リーダーは強くあらねばならない、少々のことに動じてはならない、リーダーに従う人は概ねそう思っている。
リーダーが公平で、毅然としており、厳しくあることで集団はまとまりを保つことができる。それは当たり前のことである、と言っても良いかもしれない。
しかし、私がお会いしてきた経営者、管理職の方々は、ほとんどの場合「強い人」ではなかったように感じる。もちろん、社員の前では「強くいてほしい」という社員の望み通りの姿を見せる。
しかし。
人事の決定について、内心は皆がどう思っているのかビクビクしている。
誰かが「辞める」と言おうものなら、自分のマネジメントに何か問題はなかったのかと反芻する。
新人が配属先で元気が無いように見えれば、何か職場に起きているのではないかと疑心暗鬼になる。
成果が出なければ胃が痛い。
「改善提案」すら、自分への批判に見えてしまう。
そんな、普通の人達がほとんどだった。偉大なわけでも、崇高な精神を持っているわけでもない。一人の弱い人間がそこにいる。
中には何がおきようが超然としている方もいたが、そう言った方々はむしろ例外に属し、ほとんどの経営者や管理職は、「我慢して」人の上に立っていた。
「やせ我慢」は、本来ならば必要のない我慢である。しかし、福沢諭吉は共同体を維持するために、やせ我慢はとても重要であると述べた。
左れば自国の衰頽に際し、敵に対して固より勝算なき場合にても、千辛万苦、力のあらん限りを尽し、いよいよ勝敗の極に至りて始めて和を講ずるか、もしくは死を決するは立国の公道にして、国民が国に報ずるの義務と称すべきものなり。すなわち俗にいう瘠我慢なれども、強弱相対していやしくも弱者の地位を保つものは、単にこの瘠我慢に依らざるはなし。
無理して日本にしがみつく必要はない。日本がダメと見れば、すぐに海外に移住すればいいのだ、と言う方もいる。一方で、「それでも日本を何とかしたい」と、やせ我慢をする方もいる。
それと同じである。
無理をして会社で経営者や管理職をやる必要などない。「こんな社員、部下などどうにでもなってしまえ」と、マネジメントを放棄することもできる。
だが、そういった状況にあって「やせ我慢」して、皆を引っ張り、支えるリーダーこそ、真のリーダーであると言える。それは強さや崇高さといった立派なものではない。
弱い自分を必死に隠して耐える人の姿がそこにはある。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (スパムアカウント以外であれば、どなたでも友達承認いたします)
・農家の支援を始めました。農業にご興味あればぜひ!⇒【第一回】日本の農業の実態を知るため、高知県の農家の支援を始めます。
明治十年 丁丑公論・瘠我慢の説 (講談社学術文庫 675)
- 福沢 諭吉
- 講談社
- 価格¥123(2025/06/02 21:39時点)
- 発売日1985/03/06
- 商品ランキング158,958位
(Photo:G CACAKIAN)