先日、ある研究者の方とお話をさせていただいた。その時話題となったのが「良いキャリア」についてだった。
その研究者の方はこう言った。
「安達さん、良いキャリアを積むには、いい人がいるところに行かないとダメですよね。」
その方が言うには、良い研究者になるためには、何よりもまず良い人のもとで研究することが必要だというのだ。
実は、似たような話を以前、別の方からされたことがある。数年前に私が訪問した、ある企業の経営者は、
「何をするかより、どれくらいもらえるかより、「誰と仕事をするか」がもっとも重要ですよ」
と述べた。
「仕事を選ぶよりも、誰の下で働くかを選ぶほうが、はるかに重要な選択です」
新人の成長のカギとなる要因は何か。という記事にも書いたが、この意見にはほぼ賛同する。「誰の下で働くか」は、成長やスキル、キャリアにかなり大きな影響がある。
むしろ、多くの方は意外に思うかもしれないが「やりたいことをやる」よりもはるかに重要かもしれない。
実際、多くの研究者や経営者に、
「なぜ、今の研究をしているのですか?」
「なぜ、今の事業になったのですか?」
という質問をすると、
「もともとこれがやりたかったわけではなかったけど、成り行きでこうなった」
「お客さんから依頼されていたことをやっていたら、今の事業になった」
という回答がほんとうに多い。感覚的には全体の7割から8割位の人がそういった回答をする。私にとっては非常に驚きであった。
そして、そう言った方々のほとんどが、「巡りあってよかった」という方の存在や「キャリアに影響を与えた場」を持っている。
仕事を選ぶ基準は、給与であったり、仕事の内容であったり、勤務地であったりと様々だ。だが
「どういった人々と働くのか」
のほうが実は重要だ。
可能であれば、転職や就職をするときには、可能な限り上司となる人や同僚となる人、あるいは人事や経営者がどのような人物なのかについて、情報を集めるべきだろう。
私のお世話になった人は、いつもキャリアについてこう言っていた。
「キャリアを形成しようとするな、自分で描くキャリアなど、犬に食わせてしまえ。そうではなく、「この人はちゃんとした人だ」と思える人のところへ行きなさい。そうすれば、自ずとキャリアは見えてくる。」
当時の私には意味がわからなかった。だが、多くの研究者や経営者と会い、あの頃よりは少し理解に近づいたのではと思っている。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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