以下の記事を読んで、昔訪問していたあるソフト開発会社の、「会社同士のマナー」について語っていた経営者の話を思い出した。
まず大前提がこれだ。
「個人店で金払ったら客という概念は捨てて欲しい」
その経営者は30年以上続く比較的老舗の開発会社であり、汎用機の時代から現在のwebサービス開発まで、時代とともに業務内容を変化させてきた。
「会社を成長させ、長く健全性を保つための秘訣は、顧客との付き合い方をきちんと考えることです」
と、彼はよく言っていた。
彼はまた、こうも言った。
「例えば、売上の多い顧客には手厚いフォロー、少ない顧客に対しては適当に、という考え方がありますが、私はそれをやることには反対です。」
顧客管理システムの常識をくつがえす発言だ。
「金払いで顧客をランク付けすると、どうなるか知ってますか?大口客は、うちを支配しようとし、徐々にわがままになる。そして徐々に利益率は下がる。それが代償です。」
では、彼等はどのように顧客と付き合っていたか。経営者は言った。
「うちは、金払いよりもマナーを重視します。結局のところ、お互いに尊重し合える関係かどうかです。」
私は、彼にその理由を聞いた。
「一見不合理に見えるでしょう。しかし、本当に付き合うべき会社は、金払いで相手をコントロールしようとはしません。
むしろ、カネで相手をコントロールしようとする会社は、ちょっと業績が悪くなれば、皆が見捨てます。会社の業績には波があり、悪い時は必ずきます。その時に、手を差し伸べてもらえるかどうか、それはお互いにマナーを守っているかどうかの関係によります。
だから、うちは「金払いの良い会社ではなく、マナーを守る会社」とだけ、付き合います。そうすれば、お互いに長期的に繁栄できます。」
そこで私は聞いた。
「マナーとは何ですか?」
彼は言った。
「まず第一に、約束を守ること。後から話を変えたり、責任を押し付けたりしない会社。
第二に経営者が謙虚である会社。経営者が偉そうにすれば、末端の社員まで偉そうな態度をとるようになります。
そして第三に、相手の話をきちんと聴く会社。一方的に通達し、身勝手に振る舞う会社など、論外です。
最後にきちんと説明をする会社。秘密主義は駄目です。パートナーとして付き合うためにはね。」
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(Photo:Phil Renaud)