何事も永遠ではない。人は死ぬし建物はいつか壊れる。国も、いわんや企業をや、である。企業の寿命は30年と言われるが、ほとんどの企業の寿命は人間よりはるかに短い。
100年、200年と生きながらえる企業も中には存在するが、企業は想像よりもずっと早く滅びることを前提として考えるのが自然であろう。
だが、企業は「継続すること」を前提として運営が成されている。実際、「潰れてはならぬもの」として、沈みかけたものを必死に浮き上がらせようとする努力が、個別の企業の中でおこなわれている。また、リーマン・ショックの後、行政がIT業界向けの補助金などで、利益を出せなった企業を細々と生きながらえさせていた事は記憶に新しい。
企業は家族や自治体と異なり、存在そのものに意味がある、というものではない。特定の役割を社会から与えられ、それを効率良くこなせるからこそ、存在意義があるのだ。
役割を果たせなくなった企業は、すみやかに衰退、消滅させることこそ、望ましい。それを失った存在がゾンビのようにうろついていることは健全とはいえず、税金も、そこに雇用される人の才能も時間も、大きなムダとなってしまう。
一方で、労働者も変化が求められる。上の話を考えれば、終身雇用を必要とする会社が、そもそも希少である。
20歳過ぎで入社し、65歳で定年を迎えるまで40年以上。全盛期を過ぎた会社からすれば、能力にかかわらずあなたは途中で「お荷物」と化す。
必ずだ。終身雇用を会社に求めれば、良くて会社の衰退とともに給与カット。悪ければ共倒れだ。
労働者は言うだろう。「こんなに尽くしてきたのに、都合が悪くなれば放り出すのか」
そのとおりである。業績が悪くなった数々の企業の社員への仕打ちを見れば、会社があなたを家族と考えてはいないことはすぐにわかる。会社の本質はあなたを活かすことでもなければ、あなたの生活の面倒を見ることでもない。その機能と社会的な役割をはたすだけだ。
困窮した人々の生活の面倒を見るのは行政であり、あなたはそのために税金を支払っている。文句は会社でなく、行政に言うべきだ。行政が企業を「従業員の生活の面倒を見る存在」とみなしているのであれば、それはお門違いである。
仮にそのようなことがあれば、それは、彼らの無能を単に企業に押し付けているだけにすぎない。
労働者は「会社はすぐになくなるもの」と仮定し、働かなくてはならない。それが企業のため、社会のため、ひいては自分のためだ。
では、会社の寿命が我々の職業人生より短い場合、我々の考え方や振る舞いはどのように変えなければならないのだろうか。いくつか考えられる。
1.「会社への忠誠」に価値はない。忠誠を誓うことは、あなたの自由を売り渡すことに繋がる。封建制における農奴は領主に農民が庇護を求めたことから始まった。結果として農奴がどのような生活をおくることになったか、私たちは知っている。
2.法令違反をし、離職率の高い職場からはさっさと逃げるべきである。そのような会社は良い人材を惹きつけることができず、発展の余地はない。
3.競争は、企業の責任ではなく個人の責任となった。知識労働者の間の「超競争社会」が始まっている。競争を忌避し逃げるのもよい。だが国内、海外の競争相手は容赦しないし、負ければ貧しくなるだけである。皆が知る通り、今、日本の生活水準を保つには大変な努力が必要とされる。
4.「自らビジネスを作れる能力」が、何にもまして重要になってきている。副業や起業はその力をつける良い手段だ。
5.「会社以外の人脈」が非常に重要となる。社外での活動に力を入れなければならない。また、子供を良い学校に入れる動機は、学歴のためではなく、努力をする技術を身につけ、能力の高い人々との人脈を作るためとなる。
6.ビジネスに必要となる能力はますます高度になっている。とても一人でまかなえるものではない。それ故に「他者の能力を尊重し、助け合える力」がますます重要となる。コミュニケーション力を重視することはビジネスにおける本質である。
7.貧富の差は拡大する。格差が社会不安を呼ばないよう、富者はその成功を誇示したり、貧者に対して不遜な態度をとったりしてはならない。分をわきまえることが成功者に求められる。あなたの成功は運が良かっただけである。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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