先生という存在に初めて触れるのは、恐らく幼稚園から。早い人であれば幼児教室などに通っているから、3歳から4歳くらいから「先生」について学ぶ。
それから小学校、中学校と進学し、高校には9割以上、大学にも6割以上の人が現在は進学しているところを見ると、「先生」には20年以上も教えられ続けるわけである。
ところで皆さんには「記憶に残る先生」はいるだろうか?
私はそれを聞いて回るのが好きなのだが、必ず誰にでも一人や二人、「自分の人生に影響を与えた先生」がいるはずだ。
個人的には小学校の時に通っていた塾の先生が私の記憶に一番残っている。小学5年生から2年間、塾通いをしていたのだが、6年生の時の塾におけるクラス担任がその先生だった。
その先生はとにかく熱心だった。生徒全員の様子をとても良く知り、とにかく生徒に成果を出させるため、猛烈に生徒に勉強をすることを求めた。
例えば、その先生は正規の塾の授業時間が終わった後、終わらせるべき範囲が終わっていない場合は全員を塾の物置のような部屋に移動させ、先生が独自に作った実力テストのような問題を全員に解かせる。
当然親も心配するだろうが、先生は親に電話し、「まだ終わっていないので、居残りでやります」と連絡する。
正規の塾の時間は夜8時位までであったが、先生のプリントをやっていると当然夜9時、ときにはもっと遅くまで勉強することになる。
当然腹がへるので皆は親の作ったお弁当を食べながら勉強する。時には先生がサンドイッチなどを買ってくれ、それをもらって食べるのだ。
だが、不思議とつらいことは1回もなかった。みなでお弁当を食べることも楽しかった。あのクラスには同じ目的に向かう仲間同士の一体感が確かに存在していた。
先生は、そう言った形で完全に塾の運営を逸脱した形での指導をしていた。
上司から指摘されないのか…と心配される方もいるかもしれないが、その先生は当時校舎長であったため、自由にやれたのだと思う。
またその先生は「武者修行しろ」といって、時々クラスの全員を他のレベルの高い教室に送り込んだ。
私達は少人数のクラスだったため、塾の本拠地のある大きな、最もハイレベルのクラスに送り込まれたのだが、あまりの雰囲気のちがいに私はとても驚いた。
私はいわゆる「井の中の蛙」というやつで、上には上がいて、勉強が出来る人はたくさんいることをそこで見せつけられたのである。
周りが全員天才に見える、緊張する、そう言った雰囲気を体感させ、きたるべき入試の雰囲気に備えさせたり、「戦いの現場」を体験させたかったのだと思う。
また、毎回の授業ではテストがあるのだが、先生がテストを採点して返してくれた答案には、とても厳しいことが書いてあった。
その先生は小学生に向かって赤ペンでこう書くのだ。
「お前は今の時点での実力では到底、目標校に入れない。のんびりしすぎている。繰り返し同じ問題で間違うことも多いから、なぜ間違えたのかを追求し、二度と同じミスをしないように最大限の努力をすること。あと入試まで6ヶ月しかない。遊んでいるヒマはない」
先生は我々を子供扱いしなかった。
子供ではなく、一人の人間として扱った。そしていかに目標達成させるか、ということについて真剣に考えさせた。
そして、先生はほとんど笑わなかった。常に真剣であった。とてもではないが、取っ付き易いタイプとは言えない人であった。
だが、皆その先生のもとで頑張った。
入試の日。私はほとんど緊張せず、のびのびと問題に取り組むことができた。多くの仲間が志望校に合格した。先生はとても喜んでくれた。
そして、しばらく経ち、先生にお礼をするため塾に行った。皆、先生がどんな顔をして迎えてくれるか、楽しみだった。
ところが、塾に言ってみると先生がいない。どうしたのかと聞いてみると
「先生は退職されました」
と聞かされた。皆に衝撃が走る。
「どこへ行ったのですか?」と聞いても、よくわからないという。
その後、風のうわさで先生の消息を聞くと、どうやら「職人になる」といって、会社を退職したとのこと。
私達は文字通り、最後の教え子となった。
その後、先生には会っていない。残念ながら、今もなお先生がどこにいるのかもわからない。
先生、お元気ですか。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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(Photo:Jonathan Leung)