいた。

彼は共和制ローマの最高権限を持つ執政官であり、ローマとカルタゴの戦いであったポエニ戦役の将軍でもあった。

 

彼は操船技術では圧倒的優位に立つ海運国カルタゴに対し、ほとんど陸戦の経験しか持たなかったローマ軍を指揮し、大規模海戦に見事勝利した有能な指揮官であった。

エクノモス岬の戦いと呼ばれるこの海戦に勝利したレグルスは勢いに乗り、そのままアフリカに上陸。そこに拠点を築き、次々と北アフリカに存在するカルタゴの都市を陥落させていく。

 

だが、功を焦ったレグルスは、カルタゴの思わぬ反撃にあう。

カルタゴが雇ったスパルタ出身の将軍、クサンティッポとの戦闘、チュニスの戦いで破れ、カルタゴの捕虜となってしまう。

 

その後、カルタゴとローマは一進一退の攻防が暫く続くが、ローマには海難事故が発生するなど、苦しい状況が続く。

そしてカルタゴはこの機を逃さず、有利な条件で講和を結ぼうと、ローマに使者を送った。

 

そして、その使者こそ、カルタゴの捕虜となったレグルスであった。

レグルスは、カルタゴ政府に次の2つのことを約束させられていた。

 

1.ローマの元老院を説得し、シチリアの全面放棄を約束させること。

2.説得の成否にかかわらず、その後はカルタゴに戻ること。

 

当然、カルタゴの監視付きでレグルスは元老院の説得に臨む。カルタゴはもちろん、レグルスが懸命に元老院を説得するものと思っていた。

だが、レグルスは全く正反対のことを行う。

元老院を説得するどころか、カルタゴと断じて講和してはいけない、これまでの犠牲は何だったのだ。無駄にしてはいけない、と元老院議員に説いたのである。

結果として、レグルスの意見は元老院を納得させ、ローマは戦争継続を決定した。

 

そして、レグルスはここから「真のエリート」としての行動に出る。

彼は、カルタゴ政府との約束を守り、カルタゴの使節団と共に、カルタゴに帰ろうとしたのだ。

当然のことながら、妻、子供、友人たちはローマにとどまるように懸命に説得する。しかし彼は、こう言った。

 

「もしローマにとどまれば、史上長くローマをして不信の国たらしめることになる。私は、自分の命よりもローマの名を惜しむ。」

 

彼は周囲の嘆願を聞かず、カルタゴに戻ったのだった。

そして、彼には悲惨な運命が待ち受ける。

怒ったカルタゴ人は、彼を小さな籠に押し込み、それを象に蹴らせて彼を処刑した。

 

 

かれはなぜ、確実な「死」が待つカルタゴに約束を守り、帰ったのだろうか。

家族友人がいるローマにとどまらなかったのだろうか。

 

その人物が真のエリートであるかどうかを決める基準は、頭の良さでもなく、財産の多寡でもなく、まして、学歴でも社会的地位でもない。

その人物の属する共同体に対する信念と、その見返りを求めない貢献のみが、エリートとその他を分かつのだ。

 

【安達が東京都主催のイベントに登壇します】

ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。


ウェビナーバナー

お申し込みはこちら(東京都サイト)


こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい

<2025年7月14日実施予定>

投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは

借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。

【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである

2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる

3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください

(2025/6/2更新)

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)

・農家の支援を始めました。農業にご興味あればぜひ!⇒【第一回】日本の農業の実態を知るため、高知県の農家のご支援を始めます。

 

 

(参考:ローマ人の物語 塩野七生  共和制ローマ http://cwaweb.bai.ne.jp/~dsssm/)