何かと長労働時間、低賃金と騒がれがちなソフト開発であるが、優れた会社も数多くある。100名程度の普通のソフト開発会社であっても

・ほとんど定時で帰宅できる

・有休取得率8割

・残業代100%支給

・離職率は5%程度

と、まっとうな企業もそれなりに存在する。

では、いわゆる長時間労働、残業代未払い、高離職率の開発会社、いわゆる「ブラックのIT企業」と、彼らのようなIT企業は何が異なるのだろうか。

私の観察では、そういった会社は、以下において優れている。

 

1.経営者の営業力・交渉力

経営者および役員の営業力が高い。また、プロジェクトの途中での問題には率先して彼らが自ら顧客と交渉する。

このサポート体制のおかげで、技術者のリーダー陣は安心して仕事をできる。また、リーダー陣は経営陣の問題解決を見て、その方法を学ぶので、問題になるプロジェクトが少ない。

 

2.高いエンドユーザー率

営業力が高いので、全顧客のうち7割がエンドユーザーからの直の請負開発である。

SIerの下請けを行う際は、単価面、決定権などの面でかなり彼らに有利な条件であっても「やむを得ず」というケースが多い。

 

3.現場の「コーディングは最低限に」「設計が命」という哲学

そのような会社のリーダー陣へヒアリングを行うと、ほぼすべてのプロジェクトにおいて、全工数のうち半分程度を設計に当てており、「いかにコード量を減らすか」という哲学が徹底されている。

場合によってはコーディングツールを自作することにかなりの工数を使い、自分たちで手を動かしてコーディングすることを極力避けている。これは、品質的にも非常に有利である。

 

4.設計を重視した新人育成の思想

新卒も1年目から設計をやらせる。コーディングよりも設計、テストの技術を磨かせることを徹底しており、トヨタの言う「設計で品質を作りこむ」ということを会社全体で体現している。

 

5.技術者を一人にしない

「人出しの仕事」、とくに一人で派遣先に常駐させる仕事を受けない。理由は「伸びないから」と「相談できないから」。これは離職率の低下に大きく貢献しているという。

 

6.徹底した残業時間の管理

そのような会社は100%残業代を支給しているので、残業時間の管理を徹底している。

残業はかなり多い月でも40時間程度。それは彼らからすれば「異常事態」であり、異常な残業時間は即時サポートが入る。正確な残業時間の監視をすることで、プロジェクトの問題を素早く炙りだすためだ。

 

上のように、努力を積み重ねればトータルでは非常に強い会社となる。本当に強い会社は、地味なことを継続しているのだ。

 

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3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう

【登壇者紹介】

安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00

参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。


お申込み・詳細
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(2025/6/2更新)

 

 

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(Photo:Michael Kappel)