3972888678_eb3b1d1af0_z企業において「出世できるかどうか」は皆の関心の的である。好むと好まざるとにかかわらず、人は企業内で格付けされ、外部からもその格に従った扱いを受けることが多い。

だから、企業においては、「どうやったら出世できるか」という一点に、多くの労働者は意識と人生の時間を集中させることになる。

 

私の観察によれば、学生の間は「私は出世に興味はない」と考えている人が多数派だ。社会人であっても、20代、30代の前半くらいまでは無関心でいられる人も多い。

だが、30代の半ばから40代で、突然現実をつきつけられる。同期の中で明らかに出世をしている人と、もう出世の望みが無い人がはっきりとわかってくる。

 

多くの企業で私は30代から40代の方々が、異常に出世に関心をもつことを目の当たりにした。考えてみれば当然だ。社内外での扱いが大きく変わるのである。

「私は出世に興味がないです」という方でも、本当に全く興味のない方はごく僅かで、殆どの人はうちに秘めた思いを持っている。

考えて見れば当然だ、給与や肩書はもちろんのこと、名刺を渡す順番、部下の有無、会議での席次、社外の方々の態度など、自分が意識するしないにかかわらず、サラリーマン社会では「地位」がほんとうに重要な意味を持つことを日々意識させられるからだ。

 

中にはこじらせてしまう方もいて、30代、40代の方々が上位の役職者に嫌がらせをしたりするケースもある。もちろんそのような行動をすることでますます出世から遠ざかるのだが、周りもすでに相手にしていない。

「あの人はああいう人だから」

と、半ば変わり者扱いである。だが皆知っている。彼が出世競争に敗れたことを。

 

実際、テレビや新聞、雑誌やインターネット上の情報を見れば、30代半ば以降のサラリーマンがどれほど出世に関心があるかがわかる。

経営者が人事に細心の注意を払うのはこのためだ。

 

 

私は前職中、ある大企業の役員の方から、質問されたことがある。

「安達さん、出世することは重要だと思いますか?」

当時私は20代の若造だった。彼の言うことは私にはよく理解できなかった。

「そうですね、出世そのものはそこまで重要ではないと思います」

彼は笑って言った。

「そうですよね、20代で「出世したいです」という人は本当に少なくなりました。もちろん会社はそれに対していうことはありません。でも」

「でも?」

「安達さんが30代、40代になってもそれを言っていたら、「負け惜しみ」と言われるでしょうね。会社員なら「出世に興味が無い」などと言わないほうがいい。それが会社という場所です。」

「…」

「会社では、出世できなければやりたいこともやれず、給料も上がらず、人に使われるだけです。自分が「重要な人物である」と誰も見てくれなくなるのは、とてもつらいことです。中には嫉妬に狂ってしまう人もいる。」

「…」

「会社員として生きていくなら、出世に興味を持ちなさい、出世は安達さんの言うとおり最終目的ではないが、大事なことです。20代でそれに気づき、頑張った人は出世できる可能性が高い。」

「はい。」

「そして、組織は公平ではない。「成果を出した人」が必ずしも出世できるわけではない。いいですか、社長や上司を観察しなさい、組織で評価されている人をよく見なさい。」

 

現在でも、企業においては「昇進」に関心を持たざるをえない状況が続いている。

 

 

 

余談であるが、ピーター・ドラッカーは著書の中で下のように述べた。※1

人よりも上に行くことが立派なこととされている。しかし、職長になれるものは少数であって、経営管理者になれる職長は更に少数である。

したがって、今日のように昇進を目標とさせたのでは、多くの者が不満に終わらざるをえない。

実際、大企業において課長以上になれる人物は全体の6%程度。中小企業においても3割である。

参考:40歳からのキャリア、3つの考えなければならないこと

 

 

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ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。


<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>

第6回 地方創生×事業再生

再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは

【日時】 2025年7月30日(水曜日)19:00–21:00
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。

【今回のトーク概要】
  • 0. オープニング(5分)
    自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
  • 1. 事業再生の現場から(20分)
    保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
  • 2. 地方創生と事業再生(10分)
    再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
  • 3. 一般論としての「経営企画」とは(5分)
    経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
  • 4. 中小企業における経営企画の翻訳(10分)
    「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
  • 5. 経営企画の三原則(5分)
    数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
  • 6. まとめ(5分)
    経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”

【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。

【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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(2025/7/14更新)

 

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