知人の一人が、就職カウンセラーを大学でやっている。聞くところによればその中で多い質問の一つが、「好きなことを仕事にするには、どうしたらいいですか?」だそうだ。
「何が好きなの?」と彼女が聞くと、「旅が好きなので、旅関係の仕事か、ゲーム関係の仕事がよいとおもっているんですが…。」といった回答がある。
彼女はいつもこう答える。
「なるほど。じゃ、旅関係やゲーム関係の就職をすればいいと思いますよ。」
すると学生は「そう思うんですが…」といった不安な面持ちになる。
そこで彼女はこう聴く。
「何か、迷っているんですか?相談したいことがあるのですか?」
すると、ほとんどの学生の反応は以下のようなものだ。
「好きなことを仕事にすると、給料が安くて暮らせない、っていう話を聞きます。本当にこれでいいのか不安です。」
■
「みんな迷っています。」
と彼女は言う。「どんな業界であっても「新卒」というだけで入れる貴重な機会、皆、ムダにしたくないと思っているんです。」
私は彼女に「どんなアドバイスがいいのでしょう」と聞いてみた。
彼女は、ある例え話をしてくれた。
「学生さんに好きな、やりたい事を聞いた時、不安になるのは当然なんです。なぜかといえば、それは小学生低学年の子に、「どんな食べ物が好き?」と聴くのと同じだからです。」
「…?」
「つまり、限られた選択肢しか知らないということです。小学校低学年の子は、まだ複雑な味は理解できない。おそらく、大半の子はハンバーグや、カレーといったメニューしか出てこないでしょう。」
「なるほど」
「世の中には、今の自分には知らない味がある。経験したことのない味がある。それはいろいろな食物を経験し、少しずつわかっていくことです。」
「…。」
「学生さんの就職希望は、一部の大手の人気企業や食品業界など、身近な会社に集中するそうです。それはまさに小学生が「カレーが好き」と言うのと全く同じなのです。」
「業界研究を一生懸命したり、会社説明会などに足繁く通う学生さんもいるのでは?」
「そうです。でも、それは食べ物で例えればメニューを見ているのようなものです。実際の味はわからないでしょう。本当に仕事のことを知るには実際に働く、つまり実際に食べてみる必要がある。雲丹の味がわからない子供に、雲丹の味をメニューを見せて説明するようなものです。」
「そうかもしれません」
「だから、カウンセラーとしては結局のところ、「働いてみないとわからない」と学生さんに言います。」
「でも、率直に言わせていただければ、それはアドバイスになっていないのでは?」
「そうですね。ですから迷っている学生さんには2つのことを申し上げています。」
「2つ?」
「はい。一つ目の条件は、業績の良い会社に入ること。大手であっても業績が悪い会社に新卒が入る理由はどこにもありません。逆に小さくても伸びている会社にはチャンスがたくさんあります。」
「二つ目の条件は?」
「アドバイスにはなっていないかもしれませんが、「殆どの人は、好きなことを仕事にするのではなく、一生懸命やった仕事を好きになるんですよ」と言っています。」
「…」
「私も、そうでしたから。」
彼女は本当に仕事を楽しんでいるようだった。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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(Photo:acworks)