昨日お会いした方から、とても興味深い話を聞いた。勤め先が経営者向けのセミナーを行っているのだが、「同じ経営者が何度も同じ話を聞きに来る」という。
とても不思議な話だ。なぜなら、セミナーへの不満としてかなり一般的なものが、「すでに知っているものだった」と言う感想だからだ。
その経営者たちは、新しい知識を求めてくるわけではなかった。
ただ、よく考えると人は必ずしも新しいものが好きというわけではない。むしろ、新しいものよりも馴染みのあるもののほうが遥かに好きだ。
・行きつけのお店が好き
・自分の書棚には似たような本が並ぶ
・シリーズ物ばかり買ってしまう
・似たような色の服ばかりクローゼットにある
もちろんこれは、大人だけではない。子供でも同じである。例えば幼児は、同じ本を何度も読んでくれるようにせがむ。すべてのページの文言まで暗記しているはずなのに、それでもその本を読んで欲しいと言う。
上の経営者の話も同じだ、さしずめ「行きつけのセミナーがある」といったところだろうか。
しかし、なぜ人は馴染みのものに惹かれるのだろうか。
知人は、
「人は常に新しい環境にさらされると大きなストレスを受けるので、ブレないものがほしいのでは?」
と分析する。
特に経営者は常に「変わらなければいけない」というストレスに曝される。
「このやり方でいいのか?」
「もっと簡単に成功するやり方があるのでは?」
というストレスにさらされると、何が正しいのか徐々にわからなくなる。だから、いつもの安心感のある体験を求める。
思い通りにならない世の中で、ソーシャルゲームの生み出す「予定通りの快感」を求めて課金する人は後を絶たない。人はそれほど強いものではない。「自分は間違っていない。自分は正しい、これは間違いない、と思わせてくれるもの」が必要だ。
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一般的に新しいものよりも馴染みのあるもののほうが好き、というのはビジネスにおいてはあまり良く思われない。
「変わろうとしない」 「頭が硬い」と言われたり、「保守的すぎる」であったりと、批判を受けることも多い。だから、「経営者がいつも同じ話を聞きに来る」という行動は一種の弱さであるとみなす人もいるのではないだろうか。
だが、見方を変えてみれば「同じことをやり続けられる」という強さとも取れる。習慣化の本質は、「いつも同じことをして、安心感を得る」ことだからだ。
馴染みのお店に通うことは、良く言えば「意図しない習慣化」と言える。
「長くブログを続けるには、どうしたら良いでしょう?」と聞かれることがある。そういえば、私も同じような疑問を持っていた。
そして、私のその疑問に対してあるブロガーの方はこう答えてくれた。
「半年毎日続けると、書かないと不安になります。だから、とりあえず半年続けることです。あとは2年、5年、10年続けられますよ。」
要するに、「馴染みの行動」にしてしまうことが習慣化の秘訣なのだ。
そういえば、確かにブログを書かない日は不安だ。書くのが習慣になってきたということか。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)
・農家の支援を始めました。農業にご興味あればぜひ!⇒【第一回】日本の農業の実態を知るため、高知県の農家の支援を始めます。