私の知人に、ほとんど「できません」と言わないソフトウェア技術者がいる。営業であれば、「出来ません」と言わない方は普通にいるのだが、ソフトウェア技術者では珍しい。
「GoogleAnalyticsのように、グラフィカルに表示できないですか?」
⇒「なんとかしましょう」
「1週間以内に実装できないですか?」
⇒「わかりました」
「応答のスピードを上げられますか?」
⇒「やってみます」
彼は周りからたいへん頼りにされているのだが、かと言って安請け合いするわけでもない。仕様に問題があれば必ずディスカッションを求め、必ず納期は守る。
私は彼が「やったことはないですが、多分できるでしょう」と言い、そのとおりになったことを何度も見た。
最近すぐに「できません」という社員が増えているとの悩みを経営者の方々からお聞きする。無茶な要求をする 上司や顧客がいるのも事実だろうが、考えもしないで「できません」というのも困りものだ。
その技術者に、「社内にもそのような人がいますか?」と聞くと、彼は言った。
「確かに仕事で、すぐに「出来ません」という人がいるのは、私も知っています。技術者としては、そう答えられれば楽だし、本当に出来ないことも数多くあります。
ま、でもすぐに「出来ません」という人は、一般的に信用されにくいし、それを出来るように考えるのが、
自分自身の技術を伸ばすことにも繋がると思います」
彼によれば、できませんと言わない理由は5つある。
一 できそうにないと思っても、できることのほうが圧倒的に多い
二 できそうにないことに取り組んで、得られたスキルが現在のスキルの多くを占める
三 誰もやりたがらない仕事にこそ、チャンスがある。
四 自分の能力を証明したい
五 お金や納期の交渉がほとんどの場合は可能
逆に、本当に出来ないことも数多くあり、数は少ないが次の仕事は断るという。条件は
一 事前に交渉できない仕事
二 ウソをついたり約束を反故にするなどあとから条件を変えてきた人。二度目はない。
三 言葉遣いの悪い人からの依頼
個人的には、三が面白い、と思った。
「こちらもできるだけ誠実に対応したいですが、言葉遣いの悪い人は個人的に合いません。そういったことに人生が現れてますよ」
と彼は言う。
「具体的に、どういった言動が、言葉づかいが悪いと感じますか?」と聞くと
「そうですね、バカとか、アホとか言うのはあまり気にならないんですが、陰口を言う人の仕事は請けません。」
それを言葉づかいが悪い、と表現するのは私にはよくわからないが、なるほど、いろいろな人がいるものである。
(事業サービス責任者-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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